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百鬼夜行編

164話 創世教

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-ホウシェンの街-

ホウシェン国に滞在して約2週間が過ぎ様としていた。
特殊技能スキルの有る世界観の凄さは建築、鍛冶等の部分がリアルとは比べ物にならない早さで行われる所だ。

パソコンや製図用の器材が無いのに正確に図面に起こし材料を加工し、重機が無くても手作業で土木・建築等がサクサクと行われて行くのだ。

傍から見ていても楽しいレベルの職人芸だ、クラフト系のゲームをプレイいる感覚なのかな。
私達も森林地帯で1人当たり1時間で大木40本以上を切るのは余裕だ。

職業レベルの高い開発製造系技能クラフトスキルが使える職人が2人で材料さえ揃えば、10棟連なる長屋を1日で立ててしまう程のスピード感なのだ。

正直見てて関心してしまう、男連中は特にワクワクするらしくサクラ以外は率先して建築関係の作業に参加していた。

男は皆ホームセンターが大好きなのと同じだとDOSどっちゃんが話していた。

そう言う物なのだろうか?
良く分からんが女の私に木材収集と言う力仕事をさせるのは如何な物かと思いますが。

サクラは天帝に頼み込まれ、城内の侍幹部の剣術指南役をしている様だ。
侍初期~中期の特殊技能スキルは全員マスターし、天帝も剣技【朧三日月おぼろみかづき】と二刀流の初期剣技を習得し喜んでいた様だ。

私も忍衆の指導を頼まれ、1日の半分は忍衆の指導者として働いていた。

このゲームの忍者は初期職業「盗賊」から2次職業の「スカウト」と「レンジャー」経て職業クエストをクリアする事でなれる上級職だ。

驚いた事にNPCとして職業設定された城の忍衆は職業特性の回避能力2倍、暗殺・罠系の特殊技能スキル成功率2倍が付いただけで特殊技能スキルを持たない一般人だったのだ。

一般人よりかは強いけど、忍者を名乗るには余りにもな状況だった。
諜報活動が主なお仕事みたい感じらしいので今までは問題と思って無かった様だ。

私は取り敢えずスカウトの実用的な特殊技能スキルを教え、素早さを活かした実践的な戦い方から教える。
その甲斐在って、辛うじて下人程度の忍者の実力を得ていた。

暗殺特殊技能アサシンスキルは国家を揺るがす危険が有るとミカさんとDOSどっちゃんが言うので教えない様にした。

「シノブ師匠!」「シノブ様!」「シノブちゃん!」
「シノブさん!」「頭ぁ!」「頭領!」
姉者あねじゃ!」「ボス!」「先生!」

「・・・・・」

ここ数日で私の呼び方が大量に増えた。

別にどう呼ばれても良いので敢えて好きな様に呼んで貰っている。
サクラも「姉御あねご」とか呼ばれていた。

天帝の提案で侍部隊と忍衆の合同演習や模擬試合も行われ、ホウシェン城に所属する物理攻撃部隊はかなりの戦力増強になっていた。
弓矢部隊は流石のDOSどっちゃんでも指導は出来ない様で、侍や忍者に転身する者も少なく無かった。

東西南北を復興させている4将軍も領地の内政を部下に任せて、サクラの指導を受けに入れ替わり立ち代わり足繫く通っている様だった。

下手したらホウシェン城の侍幹部が力を付けて下剋上でもされるんじゃないかと心配しているとサクラが笑っていた。
確かに「力こそ全て」的な天帝なら、強者に喜んで将軍の位を与えそうでは有るけどね。

ある日の午後に近くの小さな漁村で不審者を捕まえたとの情報が入り、シロウの部下達が現地に赴き2日後に数名不審者を引き連れて城に戻って来た。

シロウの話では連行された人達は黒いローブに身を包み、手の甲に五芒星の刺青を彫った痩せた人間種ヒューマンの男性達だった。

見た目からこの国に人間では無さそうで、何を聞いても答えないと言っていた。作業中の私達も不審人物達に会う為に城へと赴いた。




-ホウシェン城-

ホウシェン城の修復は90パーセント終わっており、外観は完全に元の状態に戻っている。
咲耶と暗黒神ハーデスハーちゃんは城に来るのは久しぶりなので復興具合に甚く驚いていた。

私達は城の地下に有る牢獄に案内される。

石造りの床に木で出来た頑丈そうな檻の中に麻布で作られた囚人服を着た2人の男達が各々の牢の中で身を竦める様に捕らわれていた。

咲耶が通りかかると同時に怯えた様な表情になり、隅の壁に張り付く様に移動し頻りに「殺さないでくれ」と懇願し始めた。

「被害者と言う名のお主の知り合いでござるか?」

「失礼ですね!この国で私は最近大人しい部類だと思いますよ?それにこんな男共は知りません。」

この国でって言う台詞が若干気になったが、敢えて聞き流す事にした。

そもそもこの2名は漁村の立入禁止になっているエリアをうろついていて漁村に在住警備をしている侍が話しかけた所、斬り掛かって来た所を取り押さえたとの話だ。

「咲耶じゃなくて、妖精種エルフが怖いのかな?」

「操られた蜥蜴人間種リザードマンが話していた見慣れない服を着た妖精種エルフが咲耶に似ていて恐れているんじゃないか?」

DOSどっちゃんの話を聞いて咲耶の表情が不気味な笑顔に変わり、隣り合わせになっている牢獄に2人に対して話し始めた。

「死にたくないのであれば、貴方達の素性を喋って貰えませんか?話してくだされば私が貴方達をお守りしましょう。」

不気味な程に極上の笑顔で語るOLスーツ姿の咲耶は確かに怖い。
威圧的な特殊技能スキルでも持っているんじゃなかな?

暫くの後2人は怯えながら話し始めた。

「俺達は破壊神アザドゥ様を信仰する組織「創世教」と呼ばれる団体に所属していて、そこから逃げて来たんだ。あ、あんたは違うよな?最高幹部に似た様なヤツが居たんだ!兄弟とかでは無いよな!?」

「創世教」・・・

以前、機械都市ギュノス国でテロ未遂事件を起こしたミナ=モトシズが入信していたと供述書に書いて有った宗教団体で世界各地に支部が在るらしい。
・・・って事位しか知らない。

ゲームにもそんな宗教組織は出てこなかった。

「違います、安心してください。それで?何故この国に?」

「大いなる計画の礎・・・としか聞かされてない。古代の封印を解いて街を破壊すると言っていた。俺ら下っ端は亜人の誘導をしただけだ!まさかあんな巨大な化物共が封印されていると思わなかった!封印が解けた瞬間に亜人共も暴れ出して言う事を聞かなくなり、危うく殺される所だったぜ!だから命からがら逃げた・・・ぐ・・がはっ・・・」

男達が話の途中で急に咳込み、自身の喉を抑える様にして苦しみ始める。

「げほっげほっ・・・ぐぐがはっ・・・あ・・・」

「うぐぁ・・・ああ・・がはっ!」

「お、おい!どうした!?」

2人は急に胸を押さえ苦しみ出し吐血して息絶えた。
まるで口封じをする様なタイミングで目の前で死んだのだ。

手の甲に刻まれていた五芒星の刺青は薄れて消えていた。
その後、ミカさんを呼んで蘇生を試みたが不思議な事に彼等が生き返る事は無かった。

「手の甲に有った刺青が消えている。これが呪術?」

「私の【ヒルドルの盾】で蘇生が出来ないとは・・・。」

急に起きた蘇生不能な死亡事件に対して私達は立ち尽くすしか出来なかった。
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