457 / 458
第16章 -勇者 VS 魔王-
†第16章† -49話-[当主ムネシゲ=ニカイドウ]
しおりを挟む
到着後ティータイムで休憩を挟んだあとは、呼び出されるまでの間、アルカンシェは城下町へと観光に出掛けていた。
日本で言えば江戸に近い街並みで平屋が圧倒的に多い。
二階建ての建物のほとんどは宿であったり食事処であった。
街を歩く人々も弓使いトワインが装備しているような和装しか居らず、腰に刀と呼ばれる反った剣を帯刀している者も居た。
「アルシェ様、あちらでお米が売られているようです」
「ホントッ!?」
実のところ、リクオウの街並みを楽しみたいという事とは別にアルカンシェには目的があった。
それが”米”の入手だった。
メリーが指差す先へ視線を移すと、マリエルが手を振ってアピールしている姿が視界に映る。
一応だが、大陸にも米自体はある。
しかし、それは家畜の飼料の為であり、栽培方法も宗八が知る水稲ではなく陸稲であったので味も違う。
そこでリクオウに上陸予定がついたアルカンシェに宗八が探して欲しいとお願いしていたのだった。
「姫様。この米は隊長が言っていた”水を張った田んぼ”で収穫されたそうです」
マリエルの下へ辿り着くと、彼女から軽い説明を受けた。
視線を店主に向けると珍しい物を見たような表情で瞬きを繰り返している。
「驚いた……。そっちのお嬢ちゃんをべっぴんさんだと褒めたばかりだが、アンタの方がべらぼうにべっぴんさんだぁ……」
「お褒め頂きありがとう。でも、店主。商売人なら商品の説明をお願いできるかしら?」
城の姫様方とは装いの違うアルカンシェは、顔つきも瞳の色も違う事で街中でずいぶんと人目を引いて来た。
今までは護衛も居る事で遠巻きにされてきたので、初めて異国の者からの誉め言葉を聞いたアルカンシェだったが、今は米に意識を奪われ軽く往なした。
「おぉ……すまねぇな。左から一般的な弥六、目黒、白早稲。こっちは珍しい白目米、穂増という品種だ。当然珍しい方が仕入れも大変だからな、どうしても値が張っちまうが」
店主の説明を受けながら名を呼ばれた米を真剣な表情で見つめる。
アルカンシェの周りでマリエル達も興味本位で覗き込んでいた。
「……購入出来る量に制限はありますか?」
真剣な表情の美人に見つめられ店主は年甲斐も無く照れて視線を逸らす。
「そうだなぁ……。購入する時は徒歩で行き帰りをするから、家族で買うにしても一週間分だったりの量が多い。正直、量を制限するほどの大量買いをされたことは無いんだ……。ちなみにどの程度欲しいんだい?」
照れていた店主だったが、目の前の美人が太客と気付いて急激に冷静になって回答する。
脳内では、算盤が勢いよく弾かれようとしていた。
「とりあえず、一年分ずついただこうかと考えています」
アルカンシェの言葉に店主は所属する商会に問い合わせが必要だと判断する。
この場で売られているものを全部売れば希望には足るだろう。
しかし、今日米を求めて来た客に売れなくなる為、この場では売れないとすぐに計算する。
「それでは、明日改めてお越しいただけないでしょうか。それまでの間に準備しておきます。希望であれば送り届けも致します」
稀に見る異邦人の客であり、一年分という異常な量を購入希望ともなれば、今回限りの可能性が高い。
本来行わない配達サービスをしてでも売っておきたいと考えた店主の言葉は、いつの間には丁寧になっていた。
「では、配達はムツ城にある宮城にお願いします。支払いは今でも良いですか?」
宮城に滞在する異邦人ともなれば、立場は当然自分達よりも身分は高い。
謹んで平に頭を垂れ、なるべく丁寧に対応を心がける店主。
アルカンシェが見せた冒険者カードに店主は頷く。
「かしこまりました。ここ数年でギルドの支払いシステムもリクオウに広まっていますから、もちろん当店でも対応しております」
カード決済を済ませたアルカンシェ達は店を後にした。
空はすでに夕暮れに差し掛かっていた為、今日は宮城に戻り呼び出しに備えることにする。
「———お待たせいたしました。御当主様がご夕飯に誘われておりますが如何致しますか?」
部屋を訪ねて来た女中の言葉にアルカンシェは肯定で返す。
「喜んで、ご一緒させていただきます」
ようやく、リクオウ当主との対面が叶う。
アルカンシェは気付かれない様に気合いを入れ直し、女中の案内に従い廊下を軋ませ進んだ。
* * * * *
通された部屋には当主である、ムネシゲ=ニカイドウが小上がりに座り待っていた。
他にもマサオミ=ニカイドウ一家が並び座っている。
謁見方式にそれほど違いはない。ただ、地べたに座る文化の違いが異邦人には辛い所のはずだった。
「お初にお目に掛かります。大陸の国、アスペラルダのアルカンシェ=シヴァ=アスペラルダと申します」
異邦人にしては綺麗な正座と挨拶にムネシゲは舌を巻いた。
さり気無くマサオミへ視線を送るが、無反応。つまり入れ知恵したわけではないらしい。
「頭を上げて欲しい。丁寧な名乗りに感謝する。私はムネシゲ=ニカイドウ。マサオミの兄にしてリクオウの支配者である」
許可を出されたアルカンシェは頭を上げ、まっすぐにムネシゲを見据える。
その瞳からアルカンシェという少女の器を感じ取ったムネシゲの密かに冷や汗が流す。
自身の家臣も、部屋の端に並んで座らされている彼女の近衛に対し何かを感じ取っているのか、部屋の緊張感が一気に高まっている。
「まずは、末の弟の顔を再び見る機会を与えてくれた事に感謝しよう。そのうえで、マサオミから持ち寄りたい話があるとも聞いているが……。まぁそれは食事をしながらとしようか」
ムネシゲが合図を出すと、待ってましたとばかりに廊下に人の気配が増大した。
一気に雪崩れ込んで来た女中の手により、当主の間が宴会場へと変貌する。
アルカンシェは女中に案内されるがままにムネシゲの隣に座らされ、目の前には豪華な御膳が置かれる。
「御当主殿、奥方はご一緒に食事を取られないのでしょうか?」
賑わいを見せ始めた小上がりの下の喧騒の中でもアルカンシェの質問はしっかりムネシゲの耳に届いた。
振り返り、少し寂し気な表情を見せたムネシゲは、事情を説明する。
「我が国は、恥ずかしながら男尊女卑の習わしがまだ残っているのですよ。重鎮の中にはまだまだ引退しそうにない老人が多数おりますので、妻には妻の仕事に集中してもらっています」
つまり、この宴会に参加する権利すら無いということなのだろう。
しかし、自分は女性でありながら小上がりの当主の隣に座らされている……。
おそらく異邦人にまで男尊女卑を押し付けるつもりは無いと言う事か……、とアルカンシェは勝手に解釈し不躾な会話を止めた。
アルカンシェの部下たちにも食事は振舞われ、タルテューフォと青竜が物凄い勢いでお代わりする様がリクオウの人々は気に入ったのか、その様子を酒の肴に勝手に盛り上がっていく。
近衛らしく楽しみつつも仲間が笑っている様子を眺め、この小上がりからの景色をアルカンシェは密かに楽しみながら食事についての質問をムネシゲや女中に繰り返していた。
* * * * *
「宴もたけなわだが、完全に酒で思考が出来なくなる前に大陸の客人からの話を聞こう。皆、静かにせぇ!」
ムネシゲの手から決して大きくはない拍手が鳴らされた直後に家臣たちはシンと静まり返った。
全員が傾聴する中で宣言された言葉に、静々と各々の席に戻っていく。
こちらも視線で仲間たちに指示を出す。
マリエルは青竜の、メリーがタルテューフォの手綱を握り、それぞれの豪快なお代わり合戦を止めさせた。
リッカにも視線を送り始まりを告げる。
「さて、アスペラルダ殿下。何を成しに我らが閉ざされし国へ参られた?」
当主としての覇気を持った質問にアルカンシェは真正面から視線をぶつけ挑む。
「この星を護るついでにリッカの故郷も救おうかと思い参りました」
ムネシゲはアルカンシェの瞳から嘘を感じなかった。
だが、星を護る。リクオウを救うの意味がわからない。
「具体的な説明を願えるだろうか?」
その返しに笑みを浮かべたアルカンシェは宴会場の仲間に声を掛ける。
「わかりました。メリー、クロエ」
いつものように準備されていた資料が、ムネシゲと家臣たちの手に渡される。
何度も活躍する資料だが、集まる情報が更新される度にこの資料も後進され挿絵の精度も上がって来ている。
「私達の戦いの記録がその資料に詰まっています。いましばらく、そちらに目を通してください。クロエは禍津屍の死骸を外に出して置いて」
『かしこまりました』
宴会場を闇精クロエが出てから誰かの悲鳴が外から響いた。
驚くリクオウ側の家臣に比べ、アスペラルダは泰然としたものだった。
原因が分かっているから当然なのだが、アルカンシェの様子にムネシゲも状況を察して家臣に目配せして資料に意識をもどさせる。
一番初めに資料から顔を上げたのは意外にもマサオミだった。
そのすぐ後に顔を上げたのは当主ムネシゲだ。二人とも兄弟らしく目元を揉む姿はとても似ていた。
読み終わった人が次々と現れ、全員が資料に目を通し終わったのを確認した当主ムネシゲの回答は以下だった。
「今 日 の 決 断 は 無 理 だ !」
頷く家臣一同。
「酒が入っていなくとも難解な部分が多すぎる。そもそも我らは魔法を好んで使わないのだ。魔道具にしてもそれは同じ事。故にしばし時間を頂きたい。そのうえでリッカをアドバイザーとして、その間借りたいのだが如何だろうか?」
アルカンシェも遊んでばかりも居られない。
だが、こちらには≪ゲート≫という裏技があるので、彼らが検討をする時間を与える余裕は十分にあった。
リッカも故郷でのんびり過ごさせる事も出来るのでアルカンシェは笑顔を浮かべ二つ返事で答える。
「わかりました。代わりにその間、国を巡る許可を頂けますでしょうか?」
巡るとは言っても遠くまで行くことは出来ないだろうと考え、ムネシゲも二つ返事で返す。
「特別な割符を手配しよう。一応旅程は女中に知らせておいてくれるとこちらも助かる」
アルカンシェの脳内では、青竜に乗って出来る限り広範囲の異変を見つける予定が組まれていた。
一方ムネシゲの脳内では、猪獅子が引く馬車での旅行が描かれていた。
考えがすれ違ってはいても話はまとまる。
その日は宴会が再開され、リクオウの夜は更けていった……。
日本で言えば江戸に近い街並みで平屋が圧倒的に多い。
二階建ての建物のほとんどは宿であったり食事処であった。
街を歩く人々も弓使いトワインが装備しているような和装しか居らず、腰に刀と呼ばれる反った剣を帯刀している者も居た。
「アルシェ様、あちらでお米が売られているようです」
「ホントッ!?」
実のところ、リクオウの街並みを楽しみたいという事とは別にアルカンシェには目的があった。
それが”米”の入手だった。
メリーが指差す先へ視線を移すと、マリエルが手を振ってアピールしている姿が視界に映る。
一応だが、大陸にも米自体はある。
しかし、それは家畜の飼料の為であり、栽培方法も宗八が知る水稲ではなく陸稲であったので味も違う。
そこでリクオウに上陸予定がついたアルカンシェに宗八が探して欲しいとお願いしていたのだった。
「姫様。この米は隊長が言っていた”水を張った田んぼ”で収穫されたそうです」
マリエルの下へ辿り着くと、彼女から軽い説明を受けた。
視線を店主に向けると珍しい物を見たような表情で瞬きを繰り返している。
「驚いた……。そっちのお嬢ちゃんをべっぴんさんだと褒めたばかりだが、アンタの方がべらぼうにべっぴんさんだぁ……」
「お褒め頂きありがとう。でも、店主。商売人なら商品の説明をお願いできるかしら?」
城の姫様方とは装いの違うアルカンシェは、顔つきも瞳の色も違う事で街中でずいぶんと人目を引いて来た。
今までは護衛も居る事で遠巻きにされてきたので、初めて異国の者からの誉め言葉を聞いたアルカンシェだったが、今は米に意識を奪われ軽く往なした。
「おぉ……すまねぇな。左から一般的な弥六、目黒、白早稲。こっちは珍しい白目米、穂増という品種だ。当然珍しい方が仕入れも大変だからな、どうしても値が張っちまうが」
店主の説明を受けながら名を呼ばれた米を真剣な表情で見つめる。
アルカンシェの周りでマリエル達も興味本位で覗き込んでいた。
「……購入出来る量に制限はありますか?」
真剣な表情の美人に見つめられ店主は年甲斐も無く照れて視線を逸らす。
「そうだなぁ……。購入する時は徒歩で行き帰りをするから、家族で買うにしても一週間分だったりの量が多い。正直、量を制限するほどの大量買いをされたことは無いんだ……。ちなみにどの程度欲しいんだい?」
照れていた店主だったが、目の前の美人が太客と気付いて急激に冷静になって回答する。
脳内では、算盤が勢いよく弾かれようとしていた。
「とりあえず、一年分ずついただこうかと考えています」
アルカンシェの言葉に店主は所属する商会に問い合わせが必要だと判断する。
この場で売られているものを全部売れば希望には足るだろう。
しかし、今日米を求めて来た客に売れなくなる為、この場では売れないとすぐに計算する。
「それでは、明日改めてお越しいただけないでしょうか。それまでの間に準備しておきます。希望であれば送り届けも致します」
稀に見る異邦人の客であり、一年分という異常な量を購入希望ともなれば、今回限りの可能性が高い。
本来行わない配達サービスをしてでも売っておきたいと考えた店主の言葉は、いつの間には丁寧になっていた。
「では、配達はムツ城にある宮城にお願いします。支払いは今でも良いですか?」
宮城に滞在する異邦人ともなれば、立場は当然自分達よりも身分は高い。
謹んで平に頭を垂れ、なるべく丁寧に対応を心がける店主。
アルカンシェが見せた冒険者カードに店主は頷く。
「かしこまりました。ここ数年でギルドの支払いシステムもリクオウに広まっていますから、もちろん当店でも対応しております」
カード決済を済ませたアルカンシェ達は店を後にした。
空はすでに夕暮れに差し掛かっていた為、今日は宮城に戻り呼び出しに備えることにする。
「———お待たせいたしました。御当主様がご夕飯に誘われておりますが如何致しますか?」
部屋を訪ねて来た女中の言葉にアルカンシェは肯定で返す。
「喜んで、ご一緒させていただきます」
ようやく、リクオウ当主との対面が叶う。
アルカンシェは気付かれない様に気合いを入れ直し、女中の案内に従い廊下を軋ませ進んだ。
* * * * *
通された部屋には当主である、ムネシゲ=ニカイドウが小上がりに座り待っていた。
他にもマサオミ=ニカイドウ一家が並び座っている。
謁見方式にそれほど違いはない。ただ、地べたに座る文化の違いが異邦人には辛い所のはずだった。
「お初にお目に掛かります。大陸の国、アスペラルダのアルカンシェ=シヴァ=アスペラルダと申します」
異邦人にしては綺麗な正座と挨拶にムネシゲは舌を巻いた。
さり気無くマサオミへ視線を送るが、無反応。つまり入れ知恵したわけではないらしい。
「頭を上げて欲しい。丁寧な名乗りに感謝する。私はムネシゲ=ニカイドウ。マサオミの兄にしてリクオウの支配者である」
許可を出されたアルカンシェは頭を上げ、まっすぐにムネシゲを見据える。
その瞳からアルカンシェという少女の器を感じ取ったムネシゲの密かに冷や汗が流す。
自身の家臣も、部屋の端に並んで座らされている彼女の近衛に対し何かを感じ取っているのか、部屋の緊張感が一気に高まっている。
「まずは、末の弟の顔を再び見る機会を与えてくれた事に感謝しよう。そのうえで、マサオミから持ち寄りたい話があるとも聞いているが……。まぁそれは食事をしながらとしようか」
ムネシゲが合図を出すと、待ってましたとばかりに廊下に人の気配が増大した。
一気に雪崩れ込んで来た女中の手により、当主の間が宴会場へと変貌する。
アルカンシェは女中に案内されるがままにムネシゲの隣に座らされ、目の前には豪華な御膳が置かれる。
「御当主殿、奥方はご一緒に食事を取られないのでしょうか?」
賑わいを見せ始めた小上がりの下の喧騒の中でもアルカンシェの質問はしっかりムネシゲの耳に届いた。
振り返り、少し寂し気な表情を見せたムネシゲは、事情を説明する。
「我が国は、恥ずかしながら男尊女卑の習わしがまだ残っているのですよ。重鎮の中にはまだまだ引退しそうにない老人が多数おりますので、妻には妻の仕事に集中してもらっています」
つまり、この宴会に参加する権利すら無いということなのだろう。
しかし、自分は女性でありながら小上がりの当主の隣に座らされている……。
おそらく異邦人にまで男尊女卑を押し付けるつもりは無いと言う事か……、とアルカンシェは勝手に解釈し不躾な会話を止めた。
アルカンシェの部下たちにも食事は振舞われ、タルテューフォと青竜が物凄い勢いでお代わりする様がリクオウの人々は気に入ったのか、その様子を酒の肴に勝手に盛り上がっていく。
近衛らしく楽しみつつも仲間が笑っている様子を眺め、この小上がりからの景色をアルカンシェは密かに楽しみながら食事についての質問をムネシゲや女中に繰り返していた。
* * * * *
「宴もたけなわだが、完全に酒で思考が出来なくなる前に大陸の客人からの話を聞こう。皆、静かにせぇ!」
ムネシゲの手から決して大きくはない拍手が鳴らされた直後に家臣たちはシンと静まり返った。
全員が傾聴する中で宣言された言葉に、静々と各々の席に戻っていく。
こちらも視線で仲間たちに指示を出す。
マリエルは青竜の、メリーがタルテューフォの手綱を握り、それぞれの豪快なお代わり合戦を止めさせた。
リッカにも視線を送り始まりを告げる。
「さて、アスペラルダ殿下。何を成しに我らが閉ざされし国へ参られた?」
当主としての覇気を持った質問にアルカンシェは真正面から視線をぶつけ挑む。
「この星を護るついでにリッカの故郷も救おうかと思い参りました」
ムネシゲはアルカンシェの瞳から嘘を感じなかった。
だが、星を護る。リクオウを救うの意味がわからない。
「具体的な説明を願えるだろうか?」
その返しに笑みを浮かべたアルカンシェは宴会場の仲間に声を掛ける。
「わかりました。メリー、クロエ」
いつものように準備されていた資料が、ムネシゲと家臣たちの手に渡される。
何度も活躍する資料だが、集まる情報が更新される度にこの資料も後進され挿絵の精度も上がって来ている。
「私達の戦いの記録がその資料に詰まっています。いましばらく、そちらに目を通してください。クロエは禍津屍の死骸を外に出して置いて」
『かしこまりました』
宴会場を闇精クロエが出てから誰かの悲鳴が外から響いた。
驚くリクオウ側の家臣に比べ、アスペラルダは泰然としたものだった。
原因が分かっているから当然なのだが、アルカンシェの様子にムネシゲも状況を察して家臣に目配せして資料に意識をもどさせる。
一番初めに資料から顔を上げたのは意外にもマサオミだった。
そのすぐ後に顔を上げたのは当主ムネシゲだ。二人とも兄弟らしく目元を揉む姿はとても似ていた。
読み終わった人が次々と現れ、全員が資料に目を通し終わったのを確認した当主ムネシゲの回答は以下だった。
「今 日 の 決 断 は 無 理 だ !」
頷く家臣一同。
「酒が入っていなくとも難解な部分が多すぎる。そもそも我らは魔法を好んで使わないのだ。魔道具にしてもそれは同じ事。故にしばし時間を頂きたい。そのうえでリッカをアドバイザーとして、その間借りたいのだが如何だろうか?」
アルカンシェも遊んでばかりも居られない。
だが、こちらには≪ゲート≫という裏技があるので、彼らが検討をする時間を与える余裕は十分にあった。
リッカも故郷でのんびり過ごさせる事も出来るのでアルカンシェは笑顔を浮かべ二つ返事で答える。
「わかりました。代わりにその間、国を巡る許可を頂けますでしょうか?」
巡るとは言っても遠くまで行くことは出来ないだろうと考え、ムネシゲも二つ返事で返す。
「特別な割符を手配しよう。一応旅程は女中に知らせておいてくれるとこちらも助かる」
アルカンシェの脳内では、青竜に乗って出来る限り広範囲の異変を見つける予定が組まれていた。
一方ムネシゲの脳内では、猪獅子が引く馬車での旅行が描かれていた。
考えがすれ違ってはいても話はまとまる。
その日は宴会が再開され、リクオウの夜は更けていった……。
11
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
異世界に転生したら?(改)
まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。
そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。
物語はまさに、その時に起きる!
横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。
そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。
◇
5年前の作品の改稿板になります。
少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。
生暖かい目で見て下されば幸いです。
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる