107 / 200
レイドア防衛編
第107部分 シャルの戦い
しおりを挟む
いつものようにワイバーンで依頼のあった村に向かう途中、
「シャル、俺は冒険者に拘ることはないと思うんだ。回復術師なら街にいても人の為、役に立てる。リスネさんに頼めば、活躍の場所を紹介してくれると思う」
一応、そんな説得をする。
「気を使ってもらってすいません。でも、大丈夫です。私は自分でこの道を決めたのです」
シャルの意思は変わらなかった。
だから俺はそれ以上、何も言わない。
シャルが決めたら、彼女の意見を尊重する。
被害が出ている村で事情を聞くと、ゴブリンは森の中の小さな洞窟に巣を作っているらしい。
ゴブリンのクエストの難易度はゴブリン自体の強さではなく、巣にしている場所によって決まることが多い。
複雑な洞窟などなら難易度は跳ね上がる。
実力があっても、ゴブリンに地の利を使われて、ひどい目に合う冒険者が後を絶たない。
しかし、今回のクエストは間違いなく初級レベルのものだろう。
洞窟の内部はすでに把握されている。
一本道で奥に二十メートル程度だ。
巣の大きさ、村の被害規模を考えると大量のゴブリンがいるということはない。
「じゃあ、始めるよ。いいかい?」
俺の言葉にシャルとアイラが頷いた。
洞窟の中にゴブリンが嫌がる臭いがする煙幕を投げ込んだ。
「グギャ!」という悲鳴が洞窟内から響く。
「出てくるのぉ。雌は逃がすな。身籠っておったら、別の場所に巣を作られるぞ」
「分かったよ」
俺は『魔狼の群れ』を召喚し、逃げるゴブリンを討ち取る。
そして、向かってくるゴブリンは、
「シャル、任せたよ」
「はい」
アイラは後ろに下がっている。
本当に危なくなるまで出るつもりはないらしい。
前線に立ったシャルは剣を構えた。
ロキア王国の特色なのか、王族の女子であってもいくつかの武芸を身に着けている。
「行きます……!」
シャルの剣はゴブリンの喉を突く。
もっと苦戦すると思ったが、最初の一匹をあっさりと討ち取った。
シャルの戦闘技能は新米の冒険者程度にならある。
他の三人(リザ・香・ローラン)が戦闘に関して優秀だから、前に出来る機会がなかっただけだ。
「やりました…………!」
しかし、経験は圧倒的に不足していた。
ゴブリンを一匹討ち取り、シャルはホッとしてしまう。
「馬鹿者、気を抜くでない!」
俺が言うより前にアイラが叫んだ。
「グギャァァァ!」
仲間を殺され、ゴブリンは怒り狂っていた。
それだけじゃない。
恐らく、シャルの表情が緩んだのを見て、戦いになれていないことを気付かれた。
「えっ、そんな……!」
ゴブリンはシャルに殺到する。
「アイラ、手を出すぞ!」
俺は限界だと判断して、加勢しようとした。
「待つんじゃ」
アイラは俺の腕を掴んだ。
その間にもシャルはゴブリンに襲われ、ボロボロになっていく。
「シャルロッテ、助けて欲しいなら『助けてください』と叫べ。じゃが、その時はおぬしの冒険者人生の終わりじゃ! もし、それが嫌なら全力で戦え!」
シャルは少し迷い、そして、
「………………ハヤテさんは私がどんな外見になっても軽蔑しませんか?」
ゴブリンに髪を掴めれていることを気にせず、そんなことを聞く。
「シャルはシャルだ。俺は気にしないよ」
「そうですか……そうですよね。ハヤテさんはそう言うと思ってました」
シャルを抑え込んでいたゴブリン数匹が吹き飛んだ。
ゴブリンを吹き飛ばしたのはシャルの尻尾だった。
それだけじゃない。
シャルの全身には鱗が浮き上がる。
そして、爪と牙。
その見た目はリザードマン、いや、リザードウーマンだった。
「竜化とでもいうべきかの? あの姿を知られたせいでシャルロッテは王宮内で腫物扱いだったようじゃ。それでも国王が守ったから、殺されずに済んでおったがの」
「アイラの角の力なのかい?」
シャルの胸には体が弱かった彼女の命を救うために『アイラの角』が埋め込まれている。
「もちろんじゃ、儂の角に適合した副産物じゃな。儂ほど竜人の力をうまく使えんから、見た目はああなってしまう」
『ジュラディーズ』で出会ったリザードマンとアイラは同種族らしい。
見た目に差を出るのは、魔力の量や操作能力が関係している。
人型に近づくほど、魔力の扱いに長けている。
「まぁ、使いこなせんとはいえ、儂の力を分け与えたんじゃ、ゴブリン程度に負けることはないの」
アイラは断言した。
そして、その言葉通りだ。
「『竜爪』!」
シャルはアイラと同じ技を使った。
殺到していたゴブリンが切り刻まれる。
ゴブリンたちは距離を取るが、そこを今度は遠距離攻撃の『竜弾』が襲う。
シャルに勝てないと判断したゴブリンたちは戦うことを諦めて、逃走する。
「戦い終わったの。もう、手を出していいじゃろ」
アイラと『魔狼の群れ』が逃げるゴブリンを逃がさない。
戦いはあっという間に終結した。
「シャル、俺は冒険者に拘ることはないと思うんだ。回復術師なら街にいても人の為、役に立てる。リスネさんに頼めば、活躍の場所を紹介してくれると思う」
一応、そんな説得をする。
「気を使ってもらってすいません。でも、大丈夫です。私は自分でこの道を決めたのです」
シャルの意思は変わらなかった。
だから俺はそれ以上、何も言わない。
シャルが決めたら、彼女の意見を尊重する。
被害が出ている村で事情を聞くと、ゴブリンは森の中の小さな洞窟に巣を作っているらしい。
ゴブリンのクエストの難易度はゴブリン自体の強さではなく、巣にしている場所によって決まることが多い。
複雑な洞窟などなら難易度は跳ね上がる。
実力があっても、ゴブリンに地の利を使われて、ひどい目に合う冒険者が後を絶たない。
しかし、今回のクエストは間違いなく初級レベルのものだろう。
洞窟の内部はすでに把握されている。
一本道で奥に二十メートル程度だ。
巣の大きさ、村の被害規模を考えると大量のゴブリンがいるということはない。
「じゃあ、始めるよ。いいかい?」
俺の言葉にシャルとアイラが頷いた。
洞窟の中にゴブリンが嫌がる臭いがする煙幕を投げ込んだ。
「グギャ!」という悲鳴が洞窟内から響く。
「出てくるのぉ。雌は逃がすな。身籠っておったら、別の場所に巣を作られるぞ」
「分かったよ」
俺は『魔狼の群れ』を召喚し、逃げるゴブリンを討ち取る。
そして、向かってくるゴブリンは、
「シャル、任せたよ」
「はい」
アイラは後ろに下がっている。
本当に危なくなるまで出るつもりはないらしい。
前線に立ったシャルは剣を構えた。
ロキア王国の特色なのか、王族の女子であってもいくつかの武芸を身に着けている。
「行きます……!」
シャルの剣はゴブリンの喉を突く。
もっと苦戦すると思ったが、最初の一匹をあっさりと討ち取った。
シャルの戦闘技能は新米の冒険者程度にならある。
他の三人(リザ・香・ローラン)が戦闘に関して優秀だから、前に出来る機会がなかっただけだ。
「やりました…………!」
しかし、経験は圧倒的に不足していた。
ゴブリンを一匹討ち取り、シャルはホッとしてしまう。
「馬鹿者、気を抜くでない!」
俺が言うより前にアイラが叫んだ。
「グギャァァァ!」
仲間を殺され、ゴブリンは怒り狂っていた。
それだけじゃない。
恐らく、シャルの表情が緩んだのを見て、戦いになれていないことを気付かれた。
「えっ、そんな……!」
ゴブリンはシャルに殺到する。
「アイラ、手を出すぞ!」
俺は限界だと判断して、加勢しようとした。
「待つんじゃ」
アイラは俺の腕を掴んだ。
その間にもシャルはゴブリンに襲われ、ボロボロになっていく。
「シャルロッテ、助けて欲しいなら『助けてください』と叫べ。じゃが、その時はおぬしの冒険者人生の終わりじゃ! もし、それが嫌なら全力で戦え!」
シャルは少し迷い、そして、
「………………ハヤテさんは私がどんな外見になっても軽蔑しませんか?」
ゴブリンに髪を掴めれていることを気にせず、そんなことを聞く。
「シャルはシャルだ。俺は気にしないよ」
「そうですか……そうですよね。ハヤテさんはそう言うと思ってました」
シャルを抑え込んでいたゴブリン数匹が吹き飛んだ。
ゴブリンを吹き飛ばしたのはシャルの尻尾だった。
それだけじゃない。
シャルの全身には鱗が浮き上がる。
そして、爪と牙。
その見た目はリザードマン、いや、リザードウーマンだった。
「竜化とでもいうべきかの? あの姿を知られたせいでシャルロッテは王宮内で腫物扱いだったようじゃ。それでも国王が守ったから、殺されずに済んでおったがの」
「アイラの角の力なのかい?」
シャルの胸には体が弱かった彼女の命を救うために『アイラの角』が埋め込まれている。
「もちろんじゃ、儂の角に適合した副産物じゃな。儂ほど竜人の力をうまく使えんから、見た目はああなってしまう」
『ジュラディーズ』で出会ったリザードマンとアイラは同種族らしい。
見た目に差を出るのは、魔力の量や操作能力が関係している。
人型に近づくほど、魔力の扱いに長けている。
「まぁ、使いこなせんとはいえ、儂の力を分け与えたんじゃ、ゴブリン程度に負けることはないの」
アイラは断言した。
そして、その言葉通りだ。
「『竜爪』!」
シャルはアイラと同じ技を使った。
殺到していたゴブリンが切り刻まれる。
ゴブリンたちは距離を取るが、そこを今度は遠距離攻撃の『竜弾』が襲う。
シャルに勝てないと判断したゴブリンたちは戦うことを諦めて、逃走する。
「戦い終わったの。もう、手を出していいじゃろ」
アイラと『魔狼の群れ』が逃げるゴブリンを逃がさない。
戦いはあっという間に終結した。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
29
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる