推しの悲劇ヒロインを救ったら、俺に依存してきた件

Rra227

文字の大きさ
2 / 3

第二話

しおりを挟む
アリスは、いつだって私の隣にいた。
そして同時に、いつだって私の前を歩いていた。

幼い頃の記憶を辿れば、必ずそこにアリスの笑顔がある。初めて剣を握った日も、読み書きを覚えた日も、森で転んで泣いた日も。気づけば私は彼女と一緒にいた。

「ティナ、大丈夫? 怪我してない?」
そう言って私の膝を覗き込んだときの、透き通るような声を今でも覚えている。その声は、いつも光のように温かくて、私の胸に沁み込んでくる。

けれど、その光は時に残酷だった。

私たちが最初に学んだのは、精霊に祈りを捧げる術だった。呼吸を整え、心を澄ませ、世界と繋がる。小さな子供でも扱える、最も基本的な精霊術だ。私は必死に集中した。目を閉じ、声を震わせながら詠唱を唱えた。——ぱち、と。小さな火花が手のひらで弾ける。

「……できた……!」
その瞬間の喜びは、胸が熱くなるほどだった。

でも隣を見れば、アリスの手には小さな光の蝶が舞っていた。淡い光を放つその蝶は、私の火花よりも何倍も綺麗で、先生も、周りの子どもたちも目を奪われていた。

「すごいぞ、アリス! 初めてでここまでやれるとは!」
「きっと将来は偉大な精霊使いになるわね」

褒め言葉は、全部アリスに向かっていた。私が火花を出せたことなんて、誰も気づいていなかった。

年月が経つほど、差は広がっていった。学問ではアリスが一番。剣術でもアリスが一番。精霊術も、走るのも、歌うのも。私は二番。いつも、二番。

最初は悔しくて、夜中に布団をかぶって泣いたこともあった。でも、泣けばアリスが駆けつけてくれる。

「ティナ、大丈夫。きっと次は勝てるよ」
そう言って私を抱きしめてくれる。その優しさが、嬉しくて、苦しくて、たまらなかった。だって私は、本当は——勝ちたかったのに。

村の大人たちは口々に言う。

「アリスは天才だ」
「英雄の器だ」
「この子がきっと国を救う」

そして、私に向けられる言葉はいつも同じだった。

「ティナも、まあ……悪くないな」
「でも、やっぱりアリスには及ばないか」

——“アリスには及ばない”。その言葉は、呪いみたいに私の心にこびりついた。努力しても努力しても、一番にはなれない。私は光の隣に立つことすら許されない影なのだと。

だけど、それでも私はアリスの隣にいた。離れられなかった。アリスの笑顔は、眩しくて、優しくて。彼女が手を差し伸べてくれるたび、私は「また頑張ろう」と思ってしまう。たとえ結果がわかっていても、何度も何度も挑んでしまう。私にとってアリスは、憧れであり、希望であり、同時に——超えられない壁だった。

だからこそ、心に決めた。十五歳の誕生日を迎えたとき。精霊との契約を果たすその日に。「今度こそ、私は勝つ」そうすれば、誰かに見てもらえる。アリスの隣に立てる。ただの“影”じゃなくて、光に届く自分になれる。私はその日を夢見て、必死に努力を重ねた。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勇者のハーレムパーティー抜けさせてもらいます!〜やけになってワンナイトしたら溺愛されました〜

犬の下僕
恋愛
勇者に裏切られた主人公がワンナイトしたら溺愛される話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

付きまとう聖女様は、貧乏貴族の僕にだけ甘すぎる〜人生相談がきっかけで日常がカオスに。でも、モテたい願望が強すぎて、つい……〜

咲月ねむと
ファンタジー
この乙女ゲーの世界に転生してからというもの毎日教会に通い詰めている。アランという貧乏貴族の三男に生まれた俺は、何を目指し、何を糧にして生きていけばいいのか分からない。 そんな人生のアドバイスをもらうため教会に通っているのだが……。 「アランくん。今日も来てくれたのね」 そう優しく語り掛けてくれるのは、頼れる聖女リリシア様だ。人々の悩みを静かに聞き入れ、的確なアドバイスをくれる美人聖女様だと人気だ。 そんな彼女だが、なぜか俺が相談するといつも様子が変になる。アドバイスはくれるのだがそのアドバイス自体が問題でどうも自己主張が強すぎるのだ。 「お母様のプレゼントは何を買えばいい?」 と相談すれば、 「ネックレスをプレゼントするのはどう? でもね私は結婚指輪が欲しいの」などという発言が飛び出すのだ。意味が分からない。 そして俺もようやく一人暮らしを始める歳になった。王都にある学園に通い始めたのだが、教会本部にそれはもう美人な聖女が赴任してきたとか。 興味本位で俺は教会本部に人生相談をお願いした。担当になった人物というのが、またもやリリシアさんで…………。 ようやく俺は気づいたんだ。 リリシアさんに付きまとわれていること、この頻繁に相談する関係が実は異常だったということに。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...