4 / 6
第4幕 ローザとベートシュ
しおりを挟む
ローザは、ベートシュに無理矢理手を引かれながら、パーティー会場の人気のないテラスに連れてこられていた。
「あの男は何なんだ!君は僕っていう婚約者がいるのに他の男と密会してたのか?」
怒りを露わにするベートシュは、どう見てもローザにヤキモチを焼いているわけではなく、男に恥をかかされた事が許せないという態度だった。
「私は、初めてお会いする方です。誰かは存じ上げません。」
そう言うローザに、ベートシュはムカついた表情のまま罵声を浴びせた。
「君は貴族全ての名前を網羅しているんじゃなかったのか?王女で第2軍司令官でもある君が、来てくれた貴族の名前すら知らないってどういう事だ?!」
ローザにとっても、男を知らない事を妙に思っているのに、そんなに怒鳴られると更に自分の不甲斐なさを感じて萎縮してしまう。話題を変えた方が良さそうだとローザは咄嗟に口を開いた。
「ところで、先程のヒメール嬢の事なのですが、埋め合わせをしに行かれるのですか?」
ローザにとってベートシュは、大好きでかけがえのないフィアンセなのだ。男の事も気になるが、また会いに行く事を黙って見過ごす事はできなかった。
「当たり前じゃないか!わざわざ僕とパーティーに来たのに1人で帰してしまったんだ。可愛そうじゃないか!」
悲しみが込み上げてくる中、ローザはグッと耐えてから口を開いた。
「今日は、私が率いる第2軍の凱旋パーティーでございます。隣国の上官を倒して、相手側の県境の領土を勝ち取り戻って参りました。なのに1ヶ月も前からヒメール嬢と来る事にしていたなどとは思いもよりませんでした。」
苦痛に歪む唇をグッと噛み締めて言うローザは、誰が見ても痛々しい表情をしていた。
そんな時、テラスの扉が空いて、しなやかな長い銀髪に、見目麗しく落ち着いた空気を纏う、軍服を着た男がローザの前に跪いた。
「ローザ司令官、国王様が参られました。すぐに授与式が始まります。参りましょう。」
そう言って、男はローザに手を差し出して立ち上がった。
「おい!ジン!僕に挨拶はなしかよ!」
黙って見ていたベートシュは、銀髪の見目麗しい男に怒鳴った。
その瞬間、冷ややかな目でジンはベートシュを睨みつけた。
「私は第2軍の副司令官ではありますが、公爵家の長男です。聖剣の騎士と名があるだけで戦にも出ず、平民出身のあなたに、私から何故挨拶をしなければならいのです?」
そう言い放ってフィッと顔を背けてローザに向き直った。
「お見苦しいところをお見せしました。参りましょう司令官。」
そう言い放つと、ジンはローザをエスコートしてその場を去ろうとした。
その瞬間、ローザは掠れた声でベートシュの方を振り返って言った。
「お願いです。もう浮気はよして下さい。心が折れそうです。」
そんなローザに、ベートシュは可笑しそうに笑った。
「人助けをしているだけで浮気などしていないのに酷いよ君は。ヤキモチを焼きすぎる女は嫌いなんだ。これ以上口を出さないでくれる?」
いつでも別れられますよ。ともとれる警告のような内容に、ローザは黙って足を前に進める他なかった。
ジンは怒りが爆発しそうな気持ちを抑えて、力なく歩くローザを支えるようにエスコートした。
「ローザ様 いい加減目を覚まして下さい。世の中にいい男は沢山います。あなたは立派ですが、男を見る目がなさすぎます。諦め切れないならこっそり暗殺でもして参りましょうか?」
物静かにローザと話す姿は、周りの者の目からはこんな毒を吐いているようには映っていない。
みんなから想像されている女性人気No.1のベンは、人がいいからワガママ王女に振り回されていると思われているからだ。
「迷惑かけちゃってごめんね。ベートシュは男の人だから浮気ぐらい許してあげなきゃいけないのに、ついつい自分の気持ちを押しつけてしまったから。」
そう言って落ち込むローザに、ジンは満面の笑顔で
答えた。
「私は彼女ができたら、浮気なんて馬鹿な事はしませんよ?あんな下級な人間と同等かのように、他の男達や私まで男の人という一つの括りで、括らないで下さいね?」
「あの男は何なんだ!君は僕っていう婚約者がいるのに他の男と密会してたのか?」
怒りを露わにするベートシュは、どう見てもローザにヤキモチを焼いているわけではなく、男に恥をかかされた事が許せないという態度だった。
「私は、初めてお会いする方です。誰かは存じ上げません。」
そう言うローザに、ベートシュはムカついた表情のまま罵声を浴びせた。
「君は貴族全ての名前を網羅しているんじゃなかったのか?王女で第2軍司令官でもある君が、来てくれた貴族の名前すら知らないってどういう事だ?!」
ローザにとっても、男を知らない事を妙に思っているのに、そんなに怒鳴られると更に自分の不甲斐なさを感じて萎縮してしまう。話題を変えた方が良さそうだとローザは咄嗟に口を開いた。
「ところで、先程のヒメール嬢の事なのですが、埋め合わせをしに行かれるのですか?」
ローザにとってベートシュは、大好きでかけがえのないフィアンセなのだ。男の事も気になるが、また会いに行く事を黙って見過ごす事はできなかった。
「当たり前じゃないか!わざわざ僕とパーティーに来たのに1人で帰してしまったんだ。可愛そうじゃないか!」
悲しみが込み上げてくる中、ローザはグッと耐えてから口を開いた。
「今日は、私が率いる第2軍の凱旋パーティーでございます。隣国の上官を倒して、相手側の県境の領土を勝ち取り戻って参りました。なのに1ヶ月も前からヒメール嬢と来る事にしていたなどとは思いもよりませんでした。」
苦痛に歪む唇をグッと噛み締めて言うローザは、誰が見ても痛々しい表情をしていた。
そんな時、テラスの扉が空いて、しなやかな長い銀髪に、見目麗しく落ち着いた空気を纏う、軍服を着た男がローザの前に跪いた。
「ローザ司令官、国王様が参られました。すぐに授与式が始まります。参りましょう。」
そう言って、男はローザに手を差し出して立ち上がった。
「おい!ジン!僕に挨拶はなしかよ!」
黙って見ていたベートシュは、銀髪の見目麗しい男に怒鳴った。
その瞬間、冷ややかな目でジンはベートシュを睨みつけた。
「私は第2軍の副司令官ではありますが、公爵家の長男です。聖剣の騎士と名があるだけで戦にも出ず、平民出身のあなたに、私から何故挨拶をしなければならいのです?」
そう言い放ってフィッと顔を背けてローザに向き直った。
「お見苦しいところをお見せしました。参りましょう司令官。」
そう言い放つと、ジンはローザをエスコートしてその場を去ろうとした。
その瞬間、ローザは掠れた声でベートシュの方を振り返って言った。
「お願いです。もう浮気はよして下さい。心が折れそうです。」
そんなローザに、ベートシュは可笑しそうに笑った。
「人助けをしているだけで浮気などしていないのに酷いよ君は。ヤキモチを焼きすぎる女は嫌いなんだ。これ以上口を出さないでくれる?」
いつでも別れられますよ。ともとれる警告のような内容に、ローザは黙って足を前に進める他なかった。
ジンは怒りが爆発しそうな気持ちを抑えて、力なく歩くローザを支えるようにエスコートした。
「ローザ様 いい加減目を覚まして下さい。世の中にいい男は沢山います。あなたは立派ですが、男を見る目がなさすぎます。諦め切れないならこっそり暗殺でもして参りましょうか?」
物静かにローザと話す姿は、周りの者の目からはこんな毒を吐いているようには映っていない。
みんなから想像されている女性人気No.1のベンは、人がいいからワガママ王女に振り回されていると思われているからだ。
「迷惑かけちゃってごめんね。ベートシュは男の人だから浮気ぐらい許してあげなきゃいけないのに、ついつい自分の気持ちを押しつけてしまったから。」
そう言って落ち込むローザに、ジンは満面の笑顔で
答えた。
「私は彼女ができたら、浮気なんて馬鹿な事はしませんよ?あんな下級な人間と同等かのように、他の男達や私まで男の人という一つの括りで、括らないで下さいね?」
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた
夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。
そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。
婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」
魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。
鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。
(な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?)
実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。
レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。
「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」
冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。
一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。
「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」
これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない
魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。
そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。
ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。
イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。
ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。
いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。
離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。
「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」
予想外の溺愛が始まってしまう!
(世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる