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伝説の武器編

100話 頂上決戦

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-機械都市ギュノス国 グラズヘイム-

「シノ!シ~ノ!起きて!起きろ~!」

「・・・・ひたいひたい。」

頬をペチペチと叩かれ、引っ張られる感覚で目を覚ますと目の前にアルラトが居て布団の上から私に跨りながら両頬を引っ張っていた。

アルラトには珍しく少し焦っている様子だった。

彼女が何やら騒いでいるが寝起きで回らない頭と焦点が定まらない視界でボーっとしていると、腕を引かれて入口付近の小窓へと連れていかれる。

小窓の蓋をスライドさせ、そっと外の国営賭博場カジノフロアを覗くと都会の通勤電車の早朝ラッシュを思わせる位の客が犇めいていて思わず小窓のスライドを閉める。

「何コレ・・・」

「ね、凄いね!今日も沢山お客様が来そうだね!」

昨日より確実に多い、地元客なら国営賭博場カジノに入るだけで1万ゴールドの入場料を支払っているはずだ・・・・

駄目だギュノス国民の金銭感覚が分からん。
あれか!リボ払いか!?マザーブレインのほくそ笑む顔が浮かぶ。

「今は何時?と時計・・・時計は。」

「はい、時計。」

アルラトに手渡された時計を確認すると朝6時35分を指していた。

もしかしたら他のキャストやスタッフも通常通りに出勤したら店に辿り着くのに30分以上掛かるかも知れない。

「よし、アルラトは酔っ払いを起こして来て!私は掃除を始めるから。」

「はいはーい!」

私は咲耶と暗黒神ハーデスハーちゃんを急いで起こし4人で店内の片付けと清掃を始めた。

案の定、すし詰め状態の客に巻き込まれ支配人やスタッフの出勤が遅れる。

店外では衛兵達が緊急出動したらしく機械兵と手分けして待機客の誘導を行っていた。

9時45分。

店内清掃が終わりお酒や食材の搬入も済み、何とか開店準備が間に合った。

支配人が簡単な朝礼を済ませると時間は9時55分、開店まで後5分となっていた。

「さてさて、昨日の汚名を返上しないといけませんね。ノンアルコールで勝つ!」

咲耶は気合十分の様だ。

「昨日、血の盟約を結んだ下僕共が群れをなして我が足元に膝ま付きに来るわ。」

暗黒神ハーデスハーちゃんは方向性が少しズレている様な気がする。

「僕も負けないよ!ねっ!シノ!」

「そうだね、頑張ろう!」

支配人が開店と同時に扉を開き5分も掛からず全席が埋まる。
今日も慌ただしい1日の始まりだ!

1日目に来店した客も多く見かける。
昨日の壁ドンを見た咲耶の客が暗黒神ハーデスハーちゃん指名席に座っていたのが笑えた。

私を指名してくれたお客様は昨日よりも女性客が増え、プチ女子会になっている。

タイミングが悪いと女性11人と男性1人みたいなグループになる事も有り、私が会話を振るが男性が恐縮している様な事も有った。

アルラトも手慣れた様子でお客様を持て成している。
不気味な位に甘え上手で確実にお金を意識した接客を行っている。

思わず「恐ろしい子!」と口に出してしまう程だ。
そして、確実にこの環境は教育上良くないと思った。




午後の部で咲耶のついたテーブルの周囲から歓声が上がった。
何事かと思い目を向けると、かの有名なシャンパンタワーが行われていた。

どうやら昨日、周回来店していた女性グループがお金を出し合って注文したらしいとスタッフから耳打ちをされた。

値段を聞いてみると、何と350万ゴールドらしい。

隣のテーブルから暗黒オーラのエフェクトが漏れ出し目を向けると暗黒神ハーデスハーちゃんがシャンパンタワーをしている咲耶を睨んでいた。

咲耶の方に目を向けるとニヤリといやらしい笑みを浮かべ顎をしゃくり上げてドヤ顔をしていた。

シラフなのに性格が歪んでいるのか?
もう完全に勝ちに行っている。

暗黒神ハーデスハーちゃんの表情を見て1人の女性客が立ち上がりスタッフを呼びシャンパンタワーの準備が始まる。

しかもシャンパンでは無く1番高いお酒を注文したらしい。

先程、支配人に暗黒神ハーデスハーちゃんの高額アルコールタワーの総額を聞くと1000万ゴールドと言われ思わず呆れる。
シャンパンと一桁違うお酒ってどんなのだよ。

ハッとしてアルラトの方を見ると2人の戦いをみてウズウズしていたので、敢えて止めた。
あれは悪い大人の例だから真似しちゃ駄目だ。

例え総合金額で負けても私達はお客様を争わせる事は止めようとアルラトに「道徳」を教えていた。

すると私達のテーブルに居たお客様に拍手され、さすが英雄様と照れ臭い褒められ方をした。

グラムヘイズの経営は今日だけじゃない。
明日も明後日も続いて行くのだ瞬間的な売上は確かに魅力的だが売上の大半がリピーターが作ると商売をしている母方の祖父が昔語っていたのを思い出したからだ。

タワーの頂上から銘柄は分からないが年代物のお酒が注がれ、上から順にグラスを満たしていく。

あれは・・・お酒なのか!?
宝石が散りばめられたボトルに透明な色のお酒がグラス目掛けて流れて行く。

あれが1000万の素・・・。

咲耶のテーブルよりも高いお酒なのはボトルの見た目で誰でも分かるらしく皆の視線は暗黒神ハーデスハーちゃんのテーブルに釘付けとなっていた。

照明が少し落とされ2つグラスタワーがスポットライトで照らされキラキラと綺麗に輝く。
拍手と歓声が起こりそこに居た全員にスタッフがグラスを拭いて振舞われた。

その後も2人はお互いを意識しながら巧みな話術で数回のシャンパンタワーを成功していた。
その度に店内に居たお客様に無料でグラスが振舞われ、お客様も喜んでいた様だ。

そして今日も慌ただしくも忙しい時間は進み、深夜24時の閉店を迎える。




2日目のゲスト参加最終日と言う事も有り支配人指示でバックルームに呼ばれ女性スタッフの手伝いにより強制的にレディースドレスコードに着替えさせられる。

そして私達は国営賭博場カジノに特設されたお立ち台に上げられた。

24時にも関わらずフロアには500名以上のお客様が残っており、国営賭博場カジノのオーナーAIからゲスト紹介とお礼の言葉が述べられる。

そして感情を包む割れんばかりの歓声と多数の拍手を受けた。
何とも恥ずかしい。

その後、護衛付きのリムジンで宿泊先のホテルに送って貰った。

今日の売上精算は終わっていなかったので明日IDカードに給料をチャージして貰う時に聞こうと皆で話していた。

激動の2日間が終わり流石にぐったりとする3人と元気な1人。

皆無言でベッドやらソファやらに沈む様に倒れ込み意識を失う様に眠ってしまった。

この世界に来て働く経験が出来たのは現実世界で活かせるのかな?

うん、多分良い経験だ。

労働万歳。
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