ハンティング・プレイヤー

日々菜 夕

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【ファースト・デート04】

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 自宅近くのオフィス街を抜けると登校する学生達の姿が多く見られるようになる。
 それにしたがって主に女生徒から向けられる軽蔑の眼差しが痛いくらいに増えていた。
 覚悟はしていたが、幸村の言っていた通り本当に噂が広がってるんだなぁと強く実感した。
 店の手伝でレジ打ちをしてる際には当然若い女性客だってそれなりに対応してきた。
 昨日までは、どうせ手の届かないものだと思って諦めていたのだが。
 状況次第で覆せるのではないだろうか? つい、そんな事を思いついたら当初の目的に追加していた。
 もしも、本当にナナシの言った通りモンスターが湧くのだとしたら、場合によっては彼女ゲット作戦になる可能性があるからだ。
 そんな安っぽい考えが浮かんだのは、モンスターと言ってもしょせんはザコ。じゅうぶん対応出来る自信があった。
 しかしながら、か弱い女性にとってはそうでもないらしく。
 実際に、モンスターに怯える女性を助けて見事カップル成立なんて話があったのだから。それに乗らない手はないと思ったのだ。
 時間と場所が本当ならば、そこで獲物を待つだけでいい。
 なんとなくだが現地に行けばもっと正確な場所が分かる気がしていたのも気分高揚に繋がっていた。
 駅の構内に入り杉並駅までの切符を買い。自動改札を抜けてホームに着く頃には、電車到着のアナウンスが流れていた。
 俺は電車を使っての登校なんてしていない。乗車時間に間に合ったのは、ただ単に運が良かったというよりも。
 地元にあるもう一つの高校の制服を着た女の子が多く歩いている時間から逆算して、この位の時間に電車が到着するであろうと推測していただけだ。
 ひらひらと風になびく短めのスカートが羨ましかった。
 俺の通う学院ではスカートの長さが膝下20センチなんていう現代では珍しい校則があるのだ。
 しかも古めかしい紺色のセーラー服。単純に制服の可愛らしさと言った一点だけですら完敗していることもあり。
 同じ地元でありながら、国立の学院は今年も定員割れ。それに対し。私立の学園は今年も定員オーバーだったと聞く。
 少子化の波が広がる中でありながら倍率が2倍にちかったのだからたいしたものであろう。







 電車が目的地に向かって動き出す。通勤時間だからだろう。満員というほどではないが座席は全て埋まっていて、つり革すら足りていない。
 普段買い物や遊び目的でしか乗ったことのない俺にとっては少しばかり驚く光景だった。
 乗車口に寄りかかって窓の外を眺めれば特に変り映えのない景色が流れていく。
 都心部ほど人口は多くないがそれなりに発展した街並み。
 大抵の物は駅の周辺で手に入るから徒歩での移動がメインである学生にとってはありがたい街造りともいえた。
 カラオケにゲームセンター、インターネットカフェに各種ファストフード店等々が時折景色の一部となって見て取れる。
 遊ぶにしろ、バイトするにしろ嬉しい存在が立ち並ぶ賑やかな街。ちょっぴり都会に近いここら辺一帯において起こり始めた不思議な出来事。

 それは、約一月前ほどから始まった――

 この街一帯ではモンスターが湧くという不可思議な現象に直面していたのだ。
 当初は、新手のいたずらとしか思えないような小さな変化だった。
 野球ボールほどの大きさ。黒と灰色の縞もよう。手と足の無いネズミみたいな顔した物体が跳ね回るという珍事から始まった。
 それは異常なまでに好戦的で凶暴。
 なのに――
 その危険性は、ほぼ無いに等しかった。
 近づいた人をギラツク金色の瞳で睨み付けては手当たり次第に体当たりして攻撃するのだが……。
 ぽふぽふしてるだけで、スポンジ並みの攻撃力しかない。
 つまり、モンスターは殺す気で襲い掛かっているのに、人の受けるダメージはゼロ。
 中には、そんな小さな存在を受け止めて、『可愛い~♪』なんて言っている女の子すら居たそうだ。
 そんな程度のモノとなればメディアの扱いも小さく、警察が動く事なんてありえなかった。
 だから、そんな油断を含めてリアルモブと呼ばれたり。手当たり次第に無差別攻撃する事からテロモブとも呼ばれていた。
 モンスター達の攻撃は日増しに多様化し。その強さと凶暴性も増していた。
 霧状になった液体を撒き散らして玉ねぎを切った時に感じる目の痛みで近づいた者を涙させる攻撃とか――
 路地裏で吐き散らかされたままになっているゲロの臭いとかを撒き散らしてゲロを誘発させる攻撃とか――
 黒板を引っかいた時に出る、キーキーという音で叫びまくって背筋をゾクゾクさせる攻撃とか――
 べたべたした油みたいな潤滑液を撒き散らして通行人を滑って転ばせる攻撃とか――
 中には、水をを撒き散らしては着ている衣服を透けさせる攻撃を仕掛けてくるヤツもいた。
 もっとも、これだけは一部の男子から、『もっとやれ!』という声も上がっていたが……。
 とにかく、ここら辺から怪我人が目立ち始めていた。
 朝起きたら家の中に変なモンスターが居て。それに、びっくりし倒れた拍子にテーブルの角で頭をぶつけたり。
 良く滑る液体を道に撒き散らしたために、ちょうど通りかかった車がスリップして事故を起こしたり。
 朝の通勤時間帯にとつじょ発生した悪臭が原因で歩道がゲロまみれになったりなんて事件も起こっていた。
 それらの情報をまとめて配信しているのが、リアルモブ情報局というサイトであり。
 地元の人が管理しているらしく、ネットだけではなくローカルネットワーク等も使って毎日情報を配信している。
 そこでも、この珍事はサイレントと呼ばれる奴らの自作自演なのではないかというのが大筋だった。
 現時点では、それらリモブを興味本位で捕まえようとしたり。
 ネット配信を目的とした撮影をする事が一部奇特な人達の間で流行っていたりするくらいで、警察等の行政機関は対策委員会を作るための会議を始めた程度である。
 それも会議とは名ばかり。夜の繁華街で行われていたのだから実際は遊び目的。体裁のいい言い訳に利用されてるだけだと義父から聞いた。
 コンビニ経営してると、たまに常連客の愚痴を聞くことがあるから、信憑性は高いと思う。
 俺は、この街に在る高校の生徒達と共に駅に降りる。
 彼らは、仲がいい学友達と談笑しながら改札口に向かい――
 それらと対照的にスーツ姿のサラリーマンやOL達は無言で目的地に向かい始める。
 階段を二段飛ばしで駆け上がる男性サラリーマンもいれば、二日酔いで痛む頭を押さえながらエスカレーターの順番待ちをするOLもいる。
 皆に共通している事は一つ。この駅が目的地ではないという事だろう。
 周りを見渡せば、次の電車を待つ者の中に数名だが異色の気配を漂わせる者が混じっていた。
 彼らは、モブラーと呼ばれ。リモブやサイレントの連中を撮る事が目的である。
 普段からこうして街にでてはうろうろして対象が現れるのを待っているのだが……。
 今日は、俺の予告があったのでその検証も兼ねてココに居るのだろう。
 もちろん書き込まれた内容を鵜呑みにしたわけではなく。ただ単に、駅という場所は移動に都合が良かったからという理由もあるとは思うが。
 ようするに。コンビに行くなら、ついでにアイスも買ってきて。と同じ理屈だろう。

【報告。ナナシは通常索敵モードに移行します。索敵終了。結果を表示。確認。現在地より約左35度。距離20メートル先に赤い逆三角形を表示しましたが視認できますか?】
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