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7章:懐かしき仲間
3話:それぞれの努力
翌日、朝食後にクリフとピアースは全体に紹介された。そこには第一師団が足りないらしいが、昨日案内してくれた第一師団師団長のアシュレーや、ロッカーナでお世話になったウェインなんかはいて手を振ってくれた。
クリフが就く第四師団はオリヴァーという優しそうで、でもそればかりではない怪しい雰囲気のある人が師団長だった。紹介後、握手をしたけれどちょっとだけドキドキした。
今日はハリーと二人で訓練の様子を見ている。少し回っていると、外の修練場が俄に騒がしくなった。
「あぁ、今日もやってるんだ」
「どうしたの?」
なんだか人が沢山だ。あまり長身じゃないクリフじゃ何が起こっているのか分からない。
「せっかくだから行こうか。二階からならよく見える」
そう言われて二階に行くと、修練場の上にはランバートと、先輩らしい人が向き合っている。
「ランバート、お前の強さ俺が確かめてやる! 負けたらファウスト様を速やかに返還せよ!」
「なっ!」
先輩の啖呵に、クリフは思わず声を上げる。勝手な言いようが許せなかったんだ。けれど隣のハリーは全く心配していない。余裕の顔で見ている。
「あんなこと言われて、ランバート可哀想」
「まぁ、あれで泣くような奴ならそうだけどね。ランバートは明らかにそんなんじゃないでしょ」
それを言われるとなんとも言えない。確かに大人しく言う事をきくようには思えない。
ランバートは鋭い笑みを浮かべていた。それ以上に、なんだか少し寒い雰囲気がある。
「では、ハドラー先輩が負けたら前髪パッツンにしますよ」
「なんでもしろ!」
相手の先輩は長めの金髪で、顎のラインで髪を綺麗に切りそろえている。これで前髪パッツンは……なんか。
「はいはい、では始めるよ」
なんとも気の抜けた感じでウェインが開始の合図をした。
動いたのはハドラーという先輩だった。早い動きで前に出て横に薙ぐ。けれどランバートは動じない。立てた剣を鞘から抜ききらずに受け止め、逆に押し返した。
力が強くなっているんだと思った。当たり負けしない力があるから出来るんだ。
後ろに押されたハドラーはそれでも足元のステップをきかせて追撃を回避し打ち込む。それも、ランバートは余裕でかわした。
紙一重でかわしているように見える。見えるけれど、違う。ランバートちゃんと見切って、あえてギリギリでかわしている。動きを見ているばかりじゃない。全身で感じている。
「すごい」
上から見ているから分かる。ハドラーは動かされている。ランバートは剣を構えているけれど全然使うつもりがない。やろうと思えばきっと直ぐに手を出せる。切り結ぶ事もできる。でもあえてせず、間合いも詰まってきているのにあえてさせている。甘い踏み込みを待っている。
「年末のパーティーでさ、バレちゃったんだよ」
「え?」
「ランバートがファウスト様と交際してるの。それで今年入って、先輩達がランバートに訓練の時に決闘挑むようになっててさ」
「そんなの違うよ!」
だって、こんな事周囲が騒ぐ事じゃない。これが家族だって言うなら仕方がないけれど、同僚が出張っていい事じゃない。
非難すればハリーも「うん、違うよ」と認めた。
「でもさ、俺達よりも一つ上の先輩とかは、戦場経験しててさ。そういう人にとってファウスト様は本当に軍神で、崇拝の対象みたいな感じでさ。だからか挑まれてる。で、ランバートはその全てを返り討ちにしてる」
「……えぇ」
ファウストが崇拝されているのは納得として、挑まれている全てを払いのけているランバートは凄くないのだろうか。
試合に再び目を向けた。ハドラーはもうバテバテで、剣をギリギリ構えている感じだった。
「くっそぉ……卑怯だ!」
「戦術において卑怯も何もありません。見抜けているなら乗らなければいいことですよ、ハドラー先輩」
とてもいい笑顔で言ったランバートに、ハドラーはへばりながらも突進する。だがその剣に、もう力はない。難なくランバートの一撃で剣は手を離れて落ちた。
「ランバートの勝ち! ハドラー、とりあえず雪中ランニング十本。その後ここで公開散髪ね」
「うぅぅ、嫌だぁ!」
「だーめ! 挑んで啖呵切ったなら有言実行!」
「情けをかけてもいいですよ?」
ニヤリといい笑顔でランバートが言い、ハドラーは「ぐぬぬっ」と口元を歪めた後で、「うわぁぁ!」と叫びながら雪中ランニングを開始する。それに周囲は笑ったり、応援したり、ランバートを称えたりしている。
「ファウスト様の背中を守りたいんだって」
「え?」
見ていたハリーが、満足そうな顔をして言った。そして歩き出していく。
「強くなってるよ、ランバート。もう二年目で一対一で勝てる奴いない。先輩だってダメ。アシュレー様が剣を、グリフィス様が体術を指南してる。ランバートもそれをどんどん取り込んでる。本当に強いよ」
会わない間に、ランバートはとても努力してきたんだ。そして、強くなっていっている。
クリフは少しだけ悔しかった。ランバートを見て強くなろうと決めた。そしてまずは、気持ちを強く持とうと思った。弱い自分を変えたくて必死になった。強い自分を演じた。はったりは、そのうちに強い自分を引き寄せていった。震えそうな時、負けそうな時、負けたくないと踏ん張った。
「……強さはさ、べつに力ばかりじゃないよ」
「え?」
ハリーが、ふと言って指を指した。解散していく人の中にファウストがいた。どこかほっとした顔をして。
「ファウスト様もさ、違う強さを身につけた感じがする」
「え?」
「公になった事でね、ランバート狙いだった先輩や同期、後輩から、嘆願書を貰うみたい。『ランバート先輩を時々はこちらに返して下さい』とか、『ずるいです』とか。そういうのに負けなくなったらしい。これ、オリヴァー様情報ね」
ハリーが悪戯っぽい顔をする。多分「他言無用」と言いたいんだろう。クリフは頷いた。
「言うんだって。『欲しいならいつでも奪いに来い』って。不安じゃなくて、自信を持って受け止めてるみたい。今もさ、毎日心配そうに決闘の様子を見に来てるけれど手を出したりはしないしね。見守る強さっていうのを、身につけたって言ってた」
「かっこいいね」
二人とも、とてもかっこいい。お互いを信じて、自分を信じている。そういう姿を見ていると、羨ましいかもしれない。
「先輩達の中にはさ、そういう二人を見て『悔しいけど、似合いだ』って笑う人もいるよ。ううん、そういう人が多くなったかな。努力を惜しまない、人一倍訓練も仕事もするランバートだからこそだし、変にお高くとまったりもしないしね」
「ハリーも認めてるの?」
問いかけた事にハリーは少し驚いて、次に少し睨んだ。整った顔が嫌そうにすると、少し怯えてしまう。
「気づいたの? 俺が少しだけ、ランバートありだなって思ってたの」
「……時々、苦しそうに見えた」
「嫌な観察眼。言わないでよ、今更誰にも言う気ないし、変な事も考えてない。実際お似合いだと思うし、波風立てる気もないんだから」
ぶすっとしたハリーに頷いて、クリフはこれに封をした。
なんにしても、明日から通常の隊の訓練に合流する事になった。第四師団の仕事を基礎から教えて貰う事になったのだ。
「クリフも楽しそうだな」
「うん、楽しいよ。ピアースも楽しい?」
部屋に戻ってくると、先に戻っていたピアースが近づいてくる。彼も目をキラキラさせて楽しそうだ。それを見ると、ここに来た時の不安が消えていくように思う。
「楽しい……と言うと、不安もあるけどな」
「え?」
「やっぱり訓練、厳しそうだ。今日午後から参加してみたんだけど、ついてくのがやっと。これでも頑張ってたんだけどさ、ちょっと負けそう」
明るくて努力家。ピアースはそんな人で、責任感も強くて、曲がった事が嫌い。そんなピアースに、クリフはずっと支えられてきた。ひとりぼっちだったクリフの隣にずっといてくれて、おかげで仲間が増えた。
クリフはそんなピアースの事が大好きだ。
「クリフは平気か?」
「辛そうな部分もあるけれど、でも負けない。ここに来たいって思ったのは本当だから、頑張るよ」
笑って言ったその言葉に、ピアースは驚いた顔をして、次に弱く笑った。最近少しだけ、ピアースはこんな顔を見せてくれるようになった。明るくて頑張り屋のピアースの、少しだけ弱い表情だ。
「なんか、情けない」
「え?」
「クリフ、しっかりしただろ? 最近俺はそんなクリフに引っ張ってもらってる。昔は違ったのにさ」
「あ……」
違う、そうじゃない。言いたいのに、クリフは上手く言葉が出ない。本当は、ピアースの隣に並びたくて強がっているんだ。ピアースに心配かけたくなくて、しっかりしようと思っているんだ。
「あの、ピアース」
「あぁ、いや! それがダメってことじゃないぞ!」
顔を赤くして、ピアースは手を大きく振って否定する。耳まで赤くした彼はその後でそっぽを向いた。
「あのさ、俺も頑張る。でも時々ダメになったらさ……尻蹴飛ばしてくれよな」
「え?」
「俺、負けたくない。自分に負けたくない。もうダメだとか、俺はここまでなんだなんて思いたくない。ここに来て、訓練参加して、余計に思った。王都の騎士って、やっぱ凄い。どんな奴も、自分と仲間の為に凄く頑張ってる。だから俺も、頑張りたいんだ」
「うん」
それはクリフだって思った。ランバートの姿を、他の隊員の姿を見て思った。みんな、努力している。仲間の為、自分の為に頑張っているんだ。そんな人達を見て、クリフも頑張ろうと思ったのだ。
「でも時々は、負ける事もあると思う。上手くいかなくて自棄になったり、辛くて泣き言いうこともあると思う。そういう時は俺の尻蹴り飛ばしてさ、『何言ってんだ、しっかりしろ!』って、叱って欲しい」
弱く笑ったピアースを見て、クリフは頷く。確かに強く、一度だけ。
「一緒に頑張ろうピアース。僕も、負けない」
自分の方法で頑張るんだ。クリフは気持ちを確かにする。そして、胸に秘めた思いを確かにしていった。
クリフが就く第四師団はオリヴァーという優しそうで、でもそればかりではない怪しい雰囲気のある人が師団長だった。紹介後、握手をしたけれどちょっとだけドキドキした。
今日はハリーと二人で訓練の様子を見ている。少し回っていると、外の修練場が俄に騒がしくなった。
「あぁ、今日もやってるんだ」
「どうしたの?」
なんだか人が沢山だ。あまり長身じゃないクリフじゃ何が起こっているのか分からない。
「せっかくだから行こうか。二階からならよく見える」
そう言われて二階に行くと、修練場の上にはランバートと、先輩らしい人が向き合っている。
「ランバート、お前の強さ俺が確かめてやる! 負けたらファウスト様を速やかに返還せよ!」
「なっ!」
先輩の啖呵に、クリフは思わず声を上げる。勝手な言いようが許せなかったんだ。けれど隣のハリーは全く心配していない。余裕の顔で見ている。
「あんなこと言われて、ランバート可哀想」
「まぁ、あれで泣くような奴ならそうだけどね。ランバートは明らかにそんなんじゃないでしょ」
それを言われるとなんとも言えない。確かに大人しく言う事をきくようには思えない。
ランバートは鋭い笑みを浮かべていた。それ以上に、なんだか少し寒い雰囲気がある。
「では、ハドラー先輩が負けたら前髪パッツンにしますよ」
「なんでもしろ!」
相手の先輩は長めの金髪で、顎のラインで髪を綺麗に切りそろえている。これで前髪パッツンは……なんか。
「はいはい、では始めるよ」
なんとも気の抜けた感じでウェインが開始の合図をした。
動いたのはハドラーという先輩だった。早い動きで前に出て横に薙ぐ。けれどランバートは動じない。立てた剣を鞘から抜ききらずに受け止め、逆に押し返した。
力が強くなっているんだと思った。当たり負けしない力があるから出来るんだ。
後ろに押されたハドラーはそれでも足元のステップをきかせて追撃を回避し打ち込む。それも、ランバートは余裕でかわした。
紙一重でかわしているように見える。見えるけれど、違う。ランバートちゃんと見切って、あえてギリギリでかわしている。動きを見ているばかりじゃない。全身で感じている。
「すごい」
上から見ているから分かる。ハドラーは動かされている。ランバートは剣を構えているけれど全然使うつもりがない。やろうと思えばきっと直ぐに手を出せる。切り結ぶ事もできる。でもあえてせず、間合いも詰まってきているのにあえてさせている。甘い踏み込みを待っている。
「年末のパーティーでさ、バレちゃったんだよ」
「え?」
「ランバートがファウスト様と交際してるの。それで今年入って、先輩達がランバートに訓練の時に決闘挑むようになっててさ」
「そんなの違うよ!」
だって、こんな事周囲が騒ぐ事じゃない。これが家族だって言うなら仕方がないけれど、同僚が出張っていい事じゃない。
非難すればハリーも「うん、違うよ」と認めた。
「でもさ、俺達よりも一つ上の先輩とかは、戦場経験しててさ。そういう人にとってファウスト様は本当に軍神で、崇拝の対象みたいな感じでさ。だからか挑まれてる。で、ランバートはその全てを返り討ちにしてる」
「……えぇ」
ファウストが崇拝されているのは納得として、挑まれている全てを払いのけているランバートは凄くないのだろうか。
試合に再び目を向けた。ハドラーはもうバテバテで、剣をギリギリ構えている感じだった。
「くっそぉ……卑怯だ!」
「戦術において卑怯も何もありません。見抜けているなら乗らなければいいことですよ、ハドラー先輩」
とてもいい笑顔で言ったランバートに、ハドラーはへばりながらも突進する。だがその剣に、もう力はない。難なくランバートの一撃で剣は手を離れて落ちた。
「ランバートの勝ち! ハドラー、とりあえず雪中ランニング十本。その後ここで公開散髪ね」
「うぅぅ、嫌だぁ!」
「だーめ! 挑んで啖呵切ったなら有言実行!」
「情けをかけてもいいですよ?」
ニヤリといい笑顔でランバートが言い、ハドラーは「ぐぬぬっ」と口元を歪めた後で、「うわぁぁ!」と叫びながら雪中ランニングを開始する。それに周囲は笑ったり、応援したり、ランバートを称えたりしている。
「ファウスト様の背中を守りたいんだって」
「え?」
見ていたハリーが、満足そうな顔をして言った。そして歩き出していく。
「強くなってるよ、ランバート。もう二年目で一対一で勝てる奴いない。先輩だってダメ。アシュレー様が剣を、グリフィス様が体術を指南してる。ランバートもそれをどんどん取り込んでる。本当に強いよ」
会わない間に、ランバートはとても努力してきたんだ。そして、強くなっていっている。
クリフは少しだけ悔しかった。ランバートを見て強くなろうと決めた。そしてまずは、気持ちを強く持とうと思った。弱い自分を変えたくて必死になった。強い自分を演じた。はったりは、そのうちに強い自分を引き寄せていった。震えそうな時、負けそうな時、負けたくないと踏ん張った。
「……強さはさ、べつに力ばかりじゃないよ」
「え?」
ハリーが、ふと言って指を指した。解散していく人の中にファウストがいた。どこかほっとした顔をして。
「ファウスト様もさ、違う強さを身につけた感じがする」
「え?」
「公になった事でね、ランバート狙いだった先輩や同期、後輩から、嘆願書を貰うみたい。『ランバート先輩を時々はこちらに返して下さい』とか、『ずるいです』とか。そういうのに負けなくなったらしい。これ、オリヴァー様情報ね」
ハリーが悪戯っぽい顔をする。多分「他言無用」と言いたいんだろう。クリフは頷いた。
「言うんだって。『欲しいならいつでも奪いに来い』って。不安じゃなくて、自信を持って受け止めてるみたい。今もさ、毎日心配そうに決闘の様子を見に来てるけれど手を出したりはしないしね。見守る強さっていうのを、身につけたって言ってた」
「かっこいいね」
二人とも、とてもかっこいい。お互いを信じて、自分を信じている。そういう姿を見ていると、羨ましいかもしれない。
「先輩達の中にはさ、そういう二人を見て『悔しいけど、似合いだ』って笑う人もいるよ。ううん、そういう人が多くなったかな。努力を惜しまない、人一倍訓練も仕事もするランバートだからこそだし、変にお高くとまったりもしないしね」
「ハリーも認めてるの?」
問いかけた事にハリーは少し驚いて、次に少し睨んだ。整った顔が嫌そうにすると、少し怯えてしまう。
「気づいたの? 俺が少しだけ、ランバートありだなって思ってたの」
「……時々、苦しそうに見えた」
「嫌な観察眼。言わないでよ、今更誰にも言う気ないし、変な事も考えてない。実際お似合いだと思うし、波風立てる気もないんだから」
ぶすっとしたハリーに頷いて、クリフはこれに封をした。
なんにしても、明日から通常の隊の訓練に合流する事になった。第四師団の仕事を基礎から教えて貰う事になったのだ。
「クリフも楽しそうだな」
「うん、楽しいよ。ピアースも楽しい?」
部屋に戻ってくると、先に戻っていたピアースが近づいてくる。彼も目をキラキラさせて楽しそうだ。それを見ると、ここに来た時の不安が消えていくように思う。
「楽しい……と言うと、不安もあるけどな」
「え?」
「やっぱり訓練、厳しそうだ。今日午後から参加してみたんだけど、ついてくのがやっと。これでも頑張ってたんだけどさ、ちょっと負けそう」
明るくて努力家。ピアースはそんな人で、責任感も強くて、曲がった事が嫌い。そんなピアースに、クリフはずっと支えられてきた。ひとりぼっちだったクリフの隣にずっといてくれて、おかげで仲間が増えた。
クリフはそんなピアースの事が大好きだ。
「クリフは平気か?」
「辛そうな部分もあるけれど、でも負けない。ここに来たいって思ったのは本当だから、頑張るよ」
笑って言ったその言葉に、ピアースは驚いた顔をして、次に弱く笑った。最近少しだけ、ピアースはこんな顔を見せてくれるようになった。明るくて頑張り屋のピアースの、少しだけ弱い表情だ。
「なんか、情けない」
「え?」
「クリフ、しっかりしただろ? 最近俺はそんなクリフに引っ張ってもらってる。昔は違ったのにさ」
「あ……」
違う、そうじゃない。言いたいのに、クリフは上手く言葉が出ない。本当は、ピアースの隣に並びたくて強がっているんだ。ピアースに心配かけたくなくて、しっかりしようと思っているんだ。
「あの、ピアース」
「あぁ、いや! それがダメってことじゃないぞ!」
顔を赤くして、ピアースは手を大きく振って否定する。耳まで赤くした彼はその後でそっぽを向いた。
「あのさ、俺も頑張る。でも時々ダメになったらさ……尻蹴飛ばしてくれよな」
「え?」
「俺、負けたくない。自分に負けたくない。もうダメだとか、俺はここまでなんだなんて思いたくない。ここに来て、訓練参加して、余計に思った。王都の騎士って、やっぱ凄い。どんな奴も、自分と仲間の為に凄く頑張ってる。だから俺も、頑張りたいんだ」
「うん」
それはクリフだって思った。ランバートの姿を、他の隊員の姿を見て思った。みんな、努力している。仲間の為、自分の為に頑張っているんだ。そんな人達を見て、クリフも頑張ろうと思ったのだ。
「でも時々は、負ける事もあると思う。上手くいかなくて自棄になったり、辛くて泣き言いうこともあると思う。そういう時は俺の尻蹴り飛ばしてさ、『何言ってんだ、しっかりしろ!』って、叱って欲しい」
弱く笑ったピアースを見て、クリフは頷く。確かに強く、一度だけ。
「一緒に頑張ろうピアース。僕も、負けない」
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