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異国の女剣客編

第31部分 香の無双

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 さらに二日が経過し、ドラズさんから「全部できたよ」と言われた。

「色々、ありがとうございました」
 俺は一人でドラズさんと話をする。

「大したことはしてないよ。あたしの方こそ、ありがとね。面白い素材を扱えたし、まさか久忠の孫と会えるとは思わなかったよ。…………で、もう一つの頼まれていたものだけど」
 ドラズさんは真剣な表情になり、『それ』を見せてくれた。
「出来は完璧さ。だけど、扱いは注意しとくれ」
「分かりました」と言い、俺はそれをカード化して、デッキにしまう。
 
「ハヤテ、どこだ!?」

 リザの声がした。
 俺は声のする方へ向かう。

「いた、どこに行ってた?」
「ちょっとドラズさんと話をしていたんだよ。…………さて、帰ろうか」

 俺はワイバーンを召喚する。

「俺たちはもう行きますね。本当にありがとうございました」
「気にしなくていいよ。武具が壊れたり、新しいモノが欲しくなったら、またおいで」
 ドラズさんは笑った。
「ディアス君、また勝負しましょうね。今度はもっと強くなっていますから」
「それは僕の台詞です。次までにもっと強くなっていますね」
 香とディアス君は握手をする。
 俺たちは目的以上の収穫を得て、ドラズさんの元を後にした。


 後はワイバーンに乗ってレイドアの街まで帰るだけだ。

 と思っていたが、異変が起きた。
 この前のドレイクのような奇襲を受けない為に『黒鳥の群れ』を先行させ、周辺の警戒に当てていた。
 その黒鳥の一部が戻った来たのだ。

「何かいるのか?」
 ワイバーンに高度を落とさせる。
 辺りは見晴らしの良い平原だったので、黒鳥たちが何を知らせたかった、それはすぐに分かった。

 オーガの群れだ。

 この前とは違う。ざっと見ても十体は超えている。
 もし、それだけだったら、構わずに飛び去っていたかもしれない。
 しかし、オーガたちは人間を追いかけていた。
 恰好からすると、冒険者のようだった。

「リザ、香、助けるぞ」
 二人は頷く。
 ワイバーンをさらに下降させる。
 リザが弓を構えた。

「魔法付与の矢(水)『時雨』」

 リザの攻撃を受けたオーガたちは動きを止めた。
 冒険者とオーガの群れの間に割って入る。

「大丈夫かい?」
 襲われていた冒険者たちは、俺たちが突然現れたことに困惑していた。

「あれ、君たちは…………」
 この四人組は見覚えがあった。
 酒場で俺たちに絡んできた子たちだ。

「な、なんだ、いきなり!? それにおっさん、竜なんて操れるのかよ!」
 四人の中のリーダー格の青年、カーラー君が叫んだ。

 おっさん呼びは怒らないけど、傷付くなぁ。
 しかし、今はそれどころじゃないだろう。
 四人は怪我をしていた。
 今すぐに命に関わるというわけではないが、やっぱり放っておけない。
 近くで見るとこの前の『はぐれオーガ』よりも、この集団のオーガの方が大きい。

「さてと…………」
 俺がモンスターを召喚しようとした時だった。

「私がやってもいいですか?」

 香が前に出る。
「新しい刀を使ってみたいんです」
 香は笑った。
 俺は「構わないよ」と言って、後ろに下がる。

「リザ、俺たちはこの子たちを守るぞ」
「こいつら、この前、絡んできたむかつく奴らだ」
「それでも助けない理由にはならない」
「ハヤテは優しいな」
 リザは弓を構える。

 香が初めに抜いたのは『イワジュク』だった。
 攻法を使っていないのに一体目のオーガの首を簡単に落とす。

 リザとの魔力操作の練習のおかげだろう。
 香はさらに二体のオーガを斬り伏せる。
「凄い。こんなに使いやすい刀、初めてです」
 香は楽しそうだった。

 やっぱり戦闘狂だ。

 一度、『イワジュク』を鞘に納め、今度は『ミノワ』を抜いた。
 香にとっては初めて扱う異国のモンスターで加工した刀だ。

「行きます…………!」

 香がオーガに再び攻めかかる。
 最初のオーガの鉄のように固い爪を受けた時だった。

「えっ…………?」

 起こったことに対して、香が一番驚いていた。
 刀を充てただけで、オーガの拳から腕までが割けたのだ。

「なんですか、この刀!?」

 予想外のことに戸惑う香に別のオーガが襲い掛かる。
 香が反射的に刀を振ると、今度はオーガの胴体を真っ二つにしてしまう。
 オーガの堅い筋肉も、、頑丈な骨も感じさせないほど簡単に斬ってしまった。

「これ、勝手に私の魔力を使って極限まで切れ味を高めています。これじゃ、私が刀に使われていますね…………こっちは問題児です」

 とは言うものの、香は相変わらず楽しそうだった。
 最初は戸惑っていた『ミノワ』の力にもどうにか慣れた頃、オーガは半数まで減っていた。

「さてと…………」
 香は『イワジュク』を抜く。
 二刀流の初陣だ。

「魔陰双流攻法ノ一『ヌキサキ』」

 香はディアス君に勝った時、使用した下段の構えから連撃を繰り出した。

「凄い…………」

 あまりに当然のように戦っているから、忘れそうになるが相手はオーガだ。
 召喚盤でレベル②の魔物。
 並みの冒険者が一人で相手を出来る魔物じゃない。

 それを香は一人で多数相手にしている。
「見惚れているところ悪いけど、そろそろ私も前に出ていいか。香は魔力を使い過ぎだ」
「いいよ。こっちは任せてくれ」

 リザも前に出る。
 すぐに数本の矢を放ち、オーガを一体討ち取った。

 青年たちは二人の戦いを呆然と見ていた。
「強いでしょ。うちの女の子たちは」
 青年たちに話しかける。
「あんたは何もしないのかよ」
 カーラー君が言う。

「する必要がないくらい二人が強いからね。さて、君たち怪我をしているね」
 俺は治癒スライムを召喚した。
「ス、スライム!?」
「大丈夫だから、悪いスライムじゃないから」

 治癒スライムは分裂し、四人の傷口に密着する。

「止血と殺菌はそれで出来る。それにしても…………」
 俺が怪我を治している間に戦いは終わっていた。
 圧勝だった。
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