いかないで

楠 蓮華

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いかないで

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「ねぇ、璃樹好きです。」

「俺も。だから、海理。」

シタいと耳元で言ってくる璃樹。

恥ずかしいけど嫌じゃないからに小さい声でいいよと呟く。

璃樹壊れ物を扱うかのように優しく僕を抱く。

本当に優しくてそれが、辛くて。

「ンッ」

口内を犯す舌に酔わされてしまいそうだ。

長い口付けの後璃樹は僕のシャツを脱がせにかかる。
 
璃樹はもう脱いでいて僕を脱がせてしまうと首筋に口付けを落とした。

あれ、璃樹ちょっと鍛えてるんだ。

われてるとまでは行かないが引きこもりにしてはしまってる体。

やばい、また惚れる。

これ以上好きになったら自分が辛いだけって分かってるのに。

「なーに考えてんの?集中な?」

「んっ、ごめんなさい。」

璃樹は僕を抱き締めながらのセックスが好きらしい。

僕も好きだ。

でもこの体温がじきに感じられなくなるということが怖くてたまらない。

だから、僕らしい考え方じゃないけど今を楽しもうと思う。

「ね、もう我慢出来ないんです。いれて?」

はやく、はやく貴方を感じたい。

「っ、あんま煽んなよ。もういいの?」

「はい、きて」

璃樹の熱が僕を貫く。

引き攣るような痛みより、強烈な違和感より、何より僕はこの瞬間が幸福だった。

「璃樹、、」

「なに?海理」

なんでこんなときだけそんな優しい声出すの。

「おねがい、ずっと、「だめ。今はこっちね」」

哀しそうに人差し指を僕の唇に当てる璃樹にうなずきを返すことしか出来ない。

璃樹が僕の前立腺を抉るように腰を振る。

「アッ、アッ、んイイよぉ、」

もう言葉なんて紡げない。

気持ちよくてしょうがない。

涙が流れる。

ねえおねがいこの涙には気づかないで。

快楽からくるそれに紛らせてあなたへの気持ちを。

「すきっ、あいしてます、璃樹っ」

「俺も。愛してるよ。」

そろそろだ

と思う。

「でも、ごめんなもう、還らなきゃ。」

夢が、覚めていく。

いかないでという僕言葉は声にならずそのまま空に吸い込まれた。
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