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1日目

第5話 一日目:ラーメン「えびそば 一幻」@新千歳空港

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 新千歳空港「グルメ・ワールド」を一人で見て回っていたときに、親友と行きたいと思った店があった。

 それが、「えびそば 一幻」だ。

 「えびそば 一幻」とは、希少な甘エビの頭を大量に使用した、えびの旨みにこだわり尽くしたこってり系のラーメン屋だ。
 えびとこってりが大好きな私にとって、絶対に外せない店だった。

「ここ行きたい」
「ぽみー、胃は大丈夫なの?」
「大丈夫」

 たとえ大丈夫じゃなかったとしても、行くべきところだここは、と私は心の中で呟いた。

「じゃあ、行こう」

 かつて私は、ラーメンにそこまで興味がなかった。そんな私のラーメン舌を、行く先々で美味しいラーメン屋に連れて行き鍛え上げたのが、この親友である。言うなれば彼女は、私のラーメン師匠なのである。

 真っ赤な器に入った一幻のラーメンが目の前に置かれた。スープを飲むと、濃厚なえびの旨みが口の中に広がった。うまい。えびだ。うまいえびの味がする。

 そして麺を掬い上げ、箸にぶらさがったぶっとい麺を啜る。

「あ"つ”!!」

 熱湯だ。私はこんなにアツアツのラーメンを知らない。熱すぎてなかなか食べられないほどだ。
 太麺はシコシコとコシがあり食べ応えがある。濃厚なスープがよく絡みついて最高だ。

 それからもゆっくり食べ進めていくのだが、今まで食べてきたラーメンと明らかに違う点があった。
 
 それは、いつまで経ってもスープが冷めないことだ。
 ずっとアツアツで、というか熱すぎてハヒハヒ言いながら食べなければならない。今までのラーメンだったらスープがぬるくなってきて苦行になりつつある終盤になっても、先ほど出てきたばかりかと思うほど熱い。

「北海道はスープが冷めないように、スープの表面に油を載せるらしいよ」

 親友の説明に舌を巻いた。北海道の民は天才だ。

 トッピングにおろしにんにくやえび油などがあり、途中からそれをかけて食べたのだが、個人的にはトッピングしないほうがえびスープのうまさが舌にダイレクトに伝わってきて好みだった。
 うまいものに下手な小細工は必要ないということか。くそ、勝てねえ……。
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