特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

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第15章 -2ndW_アルダーゼの世界-

†第15章† -27話-[初動]

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 リーダー面している苛刻かこくのシュティーナに向けて剣を向ける。
「俺もそっちの新入りの紹介をして欲しいもんだな。またどこかの世界を飲み込んだのか?」
 その喧嘩腰の態度にフフフとシュティーナは上品に笑い、新顔君の方が挑発に乗りいきなり攻撃を加えて来る。
 いつの間にか手にしていた斧槍を得物に急接近して来て振り下ろした一撃は確かに重く威力も高い。その証拠に剣で受け止めた宗八そうはちの背後で岩が捲れ爆風が駆け抜けたのだから間違いなく魔神族の一人だと判断出来た。だが、その場から一歩も下がらずに自慢の一撃を受け止め平然としている宗八そうはちに新顔は驚きの表情を浮かべて一瞬呆けた隙を突いてアルカンシェの槍とマリエルの蹴りで吹き飛ばされ元の位置へと押し戻された。

「下っ端の躾が成って無いぞ。そんな半端者連れて来て遠足のつもりか? あ?」
「初陣だから気が逸ったのよ、悪かったわね。この子は……自分で名乗りたいわよね。どうぞ」
 当たった感じの強さは相手にならない程度。とりあえず喧嘩は売っておく方向でシュティーナにガンを飛ばしてみると見事に捌かれてしまった。さて、どの属性か……。
「俺様は[狂操きょうそうのライラズマ]。どれだけ抗っても俺様の一撃一撃で手足が吹き飛んで狂っても狂っても自分の戦いが出来なくなる様を眺めるのが趣味の好青年だ!」
 名前からは属性が読めなかった。が、ステータスを鍛えた仲間なら誰が当たろうと負けは無いだろうと深く考える事を放棄した視線をシュティーナに戻し、——その場から転移して姿を消した。

 宗八そうはちの感知範囲に引っかかった場所は世界樹の向こう側。真反対だったので回り込んでいると間に合わないと判断して一気に[長距離転移ロングジャンプ]で転移をした先の視界には複数本のオベリスクが世界樹の根元を目指して飛んで来ている所だった。こんな無茶苦茶な事をする男は一人しか知らない。
 宗八そうはちはひとまずヤケクソ気味にも思える数のオベリスクの対処をするべく七精剣しちせいけんカレイドハイリアに神力エーテルを通して素早く剣を振るった。

 ひと息に振るった剣は通り過ぎようとするオベリスクを三つ切断し、視界内で剣が届かない四つを[空間征服イグノアパースペクティブ]で真っ二つに。視界外で通り過ぎようとする二つは水波能売ミズハノメの特殊効果で水色の線が一本走ったかと思えばそこから凍てつき破壊される。オベリスクが吸収出来るのは高濃度魔力までで神力エーテルは影響を全く受けていない。宗八そうはちの見事な体と剣捌きで同様に次々と真っ二つか凍壊を繰り返すオベリスクの数が減った頃合いに警戒していた敵の急接近を感知する。

滅消めっしょうのマティアス……。やっぱり来ていたなっ!」
「三度目だっ!さあどう出る!」
 マティアスが宗八そうはちと邂逅するにあたり、この登場方法は三度目となる。
 一度目は廃都フォレストトーレでの救出劇の時に瀕死に追いやられ、二度目は廃都フォレストトーレ奪還時に受け止めに失敗し、そして今回が三度目の正直。今度こそ!と宗八そうはちと地精ノイティミルは奮起して受け止めの態勢に入る。
「《完全なる聖壁ポレヴィークモノリス!》」
 以前よりも成長したノイティミルのオプションの防御力!確と御覧じろ!

 ——ガアァァァァァァッッッッンンンンンンンンンンッッ!!!!
 受け止めた衝撃は以前同様に凄まじかった、が宗八そうはちはまだ余裕がある様に感じられた。発生した衝撃波が先に落下していたオベリスクの欠片や破片を宙を舞わせ木々は薙ぎ倒され世界樹を大きく揺れ動かした。
「流石はシュティーナのお気に入りだな。この短期間に見事な成長振りだ」
「満足したなら帰ってもらいたいもんだがな」
 出来る限り顔を歪ませて迷惑だと強調した宗八そうはちにマティアスは豪快に笑ったかと思えば真顔になって拒否を示した。
「ははははっ!悪いが今回はシュティーナの為にも手を抜いてやれんのだ。抗いたくば全力で抗う事をお勧めする」
 宗八そうはちは忠告通りに討伐に頭を切り替えた。もちろん罵詈雑言は忘れない。クソッ垂れが!ただでさえ連れて来た手勢が少ないって時に!

 氷垢ひょうくのステルシャトーはアルカンシェ。叢風むらかぜのメルケルスはマリエルに相対させるのは決定事項で新たに現れた狂操きょうそうのライラズマは攻撃の重さから頑丈なセーバーに相手取らせるつもりだった。当然苛刻かこくのシュティーナは宗八そうはちが対処する予定だったのが追加で参戦した滅消めっしょうのマティアスの所為で計画が完全に崩れてしまった。
 こうなるとシュティーナかマティアスのどちらかをリッカ・フランザ・トワイン・ディテウスで相手させなければならない……。仲間を信頼していないわけでは無いが時空を自在に操るトリッキーなシュティーナも別次元に頑丈で膂力もあるマティアスも魔神族の中では完全に別格なのだ。加えて増援を警戒して世界樹の護りにも人員を裂かなければならない。正解はどうすべきか……。
 思考が停止する一歩手前で割り込んで来た声に宗八そうはちは救われる事となった。

「(お兄さん!こちらは戦闘に入りました。自然とライラズマの相手はセーバーが出ましたが問題ありませんか?)」
 ユニゾン時限定で使用出来るアルカンシェからの念話だ。
「(大丈夫だ。こっちはマティアスが来ちまったからシュティーナも含めてどうすべきか考えてる)」
「(アルダーゼ様がそちらに向かいましたから到着まで適当に相手をして下さい。交代後、お兄さんはシュティーナの相手をお願いします。世界樹の防衛は聖獣とリッカ達で行います)」
 宗八そうはちの悩みをスパッと気持ちよく解決してくれたアルカンシェに感謝しつつ言われたまま時間稼ぎをする事とした宗八そうはちはマティアスとの戦闘に突入した。

 マティアスも魔法と戦士であれば戦士寄りのタイプだ。
 リッカと同じく空を飛んだり停空したりは出来ないので地上から跳ねたりミサイルの様に自身を打ち上げる事で空戦に殴りかかって来る。心底頭の悪い連中だと思う反面、純粋な戦闘力が高い為普通に食い下がって来るし強いので多少の魔法では押し切ることが出来ない点が困りものだ。

「はああああああっ!」
「おおおぉぉぉぉっ!」
 地面に降り立った瞬間に飛び交う連続殴打と高速剣が再び衝撃波を複数回生む。拮抗、ではない。いつの間にか頭から足先まで覆う鎧を着込んだマティアス相手に競り勝っていた。
「まさか!トリスティヴェルを装備した俺が負けるとはっ!ははは!よもや俺ですら抑えきれない程とはっ!」
「それがお前の召喚器かっ!良いチョイスだ!教えてくれてありがとうよ!」
 シュティーナのアムネジア然り、ナユタのミョルニル然り。魔神族には召喚器と呼ばれる専用武器がある。まさか全身鎧フルメイルの召喚器があるとは想定していなかった。そもそもが防御力も攻撃力も高いというのに防御力だけでなく手甲が武器となっているのが厄介でもある。
「《バーニアナックル!》」
 構えたマティアスの手甲が火を噴き視界から消えた。と、同時に咄嗟に庇った左腕に猛烈なダメージが走る。青竜の蒼天籠手フリューアネイシア・ブレイサーで防いだとはいえ防御力を越えた威力と視認出来ない速度ですれ違うと同時に一発入れて来たマティアスには天晴れだ。逆にこの威力に砕けも欠けもしていないこの防具の頑丈さに驚くほどだ。
「痛ってぇぇぇっ!」
「《バーニアナックル!》」
 いやいや、痛みで選択を誤るほど舐めちゃいないぞ。気合いで痛みを忘れた宗八そうはちは拳を握り迎え撃つ。
「《金剛!》」

 ——ガアァァァァァァッッッッンンンンンンンンンンッッ!!!!
 今度は拳同士の激突であったが先ほどと変わらない音と衝撃波を生み周知が荒れる。一時的に防御力を極大上昇させる魔法で迎え打った拳はマティアスに対抗することが出来た。
「「んんんっ!!」」
 互いに動かせないと判断した時点で同時に力を込めて互いにノックバックを起こして距離を開けた。
「お前、無属性も疑ってたけど結局地属性の魔神族だったな。武器や防具無しでも異常な肉体も地属性由来の能力だろ」
「ほぅ、なかなか賢しいな。ちなみに無属性はおそらく貴様の世界だぞ」
 マティアスのヒントに宗八そうはちは表情に出さず喜んだ。今までの経験上同じ属性の魔人族には出会っていない為、破滅の将である魔神族に無属性が居ないなら一人分楽になるというものだ。

 続けて戦闘を行おうとする宗八そうはちの側におばちゃんが到着する。
『待たせたね。ここはアタシに任せなっ!仲間たちと一緒の方がアンタだって良いだろ?』
 凄い勢いで駆けて来たアルダーゼが隣で急停止して勢いそのままに言いたい事を口走るとマティアスに向かって行ってしまった。面白くなって来たところに水を差された宗八そうはちも元々交代する予定であった事を思い出すとアルカンシェ達との合流をする為再び魔法を使って転移をするのであった。
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