“help”の音は、聴こえない

*明星 詩乃

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5.


「…ねぇ、ちょっと。樹居る?」
「ああ 青葉だったら、あの奥に。呼んで来ようか?」
「…うん、お願い」


俺が机に顔を伏せて
瞳を閉じていると

そんな会話が聞こえてきて、
案の定 クラスの奴が「青葉」と俺を呼ぶ

俺はそれに 気持ちの篭っていない
感謝の言葉で一応 応えながら

面倒臭そうに
見慣れた幼馴染の前に立った


「…何」
「今回のテスト、学年何位だった?」
「…は?そんな事を聞きに、わざわざ来たのかよ…」
「そう、私にとっては大事な事だから」


苛付いた
コイツは昔からそうだ

勝手に俺をライバル視して
勉強ばかり、順位ばかりに拘る

…面倒臭い


「…150位くらいだけど?」

俺がそう言った瞬間、
アイツの眉間に皺が寄った

「前回もそうだけど 樹、手抜いたでしょ」
「…別に、実力だよ」

「嘘!」


何を興奮したのか
一際大きい声が出て

ざわついていた教室が、一瞬静かになる

教室中の視線を感じながら
俺は舌打ちをした


「…もう、良いだろ。帰れよ」
「どうして…だって昔は-」
「うるせぇな、聞こえねぇの?…帰れ、って言ってんだよ」

「…なら、理由を教えて」
「理由?…別にねぇよ」
「…やっぱり、大地さんの事-」


ぷつん。

元々苛付いていた中、
張り詰めていた糸が切れた音がして

気が付いたら俺は
葵の胸倉を掴んでいた

拳に力が篭る

ドアにぶつかった音と
その光景に、教室に居た女子達が
悲鳴を上げた


「…本気で、俺を怒らせたいのか?」
「…っ樹」
「…ああ、もう本当」


「…お前、嫌いだわ」

俺が睨みつけながら そう言うと、
葵の肩の力が抜けた

「…もう、帰るわ」
「え?だって、学校は-」

「そんなもん」


「俺には、どうだって良いんだよ」

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