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【ファースト・デート02】
しおりを挟む今もなお鮮明に思い出せる大失態。今後もアレを超える失態はそうそうないだろう。
あれは入学当初に行われた通過儀礼。自己紹介での出来事だった。
元々女子校であり、さらに近年の少子化が影響し毎年入学希望者が減り続ける女学院において数少ない男子は、ある意味貴重であり。
嫌でも興味を引く存在だった。俺を含めてクラスには男子が二人だけ。ともなれば当然俺の順番には女生徒の視線は集中し。教室は静まり返っていた。
それほど身長は高くないが見た目も許容範囲にはじゅうぶんおさまっているだろうと思っていた。
そんな俺を初見で軽蔑する者は一人も居なかった。むしろ、勝手に自分達の理想を押し付けては今後の展開に夢を抱いていたかもしれない。
期待の込められた空気は俺の予想に反して、沈黙を守りながらも盛り上がり。
無言のプレッシャーは旧式のアナログ時計がカチカチと音を鳴らす毎に蓄積していく。
もういっぱいいっぱいだった。見渡す限り周りは女の子だらけだと舞い上がっていたのは入学するまで。
いざ、教室に入って男子が二人しか居ないと実感し。クラス中の女子に見つめられた時にようやく気付いた。
完全に自分の用意したネタでは満足して頂けないであろう事を。
無難な挨拶でやり過ごせばいいやと思っていただけに女生徒達の期待を込めた表情が胸をえぐる。
だからこそ、それらに応えるために、なにか気のきいたことを言おうと思ったが最後。頭の中は真っ白になっていた。
立ち上がってままの姿勢で、時間だけが過ぎていく……。
元々自分が何を言おうと思っていたのかも分からなくなり。
カチカチカチ……。
時を知らせる秒針の音すら早くナニカ言えと脅迫してくるみたいだった。
心臓の鼓動は激しさを増し、呼吸は荒れ始め。極度の緊張から顔は赤らみ。まるで獲物を前にして興奮している野獣の様だったそうだ。
何か言わなくては、なにかいわなくては、ナニカイワナクテハ――。
そんなプレッシャーから逃げるために、とにかくこの場を凌ごうとおぼろげに覚えていた無難な挨拶をしようとしたのが運のつき。
爽やかな笑顔で、
『皆と楽しい学院生活を送りたいと思います』
と言うつもりが――。
興奮しまくった鼻息を荒げた顔つきで、
「お…俺は! 皆とヤリタイです!」
に変っていた。
自分がナニを言ったのか全く分からないまま着席し。それでも何かをヤリとげた満足げな表情を浮かべていた。
その一方で教室の空気は一変。
静まり返った教室は一人の女生徒が発した悲鳴に始まり。奇声と怯えで混沌とし始める。
軽蔑の眼差しを向け、慌てて距離を置く女生徒達。椅子や机がガタガタと大きな音を立てる。
壁や窓際に寄り添い互いの身を守ろうとする者。期待は恐怖に塗り替えられていた。
そんな中。唯一羨望の眼差しで見つめてくる同じ男子の瞳だけが異質だった。
そして性的な意味で捉えられた俺の言葉はその日のうちに学院に広まり。
学院長に伝わる頃には生徒の親から苦情の電話が止まらない事態に発展。
担任の女教師には即見限られ、学院長呼にび出しをくらい、入学早々退学一歩手前の執行猶予を言い渡されていた。
家に帰れば義父に笑われ。噂は、携帯電話のおかげで一気に広がり始めた。
翌日には地元だけではなく近隣の学校でも極悪非道な強姦魔。鬼畜活動の名は画像付きで広まっていた。
それは下手な指名手配写真よりも迅速に浸透したと聞いている。
これが原因となり、非常に肩身のせまい思いをしてきた。
精神的疾患を引き起こしたとしても全く不思議じゃない状態だったと言えよう。
だから、全て受け入れる事にした。こうなってしまったのは全て自分の責任だと思った。
自分のした事は最後まで自分でなんとかする。それが俺のもっとうでもあったからだ。
だったら脳内に住み着いてしまった、理想とは程遠い彼女共々生きて行こうと思った。
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その内、精神科にかかろう。場合によっては入院が必要になるかもしれない。
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なにせ相手は脳内に居ると言っている。もはや簡単に切り離せる存在じゃないのだ。
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