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異世界崩壊編 後編

209話 魂のストレージ

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-ハイメス城 客室-

以前宿泊した部屋と同じ部屋に通されて疲れた体を癒す為にお風呂へと入る事にした。
湯舟にお湯を張るまでに入口に【粘着罠】を仕掛ける。

1人用のバスタブから薔薇の様な香りが周囲を包み始める。
ここのお風呂は謎の特殊魔法技術が使われているので他の国に比べならない位良い。

湯舟に浸かりながら、瞼を閉じて考える。

最近死者数が多過ぎて逆に悲しみの感情が薄くなってきている様な気がする。

バンボゥ国、コダ国、ピトゥリア国、アニマ国、アルテナ国、ホウシェン国、オスロウ国・・・出会って来た様々な人々が都市ごと消滅してしまった。

魔人ヨグトスの言う 次元上昇アセンションの為のエネルギーへと変換されたのだろうか?

そもそも 次元上昇アセンションって何だよ。
・・・意味分からん。

だいたい私に超能力が有るなら奇跡の力に目覚めてバーンと全てが上手く行く様なご御都合主義的展開になって大団円を迎えてくれれば良いのに。

・・・ってか今までの人生でそんな事1度も無かったから期待するだけ無駄だろうな。

脱衣所で体を拭き着替えていると、隣の部屋からドタバタと音が鳴る。

どうやら部屋に侵入した何者かが【粘着罠】に引っ掛かった様だ。
まぁどうせサクラだろうなと思い、ゆっくりと髪を拭いて乾かすフワフワのガウンを羽織り侵入者の様子を見に行く。
・・・どうせサクラだろう。

そこには【粘着罠】に包まったデイアの姿が有った。
そういえば、なんか前にも同じ様な事が有った様な気がする。

「シノブ・・・この城は安全ですから、この様な罠を仕掛けるのは止めて貰いたいのだが?」

簀巻きになり眉間に皺を寄せて眉をピクピクとさせている無様な姿のデイアが転がっていた。

「はい、城自体は安全ですね。」

私の返答の意味が理解出来無い様で不思議そうな表情を浮かべる。

城自体は安全だが、仲間に夜這い的な事をするネカマが居るのでと説明するのが面倒なので適当にお茶を濁す。

私は【粘着罠】を解除してデイアにお茶を淹れる。

「作戦会議は終わった。明日早朝に部隊編成をするそうだ。」

「それを伝えにワザワザ来たのですか?」

「すまないな、少し話しがしたかった。正直強さの度合いが想像付かないが、貴女達の隊長ミカエルさんの心を砕く程強いんでしょうね。」

「うん、城門の上から目の前で国民全てが死んだ瞬間を目撃して、その後ミカさん自身も殺されたんだ。最後の蘇生薬が有ったから良かったけど、下手したら私達も全滅してたかも知れない。」

「そうか、それは辛いな。あの様子だと彼女はもう戦えないかもな。」

私はデイアと小一時間話をした。
彼女は自身がゲームのNPCと言う事実に1番興味を持ったらしく私が知っている事を話した。

暗黒神ハーデスハーちゃんの方が詳しいと言うが、ヤツは話し難いとあっさり切られる。

あの高圧的な感じの口調はロールプレイであって普通に話せるんだけどな・・・と思いつつ苦笑いをする。

DOSドスさんにも頼んだのですが、この戦いに勝利した暁には私も「深紅の薔薇」に入れて貰えないかと。」

「私は歓迎だよ。でもギルドに入るにはギルドマスターの許可が必要なんだよ。でも今ミカさんは・・・・」

「ええ、DOSドスさんや咲耶さんからも同じ事を言われました。シノブ、明日は勝ちましょう。今日はゆっくりと休んで下さい。」

デイアは、そう言い残すと部屋を出て行った。
まだカノプスの姿はこの国からは観測出来ないが到達予想時刻までに戦闘準備する必要が有る。

私は改めて部屋の入口に【粘着罠】を仕掛ける。

程なくベッドに潜り眠くは無いが無理矢理にでも目を瞑る。
昔に動画で見た事が有る簡易的な睡眠導入方法を試してみる。

アルファベットのAからZで連想される単語を思い浮かべて行くと言う物だ。
・・・案外成功するものだ、私はそのまま深い眠りに付いていた。




暗い暗い空間に小さな光が無数に輝いている。

何故だか分からないけど脳が理解し思考として私に伝わる。
何故だか分かる、この無数の光の1つ1つがこの世界に住んでいた人々の魂だ。

輝きの大きさがそれぞれ違う。
一際大きく輝く光が幾つか存在する。

その光を「見たい」と思った瞬間にゲーム内でマウスカーソルを合わせた様にステータス表示ウィンドウが開く様に情報が見える。

これは、シグだ。
こっちはカイゼル・・エウルゥ・・・レベルに応じて輝きが大きいのかな?

奥の方に有るメチャクチャ大きな光は・・・・
ヴァッサゴ!?それにニグラス。

他のレイドボスも・・・
いくら探してもアルラトと破壊神アザドゥの魂は無いな。

アルラトの魂はハスタの武器破壊攻撃で核が壊された事で消滅したんだ。
もうアルラトは居ない・・・

そう実感した瞬間に目が覚める。

両目から涙が流れる。

今のは夢なのか、それとも魂がアイテム的な感じで保管されているストレージが何処かに存在してるのだろうか。

軽く汗を流し着替えを終えた私は作戦会議室の大広間に顔を出す。
やはりミカさんの姿は見えない。

今回の作戦には参加しない・・・と言うか、まだ出来る状態じゃ無いのだろう。
サブマスターのDOSどっちゃんが指揮を取り作戦が伝えられる。

一般市民は総出で街の新型結界の維持に当たり、古代神討伐には国から選出された魔法力上位1000名の攻撃魔法師団が結成。

さらに魔法騎士マジックナイト等の近接戦闘職3000名が待機。
先陣を切るのはこの国の王女デイア単独で戦闘に挑む作戦と説明された。

デイアは魔法攻撃を全て反射するドレスを纏っている。

極大攻撃魔法アルティメルスペルで先制攻撃を行った後、古代神カノプスの強力な聖属性魔法を反射した瞬間に魔法師団が一斉に魔法攻撃を行う。

聖属性魔法の再充填時間リキャストタイムが終わる前に空中から撃墜し近接攻撃で一気に止めを刺すと言う作戦だ。

仮にデータ改竄により再充填時間リキャストタイムが早く2度目の聖属性魔法が飛んで来た場合、魔法師団1000名の聖属性魔法障壁を張り3000名の魔法騎士マジックナイトが一斉に広範囲回復魔法を順次連続使用するらしい。

魔法都市ハイメス国だからこそ出来る大胆な作戦だ。

強力な聖属性魔法も脅威だが、ミカさんやDOSどっちゃんを倒す程の斬撃攻撃も注意が必要だ。

作戦の最終段階は私の持つ【破壊刀イレース】で古代神カノプスに止めを刺して消滅させないと魔人ヨグトスのエネルギーに還元されてしまうと言い、「作戦の要はシノブだ!」とDOSどっちゃんが全員の前で宣言するので全員の視線が一気に私の方を向く。

責任重大だ、今朝の夢じゃないけど私が倒さなければ強大なエネルギーとして保管されてしまう。

私は強く頷き、それに答える。

その時、伝令兵が部屋に駆け込み古代神カノプスが目視出来る範囲に出現したと大声で報告しに来る。

一瞬にして室内が騒めく、その時国王が口を開いた。

「皆の者!この国の明暗は其方らに託された。必ず生きて帰還せよ!・・・デイア死ぬでないぞ。」

デイアは国王に向かって頷き、部隊長や我々の方を向き直り宣言する。

「では、行くぞ!皆戦闘配置に付け!作戦指示は各部隊長が指揮をとりなさい!皆、祖国を必ず守るぞ!」

「「「「「「「オオオオオオオオオオオオオォォ!」」」」」」

デイア姫の言葉で部屋に居た部隊長達の士気が一気に高まる。
私達は急ぎ戦闘配置へと移動を開始した。
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