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プロローグ
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しおりを挟む日曜日。
イスミは午前の訓練を終えて、休憩を取るために第一支部内を歩いていた。
いつもなら昼食がてら食堂に顔を出すが、今日は秋晴れの日和だ。
イスミはコンビニで買ったパンをぶら下げて、建物を出た。
既に場所のあたりはつけてある。
第一支部の施設内には、小さな公園じみた憩いの場がいくつか設置されていた。
建物自体が無機質なコンクリートで作られているため、緑がないと息が詰まるのだろう。
隊員たちは、箱庭、と呼んでいた。
その箱庭には、何故かいつも人気のない場所がある。
先日たまたま見つけたそこは、綺麗に整えられた空間にも関わらず、人気がなかった。
不思議に思ったが、都合が良い場所として記憶したイスミは、今度その場所を使ってみようと常々考えていたのだ。
イスミは、そこに向かっていた。
コンクリートのたたきを少し歩くと、緑の芝生がまばらに地面に現れた。
周りを木々が囲むまで足を進めると、芝生は一面に広がり、寝転がったらよく寝れそうに思う。
視線の先に、ベンチがあった。
あそこで食べよう。
イスミは足を踏み出して木陰へと差し掛かった。
「あ?」
声と共に姿を表した影に、驚いて足を止める。
先客がいた。
ベンチに寝転がっていた男は、こちらからは死角になっていたようだ。
「……んだてめえ」
睨んで威嚇してくる男を見つめ返す。
無視して立ち去る訳にもいかず、イスミは足を進めた。
「あ?! は?! ちょ、ちょっと待て!」
途端に男が挙動不審になった。
目の前の男は驚くほど白ずくめである。
髪の色こそグレーであるが、身に付けているものは全てが白い。
イスミは、待て、と言われて従った。
目の前の男は不思議そうに首を傾げている。
「……お前、もしかして《継承者》か?」
「?!」
訝しげにかけられた問いにイスミは驚いて、思わず言葉を詰まらせた。
「ぇっと、あの……」
「まあいい、隠したいなら別に」
言い淀むイスミに、男は興味なさげに吐き捨てて、ちょいちょい、と指先でイスミを招いた。
「ちょっとツラ貸せ」
足を進めて近寄る。
イスミがベンチの真横に達すると、男はベンチにイスミを引き込んだ。
「へ?」
気がつくとイスミはベンチに腰掛けていた。
そして、太ももの上に、のしかかる圧。
男はイスミの腹に頭を埋めるように抱きついて、膝枕の体制で寝ていた。
貸したのはツラではなく膝では。
イスミは戸惑いながらも、寝に入ってしまった男を見つめて、その頭を撫でた。
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