人形姫の祝福

きよ猫

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残された希望は

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「……」
 私は今、暗い地下牢にいる。
 死刑になるのだろうか。
 もう、それでもいいと思った。
 
 地下牢にいれられて2日。
 食事は1日1食で、水はコップ1杯。
 見回りの兵には何度も打たれた。
足にも腕にも血が滲み、冷たい風がひどくしみる。
喉がはりついて声も出せない。

 その間、いろいろなことを考えた。
 悩みもしたし、恨みもした。
 
 あの状況なら、こうなっても仕方ない。
 皆が混乱してもおかしくない状況だったのだ。
 ああ、それでも。
 私をこんな風にした人たちが恨めしい。
 いや、だめだ。
 そんなことは思ってはいけない。
 落ち着いたら、父様はきっと解放してくれる。
 皆、わかってくれるはずだ。
 きっとそうだ。

「出ろ。王が面会にいらした」
 兵が迎えにきた。
 ほら、もう終わりだ、ほら。

 あれ?
「父様、母様、」
「それ以上近寄るな、化け物‼︎」
 伸ばした手を兵に弾かれる。
 なぜそんな顔をしているの?
 なぜそんなことを言うの?
「聖女だからと育ててきたが、もう終わりだ‼︎」
 やめて。
「無表情でいつも何を考えているかわからない、出来損ないめ」
 やめて。もうやめて。
「貴様は国の脅威‼︎ 本日をもって貴様に国外追放を命じる‼︎」

 プツン

 何かが切れる音がした。
 視界が霞んでいく。
 最後に見たのは、母様の恐怖に歪んだ顔だった。

 もう、いいや。
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