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AMNESIA編

248話 ノスタルジア

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5人に連れられて、この世界を見て回る。

最初はすぐ近くに見えた「アルテナの街」。
田舎と言った雰囲気の街並みで広大な田畑を見ると地元を思い出す。

不思議な事に、このゲームのNPCは同じ台詞を繰り返す無機質な物では無く極自然な会話のやり取りが出来るのだ。

どんな凄いプログラムなのか知らないけど、こちらの質問にきちんと答えたり会話内容でリアルに表情が変化する。

今のゲームってこんなにも進化しているんだと改めて驚く。
皆はNPCとごく自然な感じで親しそうに話している。

少年探偵団を名乗る少年達が私達の事を知っているらしく、SAKURAサクラさんに懐いていた。

中に居た1人の女の子が此方を見つめて来た。
私の事を知ってるのだろうか?

あの女の子は以前出会って何か約束をした様な気がする。
けれど、結局思い出す事は出来なかった。

その後、街並みを見て回り広場で屋台の串焼きを食べてから街を後にする。

街から暫く歩くと砦の様な建物が見える。
今は使われて無いのか人の気配の無い。

SAKURAサクラさんは懐かしそうに建物を眺めている。
・・・何か思い出でも有るのだろうか?

アルテナの街を出て、東へ東へと進むと良く澄んだ大きな湖に辿り着く。
そこで山脈に面した洞窟を地下へと進んで行く。

洞窟内は様々なモンスターが徘徊しており、その全てを倒しながら進んで行く。

最下層の大広間には巨大なドラゴンが眠っていた。
美しい鱗に覆われたそのドラゴンは、まるでオブジェクトの様に動く事は無く深い眠りに付いていた。

なんだか猫みたいだな。
少しだけ可愛いと思ってしまった。

私達はドラゴンの巣を素通りして洞窟を進む。

「あのドラゴンは眠らせてある。本来なら戦闘が発生するがな。」

暗黒神ハーデスさんが、自分が眠らせていると言った感じの口ぶりで話す。

あのドラゴンと自分が戦っている映像がフワッと脳裏に浮かぶ。
しかし先程眠っていたドラゴンとは少し形状が違う。

その姿はもっと禍々しい何かだった。
少しずつ記憶の欠片がパズルの様に嵌って行く気がする。

私達はドラゴンの巣を抜けて更に道を進むと、やがて外の光が見えて来て山脈の逆側の出口へと到着する。

切り立った崖から広大な大地を見下ろすと、森を抜けた平野には巨大な王国が見えた。

次に到着した場所は冒険者の聖地と呼ばれる「オスロウ国」と言う大きな都市の有る場所だった。
アルテナの街とは違い、人口が多く賑わっていた。

そこで衛兵長を務めるセアスさんと言うおじさんを紹介される。
このNPCの人はどうやら私の事を知っているらしい。

その後、絵に描いた様なイケメンの聖騎士団長シグさんと魔法省長のラウルさんと言う人と出会う。

シグさんはSAKURAサクラさんに好意が有るらしく親し気に話していた。
ラウルさんは大人しい性格でハイテンションなシグさんを頑張って止めていた。

以前はクリスさんと言う最強のウォリアーが居たそうだが今は行方不明らしい。

この国にはコロシアムと言う円形闘技場が有り、名だたる戦士達が戦いを繰り広げていた。
その光景を見ていると以前にSAKURAサクラさんが戦っていた様な光景が浮かんで来る。

これは・・・
記憶?なのか。

暗黒神ハーデスさんの話では、最新のAI技術により全ての住人がNPCとは思えない程に自然な会話の受け答えが出来るらしい。

確かにシグの言動は、凄く自然でプレイヤーが動かしているんじゃないかと疑うほどだった。
その後、転送装置的な物で次の街へと移動する。

次の街は魔法技術が発達した「ハイメス国」。
淡い紫色の光が周囲を舞い、神秘的な風景が広がっていた。

至る所に魔法技術が使われた街の造りは、とても厳かな雰囲気を漂わせていた。
王宮に案内され、国王と王妃に謁見する。

そしてデイアさんと言う12歳の幼い姫を紹介される。
銀色の髪に鏡の様に煌めくドレスを纏った美しいお姫様だった。

「・・・こんなに幼かったっけ?」

知らないはずなのに、そんな感想が浮かんでくる。

・・・ゲームをプレイしていた時の記憶なのか?

何か違和感を感じた。
それが何なのか理解する事は出来なかった。

次に訪れた国は今までに訪れた所とはかなり異質な場所だった。

機械都市と銘される「ギュノス国」。
そこはまさに科学技術の塊と言う印象の国だった。

その名の通り機械で造られた都市と言った雰囲気で、あたかもSFの世界に迷い込んだのかと思う位発展した場所だった。

国営賭博場カジノ公営競売場オークション、有名な鍛冶屋と様々な施設が乱立していた。
そして街の中央に聳えるクリスタルタワー。

あの施設だけは機械都市の中でも浮いている見た目をしている。

クリスタルタワーの内部でマザーブレインと呼ばれる少女に出会う。
借入をして無いにも関わらず仕切りにリボ払いを推奨してくるカード業者の様な人だった。

公営競売場オークションを覗き、国営賭博場カジノへと移動する。
有名なギャンブラーに紳士的なオーナーが出迎え、とても大人の雰囲気の漂う社交場だった。

少しゲームを楽しんだ後、近くの小さな村へと向かう。
その村には女性の忍者を象った石像が村の中央に配置されていた。

何でもこの地域を救った英雄の像らしい。
その村に有る家族で営む食堂に立ち寄り話をする。

伊集院咲耶が懐かしそうに双子の女の子と話をしていた。
その光景に少しだけ過去の記憶が映像として重なった様な気がする。
・・・多分以前来た事が有るんだ。

ギュノス国から船に乗り、南下した所に有る小さな島国「アニマ国」。
この国は亜人達を中心としたNPCで賑わう国だった。

大きな国では無いが古代遺跡や綺麗なビーチも有り南国の雰囲気漂う亜熱帯植物の生い茂る風景が広がっていた。

この国の国王は人語を喋る猫で、少し悲しそうな表情をした優しい口調の方だった。

国王の側近には小学生位の猫耳の亜人種デミヒューマンが控えており、その圧倒的可愛さと場違い感は異彩を放っていた。

何だろう・・・
少し懐かしい感じがする。

その後向かった古代遺跡は形だけを留めており、その見た目は瓦礫の山にしか見えなかった。
ビーチの様な場所の砂浜で急にフラッシュバックの様に脳裏に映像が映し出される。

友人と水着を買った。
スタイルの良い友人はやたらと露出度の高い水着を着ていた様な気がする。

遺古代跡の地下で存在してはいけないモノを見た気がする。
・・・瞬間的に何枚もの写真を見せられた様な感覚。

記憶のピースがまた一つ、二つと空白となった隙間を埋めて行く。

私達は再度船に乗り、そのままの足で東の大陸へと歩を進めて行った。
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