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悪意の継承者
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しおりを挟むキジトが内部通信で会議室に呼び出されたのは、平日の放課後を迎えたタイミングだった。
今日も今日とて一緒にいたシシーと共に首を傾げつつも向かった会議室。
扉を潜ればそこには錚々たるメンバーが勢揃いしていた。
「おう、キジト~」
「げっ」
声をかけてきたのは最近一緒にいることの増えたヤタマルである。
満面の笑みを湛えた顔が、軽く手を上げながらこちらに向かって歩いてくる。
キジトは顔を引き攣らせてその場に硬直した。
「なんだよ……っ! 絡むな!」
「へへへえ~キジトォ~俺な~俺な~?」
目尻の垂れ下がっただらしない顔面はそれでも整っていて、キジトは苛立ちを募らせた。
他のメンバーもいる中で絡んでくるのは対処に困る。
首に巻きついてこようとする腕を振り払って、キジトはヤタマルを睨み付けた。
「キモい!」
「自慢していい?」
「ハァ?!」
会話も出来ないのかコイツは!
首を傾げられてもまったく可愛くない。
イスミがやるならまだしも……。
途端に赤くなった頬を隠すように、自分の頭上からの鬱陶しい圧に、キジトは片眉を上げた。
「なんの自慢だよ?」
「俺な~……イスミに指揮してもらっちゃった!」
「死ねクズ!」
キジトの口から反射的に飛び出した言葉に会議室中の視線が集まるも気にならない。
押し寄せるような感情の波すらも端に追いやって、キジトはヤタマルに食ってかかった。
「テメェ! 抜け駆けしてんじゃねー!」
「いいだろぉ~! 羨ましいだろぉ~!」
実際のところヤタマルは待機を命じられただけであるが、キジトがそれを知る由もない。
唯一知るサジルはうわぁという視線を隠しもせずに二人を見つめていた。
「静かに」
「ひっ」
息を飲んだのは、誰だったか。
継承者が一堂に会すこの場で、身を震わせる程のプレッシャー。
喧騒を鎮めたのは、会議室の奥の扉から現れた総司令の言葉だった。
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