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伝説の武器編

104話 落札!

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挨拶もそこそこに熱気冷めやらぬ会場を後にした私は、【索敵】の特殊技能スキルを使用する。

あの老婆の反応は無い、私は国営賭博場カジノ周辺を見て回る。
周辺の路地はシルビアさんとの勝負の噂を聞きつけた市民でごった返していた。

居ない・・・目的の老婆の姿は無い。

以前と同じく存在も気配も無い。
居た事すら幻覚なんじゃないかと自分自身を疑ってしまう。

あの時、5分・・・
いや2分位かも知れない。

確かに私以外の時間が止まっていた。
マザーブレインも言っていたが、突然現れて霧の様に消える・・・と。

しかもその映像すら消去されていたと話していた。

今回の国営賭博場カジノの監視カメラの映像を後でマザーブレインに見せて貰おう。
もしかしたら姿が映っているかも知れない。

先程の対決の賞金として勝利金額の約3億7000万ゴールドをギルド共有預金場所にチャージする。

「これで良しっと・・・皆の所に戻ろう!」

混んでいる道を避け、看板伝いに公営競売場オークションへ向かう。

急いで向かうが入札終了時間までに着くのは難しいかも知れない。
着いた頃には落札出来ていれば良いけど。




-機械都市ギュノス国 公営競売場オークション-

落札時間10分前。
ここから5分間が最終入札時間となる。

希少鉱石レアメタル森羅万象しんらばんしょう】の現在入札件数29件、最高入札価格62億2000万ゴールド。

手持ちが64億ゴールドにミカエル達が入金した金額が9300万ゴールドで64億9300万ゴールド。

入札状況を観察していると約2名が入札し合っている。
競っている2人の手持ち限界がいくらか想像出来ない。

「まずいでござるな。」

「ああ、今の価格が限界なら良いがな。」

「余裕が有ると思いましたが、やはりギリギリの時間で攻めてきましたね。」

「・・・・・」

残り4分・・・3分・・・2分・・・言葉にならない。
皆で集めて貰った金額でも届かないかも知れない。

全ての装備を売れば、もっと余裕を持てただろう・・・
しかし、もう時間が無い。

いちかばちか、64億9300万ゴールドに全てを掛けるしか無い。

「・・・・これで勝負するしかない。」

皆で顔を向き合わせ頷く。

いつの間にか更新されていた特別市民IDを入札機に挿入すると合計貯金額が更新され68億6360万ゴールドと表示される。

約3億7000万ゴールド。
・・・・残高が増えた!?

まさかシノブが?4時間でこんなに!?
・・・改めて彼女の事を凄いと思った。

あの子と一緒なら、どんな困難も超えれそうな気がする。

「これは・・・!流石!黒蝶と言った所ですね。」

「シノブ殿なら当然でござるよ。」

「凄いな、私達の4倍近くを1人で稼ぐとは・・・」

「ふん、当然だ。」

「何でパパが偉そうにしてるの?」

「ああ、凄いよ。まったく・・・本当に。」

私は全額の68億6360万ゴールドを入金し決定キーを押す。

公営競売場オークションの巨大モニターに入札終了時間を宣告する画面とアラートが会場内に鳴り響く。

通常の商品ではここまで大々的に表示されないだろう。
10億ゴールド以上の高額商品は会場内で大々的に放送される。

直接参加していない客も興味が有るのか場内に居る全員が巨大モニターに釘付けとなっている。
落札時間となり、最終入札金額が画面に表示される。

落札 68億6360万ゴールド DOSドス
次点 68億6000万ゴールド クリダル
   65億8000万ゴールド ゼノン

「おおおおお!!」
「あれって英雄様の名前じゃないか?」
「あんな金額見た事ねぇ!!」

超高額落札に会場が湧く。
しかも次点との差が360万ゴールド、まさに僅差だ。

ギリギリで落札。
シノブのチャージが無ければ勝てなかった。

商品受け取りカウンターに市民IDカードを提出し金額を差し引かれたカードと商品の受け取りを行う。

アイテムBOXを受け取り皆で中身を確認すると、エメラルドグリーンに光り輝く鉱石が納められていた。

この輝きは紛れも無く本物の希少鉱石レアメタル森羅万象しんらばんしょう】だ。
皆で落札の勝利を喜びながら談笑している所にシノブが息を切らせながら会場内に入って来た。

シノブに向けて【森羅万象しんらばんしょう】を掲げると、【縮地】を使って駆け寄り皆と抱き合いながら一緒になって喜んでくれた。

私は今日ほど仲間との絆を感じた日は無かった。

「・・・皆ありがとう。」





私達はアイテムストレージから伝説の長銃武器【アグネイヤ】を作成する為に必要な素材を取り出す。

DOSどっちゃんが指定したレア素材をそれぞれテーブルに並べて行く。

伝説の武器の素材と伝説の防具の素材は被る物が無い為、以前私の防具を造った時に消費して無いのが良かった。

「よし、材料は十分だ。皆協力してくれてありがとう。」

DOSどっちゃんは皆に深々と頭を下げる。

皆で協力して一つの目標に向かって頑張り、そして目標を達成する。

それは何とも言えない嬉しさと喜びの感情を刺激する、私は自分の事に様に嬉しくて思わず頬が緩む。

ゲームでもギルド対抗イベント等は有った。
しかしソレとは違った高揚感を感じる。

これがリアルとゲームの差なんだろう。

改めて感じる。
これはリアルなんだと。




-機械都市ギュノス国 ジルナーク工房-

素材を揃えジルナーク工房に制作を依頼した。

ジルナークは魔力を帯びたルーペで【森羅万象しんらばんしょう】を確認する。

そして嬉しそうな表情で「3日間だ。」と言いながら店外の看板をオープンからクローズに裏返し店の奥へと材料を持って去って行った。

奥の工房から「フフフフフフフフッ」と言うよ様な低い笑い声が聞こえて来ていた。
最高の仕事が出来る喜びを隠せない生粋の職人なのだろう。

以来をして店を出た瞬間にDOSどっちゃんは皆に改めて頭を下げる。

「ありがとう、皆のお陰で最強の長銃が出来る。すまない、我侭を聞いて貰って。」

「最強の武器は羨ましいが、私はこの剣を気に入っているからな。」

ミカさんが腰に付けている自身の剣の鞘をポンポンと叩く。

ミカさんの剣は伝説の剣に匹敵する程の能力を強化によって得ている。
ゲームとは言え長い時間を共に過ごして来た相棒だ、愛着は人一倍強いのだろう。

「拙者もその気持ちは理解出来るでござる。強さを求める気持ちも無い訳じゃないでござるがな。」

「そうですね、各々拘りと愛着が有るから最強で無くても最終装備になっている訳ですからね。」

「ふん、DPSはDOSドスに任せて良くなりそうだな。」

「元々DOSどっちゃんはDPS高かったでしょ。」

私達が伝説の武器の話題で盛り上がっていると不意にアルラトが私の袖をクイクイと引っ張る。

何だろう?と思いアルラトの方に目を向けると、アルラトは衝撃の事実を口にする。

「ねね。所でさ、僕達って所持金ゼロになったんだよね?」

「「「「「「あ・・・」」」」」」

アルラトの核心を付いた発言を聞いて一瞬全員の動きが止まる。

今日の朝、滞在日数を終えホテルのVIPルームはチェックアウトした所だ。

労働組合ギルドの依頼はAチームであらかた達成し掲示板には「初級者向けの素材集め」や「猫探し」等の少額依頼しか残っていない。

「改めて生活費を稼がねばなりませんね。」

「すまない。私の我侭で・・・」

「それはもう良いでござろう。」

今日の宿や食事の当てが無い。

私だけなら「栄誉市民」特権で様々な施設が無料で利用出来ると思おうけど、皆は最低でも半額は払う必要が有る。

「我はグラズヘイムに行くぞ、稼ぐなぞ余裕だからな。」

「その手が有りますね。賄いも有りますし。私達なら逆に歓迎されるでしょう。」

暗黒神ハーデスハーちゃんの提案に咲耶が同意する。
確かにグラズヘイムなら支配人やキャストの皆も快く迎えてくれると思う。

「賛成!私も行く!」

「僕も!」

私も賛成の意を表明し、アルラトも元気に手を上げる。

「風俗営業ですか、少し抵抗が有りますね。」

「拙者達もでござるよね。」

「・・・すまない。私にも出来る仕事が有るだろうか。」

結局ジルナークが武器を完成させるまでの間、「深紅の薔薇」全員で稼ぎの良い国営賭博場カジノ内で住み込みのアルバイトをする事になった。

ここ数日の売上で興行収入の潤っている国営賭博場カジノオーナーAIは私達を大歓迎で迎え入れてくれた。

労働で得た金額もさる事ながら、私達Bチームの凄さにミカさん達は改めて驚いていた。

そして、私達は再度アルバイト生活を始める事となった。
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