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第一章『森の変異種』
目覚め 2
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(part.レオン)
満身創痍で村に戻ると、森の入り口あたりで村長や村の若い衆達がが不安そうに入り口を眺めており、俺たちの姿が見えた瞬間、皆が喜びと安堵と、次いで緊迫した表情を見せた。
「君たち!傷だらけじゃないか!すぐに宿へ!」
村人達の連携で、スムーズに俺たちは村の宿の部屋をとってもらい、すぐにシロをベッドに寝かせることが出来た。
未だ意識のないシロの体を、濡らした布を用意してもらって清め、服を着せてやる。
アイリスはその間、気を遣って部屋を出ていてくれていた。
あいつも身体中痛むだろうに、気を遣わなくて良いと言ったが「あたしは平気だから、あんたがやってあげて。あんたじゃないと駄目」と笑って部屋を出て行った。
シロの体に残る傷跡や、全身にしつこく絡みついた粘液を見るだけで、沸々と怒りが湧いてくる。
魔物に対してもそうだが、一番腹が立つのは自分に対してだ。
護ると誓ったのに、俺は何をやってるんだろうか……。
やがて村の医者が急いで部屋にやって来て、俺たち三人の状態を診察してくれた。
「お嬢ちゃんが応急処置をしてくれたからか、全員あとは薬を塗って治癒を待つだけで大丈夫だろう。しばらくは激しい運動は控えること。骨も腱も仮でくっついているようなものだからね。安静にしておけばすぐ元に戻る」
「シロが……目を覚まさねぇのはどうしてなんだ先生!」
どうしても冷静で居られない。
つい大きくなってしまう声に、アイリスが咎めるように視線を寄越した。
「レオン、落ち着いて」
「悪ぃ……」
「良いんだ。仲間の意識が戻らないのは、さぞ不安だろうから。シロくんの状態は、命に別状は無いがアイリスさんの見立て通り、何らかの理由で体内の元素が枯渇状態にある。しばらくすれば自然と戻るだろうが、正直なところ、意識が戻らない理由は分からないんだ」
医師の言葉に俺はもアイリスも愕然とした。
もしかしたらずっと意識が戻らない可能性があるということだ。
ベッドに横たわるシロの顔を見る。
静かに目を瞑り、どことなく安らかな表情に見える。
ずっと、このまま……?
絶望感が胸の中に、黒い染みを作ってゆくような感覚。血の気が引いた。
その時、窓をコンコンと叩く音が聞こえて、アイリスが窓を開いた。
白い狐が開かれた窓からするりと入り込み、行儀良く座って、不思議そうに見つめる俺たちをぐるっと一瞥してから『話し始めた』。
「なんじゃ葬式みたいな顔しおって」
「えっ……その声、マスター!?」
「医師よ、うちの冒険者が世話をかけたのう。後はわしが面倒を見るから、もう下がって貰って結構じゃ」
「いえ……分かりました」
アイリスの問いに、フッと笑って(狐なのに表情豊かだ)医師に労いの言葉をかける。
医師も目を点にしながらも、言われるがままに会釈して部屋を出て行った。
「さて、やはりこうなってしもうたか」
「やはりってどういう事だよ?」
「依頼書を見た時に何か嫌な予感がしておった。お主等なら大丈夫じゃろうと思って送り出した……が、流石に変異種討伐とは予想外じゃ。よく生きて戻った」
その後、聞くところによるとヴァイスは不吉な予感を感じてこちらに分身であるこの狐を送り込み、今しがた村人達に話を聞いて回って今回の騒動を理解したという事だった。
「さて、シロの意識じゃが心配せずとも戻る」
「本当に!?ああ、良かった…!」
「どうやったら戻るんだ??」
「自然に元素が満ちるまで安静にさせておけばじきに戻る、が、その場合は少なくとも数週間はこのままじゃろう」
数週間で意識が戻るのか……と安心しかけたが、よく考えたらその間シロは飲み食いができないという事だ。
「おいおいおい、それってそのまま放っておいたらヤバいんじゃねぇのかよ!?」
「シロ、ただでさえ大食漢なのに数週間も飲まず食わずなんてそれこそ死んじゃうじゃない!!!」
「焦るでない。方法はある」
「勿体ぶってねぇで言えよ!!!」
ヴァイスの分身である狐は至極真剣な顔をして言葉を続けた。
「愛する者からの、キッスじゃ」
満身創痍で村に戻ると、森の入り口あたりで村長や村の若い衆達がが不安そうに入り口を眺めており、俺たちの姿が見えた瞬間、皆が喜びと安堵と、次いで緊迫した表情を見せた。
「君たち!傷だらけじゃないか!すぐに宿へ!」
村人達の連携で、スムーズに俺たちは村の宿の部屋をとってもらい、すぐにシロをベッドに寝かせることが出来た。
未だ意識のないシロの体を、濡らした布を用意してもらって清め、服を着せてやる。
アイリスはその間、気を遣って部屋を出ていてくれていた。
あいつも身体中痛むだろうに、気を遣わなくて良いと言ったが「あたしは平気だから、あんたがやってあげて。あんたじゃないと駄目」と笑って部屋を出て行った。
シロの体に残る傷跡や、全身にしつこく絡みついた粘液を見るだけで、沸々と怒りが湧いてくる。
魔物に対してもそうだが、一番腹が立つのは自分に対してだ。
護ると誓ったのに、俺は何をやってるんだろうか……。
やがて村の医者が急いで部屋にやって来て、俺たち三人の状態を診察してくれた。
「お嬢ちゃんが応急処置をしてくれたからか、全員あとは薬を塗って治癒を待つだけで大丈夫だろう。しばらくは激しい運動は控えること。骨も腱も仮でくっついているようなものだからね。安静にしておけばすぐ元に戻る」
「シロが……目を覚まさねぇのはどうしてなんだ先生!」
どうしても冷静で居られない。
つい大きくなってしまう声に、アイリスが咎めるように視線を寄越した。
「レオン、落ち着いて」
「悪ぃ……」
「良いんだ。仲間の意識が戻らないのは、さぞ不安だろうから。シロくんの状態は、命に別状は無いがアイリスさんの見立て通り、何らかの理由で体内の元素が枯渇状態にある。しばらくすれば自然と戻るだろうが、正直なところ、意識が戻らない理由は分からないんだ」
医師の言葉に俺はもアイリスも愕然とした。
もしかしたらずっと意識が戻らない可能性があるということだ。
ベッドに横たわるシロの顔を見る。
静かに目を瞑り、どことなく安らかな表情に見える。
ずっと、このまま……?
絶望感が胸の中に、黒い染みを作ってゆくような感覚。血の気が引いた。
その時、窓をコンコンと叩く音が聞こえて、アイリスが窓を開いた。
白い狐が開かれた窓からするりと入り込み、行儀良く座って、不思議そうに見つめる俺たちをぐるっと一瞥してから『話し始めた』。
「なんじゃ葬式みたいな顔しおって」
「えっ……その声、マスター!?」
「医師よ、うちの冒険者が世話をかけたのう。後はわしが面倒を見るから、もう下がって貰って結構じゃ」
「いえ……分かりました」
アイリスの問いに、フッと笑って(狐なのに表情豊かだ)医師に労いの言葉をかける。
医師も目を点にしながらも、言われるがままに会釈して部屋を出て行った。
「さて、やはりこうなってしもうたか」
「やはりってどういう事だよ?」
「依頼書を見た時に何か嫌な予感がしておった。お主等なら大丈夫じゃろうと思って送り出した……が、流石に変異種討伐とは予想外じゃ。よく生きて戻った」
その後、聞くところによるとヴァイスは不吉な予感を感じてこちらに分身であるこの狐を送り込み、今しがた村人達に話を聞いて回って今回の騒動を理解したという事だった。
「さて、シロの意識じゃが心配せずとも戻る」
「本当に!?ああ、良かった…!」
「どうやったら戻るんだ??」
「自然に元素が満ちるまで安静にさせておけばじきに戻る、が、その場合は少なくとも数週間はこのままじゃろう」
数週間で意識が戻るのか……と安心しかけたが、よく考えたらその間シロは飲み食いができないという事だ。
「おいおいおい、それってそのまま放っておいたらヤバいんじゃねぇのかよ!?」
「シロ、ただでさえ大食漢なのに数週間も飲まず食わずなんてそれこそ死んじゃうじゃない!!!」
「焦るでない。方法はある」
「勿体ぶってねぇで言えよ!!!」
ヴァイスの分身である狐は至極真剣な顔をして言葉を続けた。
「愛する者からの、キッスじゃ」
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