特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

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第15章 -2ndW_アルダーゼの世界-

†第15章† -29話-[VSライラズマ]

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 激烈な空中戦を繰り広げるマリエルや複数の召喚獣と対峙するアルカンシェが戦闘する姿を背景にセーバーとライラズマは地表で激しい打ち合いを続けていた。先ほどとは攻め方を変えたライラズマは重力を軽から重へと変化させてセーバーの身動きを制限しようと企んだ、が。称号によって強化された高ステータスが五体投地する事に抗い地面から離れられないにしても打ち合う事を可能にしていた。

 普段ならば身体や得物を軽くした段階で玩具の様に斧槍でクルクル宙を廻りながらいつの間にか手足が千切れる者ばかりなのに対し本日相手取っている大男は何故か思い通りに行かずライラズマはストレスを貯め始めていた。
「なんでっスか!? 普通ならとっくにペシャンコになってるっスよ!最大値の重力を付与しても膝すら付かないっておかしいっス!」
「こういう状況での戦闘はあいにく初めてじゃあないんだ。異世界では高重力下での訓練は定番らしいぞ?」
 全力で斧槍を振り回すライラズマに比べて極力動きを小さくして大剣で攻撃を受け止めるしか出来ないセーバーは苦しいながらも挑発を繰り返す。高重力に慣れているとはいえ全く影響がないわけではない。何より宗八そうはちと地精ノイティミルが施す高重力よりも断然今の方がキツイのでこの場を動くことも難しく腕も大きく振ることが出来ないので防戦一方にしかならない点が目下の悩み。表面上は余裕な振りを保てているがいつ崩れてもおかしくは無いので内心冷や汗ダラダラである。
「こりゃダメっスね……。攻め方変えるっスよ!《ジャイログラビティー!》」
 フッと身体が急に軽くなった事で自分が羽に成ったかの様な錯覚でフラつくセーバーを他所にライラズマは二人を中心にゆっくりと動いていく重力球を複数ばら撒く。直後はセーバーも身体の感覚を取り戻すことに集中したので気付くのに遅れてしまったがすぐに状況に気が付いた。ばら撒かれた重力球は回転しているのか吸い込まれる感覚があった。それも周囲の全てから猛烈な吸い込みを感じ、身体が引き裂かれんばかりの吸引力に身を固くする。
 腕で言えば手が上に、手首が左に、肘までが下に、肩までが右にという具合に身体中各部位が上下左右に引っ張られる今まで感じたことの無い違和感に脳内が混乱した。身体が千切れる事は無いだろう。だが、剣を振る行為はまともに振れるイメージが全く出来なかった。

 状況で言えば先ほどよりも余程動きづらい状況になってしまった。大剣でも籠手でも防御が出来ないと頭を悩ますセーバーの救世主はいつでも契約風精リュースライアであった。
『(以前にマリエルがポロリと溢したことがありましたわね……。確か電磁界で重力には抵抗が出来るとか……試してみましょうか)』
「俺にはどうしようもないし任せるぜ」
 重力場で身体も地面から離れ四肢も動かせなくなったセーバーはリュースライアに丸投げした。霹靂へきれきのナユタとの戦いの中で磁界を利用した戦いがあったと聞いていたリュースライアはその情報を元に即興で使用する為の精霊魔法を発動させる。
『《アンチグラビティフィールド!》』
「おおっ!」
「は、はぁあああああ!?またっスか!?」
 即席なので魔法名はそのままだがリュースライアの言葉をそのまま受け取っていたセーバーは抵抗どころか完全無力化してしまっている事に驚きつつ大剣を両手で握り直しアホ面を晒すライラズマに突喊とっかんする。

「《——嵐竜聖剣ヴェルテリアエクスカリバー!》」

 剣身自体が輝きスパークが走る。
 剣を振る動きに合わせて剣から深緑の魔力刃が4mほど伸び、斬り上げた逆袈裟に防御を合わせたライラズマの斧槍は打ち上がり真ん中から真っ二つに砕け散った。斧槍だけではなくライラズマの身体も斬り裂き斬り口からは黒い瘴気が溢れ、瞳を大きく見開いたライラズマの驚愕の表情が一瞬視界に映るも気にせずに殺す気で一歩大きく踏み込みながら剣を振り下ろした。
 再び剣先から魔力刃が伸び振り下ろしと共に三日月型の斬撃が発動してライラズマを飲み込んだ。折れた斧槍を重ねて再び防御の構えを取ったライラズマは土煙の向こうに消えてしまい討伐出来たかどうか確認は出来ない。
 続けて籠手を頭上に上げて握り込むと放電が発生してセーバーの視線の先、ライラズマの真上の空中に急速に雷が集まっていく中で拳を振り下ろす。
「《招雷将轟雷ライジングヴォルテール!》」
 上空の雷群から稲妻が複数降り注ぎ対象の位置を把握した直後に残る雷群が一本の極大稲妻となって地面に降って来る。轟音と共に着弾による暴風が吹き荒れ土煙も全て吹き飛ばした。
「あの斧槍って召喚器って奴じゃなかったのか?」
『(近接戦を行った事のある魔神族はナユタ、シュティーナ、メルケルスだったはずですが誰一人として召喚器を壊せた事例は無かったはずですわ)』
 じゃあアレは召喚器じゃなくただ頑丈な斧槍だったという事か……。と、セーバーは息を吐きだした。
 魔神族のポテンシャルを引き出す召喚器ではなくとも精霊樹産の武器と普通に打ち合えた事からアーティファクト並み武器だった事が窺える。召喚器じゃないのであれば奪取出来ていれば宗八そうはちは喜んだであろうとセーバーは呑気に考えながら視界が晴れるのを眺めていた。

 晴れた先でふと動く人型にセーバーは気が付いた。
「いやはや、こんな相性が悪いなんて事あるっスか? シュティーナの姐さんに呼ばれて勇んで参加したって言うのに初っ端からこんなボロボロにされるとかやってられないっスよ」
 ボロボロと言いつつライラズマは衣服に土や解れが見られる程度で大きいダメージを受けたようには見えない。また、強力な重力場が空間を歪めながら傘の様に広がっている事から先ほどとは一転して雷が重力に抵抗されたのだと判断した。
 そして、その手には先の戦闘で破壊された斧槍ではなく双頭剣が握られている。おそらくアレがライラズマの召喚器……。
「あ、これっスか? お察しの通り俺様の相棒。名は[双龍烈重刀]って言うっス!色々出来て便利っスよ!」
 ライラズマが適当に双龍烈重刀を振るうと周囲に転がっていた岩石や倒木が浮かび上がり続け様に剣が振るわれるとそれらは一斉にセーバーに向けて飛来した。岩石は避けやすいので体裁きのみで凌ぎ倒木は視界を覆う面積が広いので早めに大剣で細切れにしていく。
 その間、ライラズマはその場から動かずこちらを観察し続けていた。
「相性が良いのか悪いのか微妙な所だな……」
『(対抗魔法をきちんと準備しないと戦うのは面倒ですわね。状況次第でしょうけれどある程度情報収集は出来たと思いますわ。そろそろ一気に倒してしまった方がいいかもしれませんわ)』
 宗八そうはち達が魔神族の相手をそれぞれしているのとは別に世界樹周囲で戦っている仲間が居る。世界樹はとても大きいのでそちらのサポートを優先すべきとセーバーへ考えを伝える風精リュースライア。確かに最低限の情報収集は出来ただろう。これ以上手札を引き出すには対抗魔法が足りていない事も事実と受け止めたセーバーは大剣を握り直し気合いを入れる。

「今回は色々と勉強になったよ。そろそろご退場願いたいのだが?」
「あぁ、そうっスか? 俺様はこれからだ!って考えてたっスけど……退場はアンタでも良いっスよね?」
 言葉終わりに今度はライラズマがセーバーの懐へ一瞬で潜り込み身体を回転させる。辛うじて大剣を挟むことに成功したが双龍烈重刀も右に左に回転させることでさらに高速で連撃が叩き込まれるだけでなく、一撃一撃が細かに重力操作が行われる事で力の入れ具合を乱されて大変に戦い辛い状況にセーバーは苦戦する。
 息を付く暇もない、とここからの長期戦をセーバーが覚悟した時。ライラズマからの連撃が急に止まった。見れば双龍烈重刀を背中に隠してグルグル回しているライラズマの姿が視界に入る。
「これ、背面風車って言う技なんス。これも織り交ぜるっスから楽しんでほしいっス」
「クソッ垂れが……」
 再び始まる連撃に加えて背面風車が挟まる事で一拍間が空きテンポが崩されどこから次の攻撃が来るのか判断出来ずにストレスを与えて来る。風精リュースライアも電磁界を張り抵抗するも付け焼刃の対抗魔法では抵抗し切れず優勢は常にライラズマが握ったままだ。
 早めに決着を付けて仲間のサポートに回ろうと甘い考えを浮かべていた自身をセーバーは叱咤し、長期戦でライラズマという魔神族を理解し次に活かす方向にシフトするのだった。

「この失態は俺自身で尻ぬぐいしなけりゃ仲間に合わす顔がねぇな……!」
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