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暗黒神ザナファ討伐編
074話 この世の果てで恋を歌う少女
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-ハルモニア大陸 この世の果て-
この世界の最北端に当たる大陸「ハルモニア」。
強力なモンスターが発生する大穴が有りストーリーモードではマザーブレイン撃破後、暗黒神ザナファが復活し50階層のラストダンジョンが出現する。
通常のモードではアビスダンジョンと呼称され、後のアップデートで追加コンテンツが実装され最大100階層になり最深部に暗黒神ザナファよりも強い根源の神「破壊神アザドゥ」が眠っている。
ゲーム内ではフィールド名は「この世の果て」と表示される。
50階層までは、そこまで難しくないが追加コンテンツに当たる51階層以下は上級プレイヤー専用の超高難易度のダンジョンで単独攻略はまず無理な造りとなっている。
ギュノス領北部の桟橋から約1時間の船旅を終え、ハルモニア大陸に上陸した私達は紫色の雪と氷河に覆われたアビスダンジョン前へと到着した。
巨大な大穴には蟻の巣の様にいくつもの入口が有り、この世界のモンスターはその穴から湧き出していると言う設定だったはず。
禍々しい程に濃い紫色をした雪を踏みしめ、洞窟へと向かう。
「この状況でも大陸行きの船が出ているのは、凄いですね。」
「ロトの血を引く親父並みに荒れた海を泳いで渡るより良いと思うぞ。」
何の話しか分からないのでコメントに困る。
「DOS、それ何の話?」
「シノブ殿、昭和生まれネタでござる。拙者も平成リメイク版はプレイしたでござる。」
有名な話のネタらしく男性陣は苦笑しながらも全員が共有している雰囲気だった。
現実世界に戻れたら詳しく聞くとしよう。
「このエフェクトは・・・むぅ。」
このダンジョンの特徴は入る入口でダンジョンの構造が無限に変化するランダム生成型の仕様の為、攻略本や攻略サイトにも内部の詳細は載って無い。
そして最も厄介なのがアビスダンジョンは世界中のマナを吸収しモンスターを生成していると言う設定が有り、SP自然回復量が通常のフィールドと比べ約1/3程度に激減する。
今までの様な高出力の特殊技能や魔法を連続使用し難くなっている。
その為、複数のパーティーで同時攻略が推奨されている。
最高レベルの私達は元のゲームなら6人で丁度良い位の難易度だったが、この世界は更に難易度が高くなり主戦力の1人のギルドマスターのミカエルが不在の為に苦戦は免れないだろう。
「私の手持ちの復活薬が1個しか無いよ。」
「拙者の手持ちはゼロ、この世界は売って無いでござる。」
「私は2個です、そう言えば今まで見た事無いですね。【ハイエリクサー】も売って無いですし。」
「・・・・・私も無いな。」
「我も在庫は無い。公営競売場でも出品されていなかった。」
確かに現実的に考えたら死者蘇生する薬なんて有れば1兆円でも安いと感じる人は居るだろう。
不意に咲耶が私に即時復活薬【アナスタシン】2個を受け渡してきた。
取り敢えず受け取る。
「シノブ殿が持っているのが1番安全かもしれん。防御力と回避能力が最も高いでござるから。」
「そうだな、シノブが持っていた方が安心だ。」
DOSの指示で私が残り3個の即時復活薬【アナスタシン】を所持する事となった。
でも、もし4人が同時に死んだ場合・・・私はどうしたら良いのだろうか?
ゲームと同じでホームポイントに復活出来るのだろうか?
今だったら機械都市ギュノス国になるのだろうか?
他のNPC同様に完全なる死の疑念が有るのであれば、ゲームの様にポンポン復活が出来ないだろう。
「分散して持ってた方が良くない?私が死んだら復活させられないよ?」
「シノブは私が守りますから大丈夫ですよ。」
「シノブは拙者が命に代えても守るでござる。」
「シノブは私が守ります。」
「未来の妻を黄泉の国に行かせる訳なかろう。」
4人がほぼ同時に私を死なせないと発言して、何故かお互いを睨むように互いに顔を伺っている。
皆優しいなぁ、私が不安な表情をしていたのが分かったのだろう。
うん、これは責任重大だぞ。
やはり私の回避能力の高さと皆が作ってくれた最強の防具への信頼度を裏切る訳にはいかない。
「分かった!私頑張るよ!絶対クリアしよう!」
「分かってないな。」
「分かってないでござる。」
「・・・・・ふむ。」
「ワハハハハ!良いぞ!行こう、深淵の彼方へ!」
うん?
何か変な事を言ったかな?
まぁいいや。
いざ、最終ダンジョンへ!
ここのモンスターは軒並み強い、それぞれの役割分担を守りながら回復薬を節約しながら進む必要が有る。
ゲーム内よりもリアルに感じるこの空気感が私の中に有る少しの好奇心と恐怖を高めている。
この世界に転移してから1ヶ月以上が経過している、ようやく来たんだ。
ストーリーモードのラストダンジョン、そして私達にとっての始まりの場所。
あの時皆で倒した暗黒神ザナファ、そこで不思議な光に包まれて・・・
気が付いたらこの世界に居た。
だからこの場所は始まりの場所。
そして現実世界へ帰る為の終わりの場所。
世間では糞ゲーと称され、3年間の短いサービスを終了しようとしていたこのゲームだが改めて思う。
私はこのゲームが好きだ。
もう一つの現実、もう1つの世界。
皆と一緒に過ごして来た大切な時間。
私はこの世界が大好きなんだ。
日常生活の中で寝ても覚めてもSMOの事を考えていた。
早くログインして皆に会いたかった。
今日は何処で何をしようかと起きた時から考えていた。
もしかしたら恋に近い感情なのかも知れない。
多分だけど、今私は何よりも尊い時間を過ごしているんだ。
この世界の最北端に当たる大陸「ハルモニア」。
強力なモンスターが発生する大穴が有りストーリーモードではマザーブレイン撃破後、暗黒神ザナファが復活し50階層のラストダンジョンが出現する。
通常のモードではアビスダンジョンと呼称され、後のアップデートで追加コンテンツが実装され最大100階層になり最深部に暗黒神ザナファよりも強い根源の神「破壊神アザドゥ」が眠っている。
ゲーム内ではフィールド名は「この世の果て」と表示される。
50階層までは、そこまで難しくないが追加コンテンツに当たる51階層以下は上級プレイヤー専用の超高難易度のダンジョンで単独攻略はまず無理な造りとなっている。
ギュノス領北部の桟橋から約1時間の船旅を終え、ハルモニア大陸に上陸した私達は紫色の雪と氷河に覆われたアビスダンジョン前へと到着した。
巨大な大穴には蟻の巣の様にいくつもの入口が有り、この世界のモンスターはその穴から湧き出していると言う設定だったはず。
禍々しい程に濃い紫色をした雪を踏みしめ、洞窟へと向かう。
「この状況でも大陸行きの船が出ているのは、凄いですね。」
「ロトの血を引く親父並みに荒れた海を泳いで渡るより良いと思うぞ。」
何の話しか分からないのでコメントに困る。
「DOS、それ何の話?」
「シノブ殿、昭和生まれネタでござる。拙者も平成リメイク版はプレイしたでござる。」
有名な話のネタらしく男性陣は苦笑しながらも全員が共有している雰囲気だった。
現実世界に戻れたら詳しく聞くとしよう。
「このエフェクトは・・・むぅ。」
このダンジョンの特徴は入る入口でダンジョンの構造が無限に変化するランダム生成型の仕様の為、攻略本や攻略サイトにも内部の詳細は載って無い。
そして最も厄介なのがアビスダンジョンは世界中のマナを吸収しモンスターを生成していると言う設定が有り、SP自然回復量が通常のフィールドと比べ約1/3程度に激減する。
今までの様な高出力の特殊技能や魔法を連続使用し難くなっている。
その為、複数のパーティーで同時攻略が推奨されている。
最高レベルの私達は元のゲームなら6人で丁度良い位の難易度だったが、この世界は更に難易度が高くなり主戦力の1人のギルドマスターのミカエルが不在の為に苦戦は免れないだろう。
「私の手持ちの復活薬が1個しか無いよ。」
「拙者の手持ちはゼロ、この世界は売って無いでござる。」
「私は2個です、そう言えば今まで見た事無いですね。【ハイエリクサー】も売って無いですし。」
「・・・・・私も無いな。」
「我も在庫は無い。公営競売場でも出品されていなかった。」
確かに現実的に考えたら死者蘇生する薬なんて有れば1兆円でも安いと感じる人は居るだろう。
不意に咲耶が私に即時復活薬【アナスタシン】2個を受け渡してきた。
取り敢えず受け取る。
「シノブ殿が持っているのが1番安全かもしれん。防御力と回避能力が最も高いでござるから。」
「そうだな、シノブが持っていた方が安心だ。」
DOSの指示で私が残り3個の即時復活薬【アナスタシン】を所持する事となった。
でも、もし4人が同時に死んだ場合・・・私はどうしたら良いのだろうか?
ゲームと同じでホームポイントに復活出来るのだろうか?
今だったら機械都市ギュノス国になるのだろうか?
他のNPC同様に完全なる死の疑念が有るのであれば、ゲームの様にポンポン復活が出来ないだろう。
「分散して持ってた方が良くない?私が死んだら復活させられないよ?」
「シノブは私が守りますから大丈夫ですよ。」
「シノブは拙者が命に代えても守るでござる。」
「シノブは私が守ります。」
「未来の妻を黄泉の国に行かせる訳なかろう。」
4人がほぼ同時に私を死なせないと発言して、何故かお互いを睨むように互いに顔を伺っている。
皆優しいなぁ、私が不安な表情をしていたのが分かったのだろう。
うん、これは責任重大だぞ。
やはり私の回避能力の高さと皆が作ってくれた最強の防具への信頼度を裏切る訳にはいかない。
「分かった!私頑張るよ!絶対クリアしよう!」
「分かってないな。」
「分かってないでござる。」
「・・・・・ふむ。」
「ワハハハハ!良いぞ!行こう、深淵の彼方へ!」
うん?
何か変な事を言ったかな?
まぁいいや。
いざ、最終ダンジョンへ!
ここのモンスターは軒並み強い、それぞれの役割分担を守りながら回復薬を節約しながら進む必要が有る。
ゲーム内よりもリアルに感じるこの空気感が私の中に有る少しの好奇心と恐怖を高めている。
この世界に転移してから1ヶ月以上が経過している、ようやく来たんだ。
ストーリーモードのラストダンジョン、そして私達にとっての始まりの場所。
あの時皆で倒した暗黒神ザナファ、そこで不思議な光に包まれて・・・
気が付いたらこの世界に居た。
だからこの場所は始まりの場所。
そして現実世界へ帰る為の終わりの場所。
世間では糞ゲーと称され、3年間の短いサービスを終了しようとしていたこのゲームだが改めて思う。
私はこのゲームが好きだ。
もう一つの現実、もう1つの世界。
皆と一緒に過ごして来た大切な時間。
私はこの世界が大好きなんだ。
日常生活の中で寝ても覚めてもSMOの事を考えていた。
早くログインして皆に会いたかった。
今日は何処で何をしようかと起きた時から考えていた。
もしかしたら恋に近い感情なのかも知れない。
多分だけど、今私は何よりも尊い時間を過ごしているんだ。
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