女たちは言う。イケメン、美男子、美青年と。

でぃくし

文字の大きさ
12 / 49

伯父さんの秘密、たかしの内緒

しおりを挟む
地下室の一件から数か月後、たかしが屋敷に来てから一年が経とうとしていた。
結論から言えば、その後のたかしはあまり変わらないように見えた。

外見的には少し色白になり、顕著なものとしては牙が伸びた、とせいぜいその程度の変化だ。
しかし、たかしの牙は純血の吸血鬼とは異なり自由に収納することができなかったので、牙を隠すように笑うことが癖になっているように見えた。

そして彼は傲慢な性格をのぞかせるようになったが、そんなことはたかしの年齢的に仕方のないものであり、そもそも自分の若い頃や彼の母親に比べると遥かに大人しい方だと伯父さんは思った。

(たった一年足らずで……なんという才能だ……これほどの力を持つ者があの時、一人でもいてくれれば結果は変わっていただろうに……)

たかし本人に直接言うようなことはしなかったが、たかしはまさしく規格外で彼の力は伯父さんが知る中でも最強の吸血鬼を明らかに凌駕するものとなっていた。

「ふぅ……」

伯父さんは深いため息をつくと、黒光りする獅子の彫刻に彩られた黒檀のベッドに体を預け、天井を眺める。

(……お前に嫌われても仕方ないな)

しばらく見ていると天井の染みがまるで人間の顔のように見えた。その表情はどこか悲しげで、自分のことを責めているように感じた。

全てはたかしのため、そして自分のためだ。

伯父さんは甥を施設に預けた後も、ずっと監視を送り続けていた。
妹の仇を取りたいという気持ち、そして自分の力を奪い去った者への復讐心。それが彼を突き動かしていた。

「たかしだってきっと怒るだろう……」

伯父さんは天井の顔を見つめたまま、ぽつりと呟く。

たかしがまだ小さい頃、彼の周囲で次々と不幸が続いたのも、美しい彼を人間の邪な気持ちから守るためのものだったのだ。
人々が大怪我を負ったのも、教師を自殺に追いやったのも、仕事を首にさせたのも、そして眠ったままの力を無理やりに開花させようとしたことも、すべてはたかしのためなのだ。

誇り高き血族として、我々は偉大な存在であらねばならない。

甥が無能な人間として生きていると聞かされて最初は愕然とした。自分の手で殺してやろうとすら思った。

死にたい。

だが、妹の面影が残る青年にそう告げられた時、悲しみで胸が張り裂けそうになった。

伯父さんは目を閉じる。

まぶたの裏に浮かぶ妹の顔はもう長いこと笑ってはいない。
自分がしていたことが正しいのか、間違っていたのか、もう彼にはわからない。

だが、我々は人間とは違うのだ。

吸血鬼としてたかしはこれから先、数多の存在を従えて、数々の偉業を成し遂げられるはずなのだ。
そうすればいつかまた……。

そこまで考えると、彼の意識は闇の中へと溶けて行った。

⋱♱⋰ ⋱✮⋰ ⋱♱⋰ ⋱✮⋰ ⋱♱⋰ ⋱✮⋰ ⋱♱⋰

「ねぇ、たかし……パパにバレないようにしてよ……絶対殺されちゃうから……」
「あの伯父さんが俺のこと殺すわけないだろ」

たかしは従姉妹の髪を撫でながら、彼女の言葉を軽く笑い飛ばす。

いつの間にかたかしと伯父さんの娘は肌を重ね、二人は互いの温もりを感じながら愛を囁き合う関係になっていた。
たかしは自惚れが顔をのぞかせるようになっていたが、それでも彼は伯父さんのことを慕い、尊敬し続けているようだった。

「でも……」

たかしは唇を重ね、従姉妹の言葉を遮る。

それは愛情を確かめるための行為というよりは、互いの生存を確認する儀式のようなものだ。
従姉妹はたかしの知らない伯父さんの恐ろしさをよく知っているようだった。

「……油断しない方がいいって……もしあんたが私のことを裏切ったら、パパは絶対にあんたのこと殺そうとするから……」
「んなこと……」

「あるってば!!だって、ほら!!」

従姉妹は怯えた顔を見せながら、たかしの背後を指さす。

「えっ、ちょっ!嘘だろ?!」

慌ててシーツから上半身を起こすと、そこには予想に反して何もなかった。呆然としていると背後から従姉妹のくすくすという笑い声が聞こえてくる。

「ほーら、めっちゃびびってんじゃん」
「……別にびびってねーよ」

「……」
「……」

「……ねえ、たかしって来週から働き始めるんだよね?」
「ああ……」
「仕事が落ち着いたら絶対迎えにきてよ」
「当たり前だろ」
「連絡は毎日すること!電話もメールもするから」
「わかったよ」

「ちゃんと約束してよ」
「約束する」

「……私のこと裏切ったらパパが怒るから」
「……わかってるよ」
「うん……なら今日はもっと優しくして」

二人は体を寄せ合い、互いの存在を確かめ合う。

従姉妹は名残惜しそうな表情を浮かべながら、たかしの首筋に牙を立てる。なぜなら二人は吸血鬼だから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママはヤンママ女子高生! ラン&ジュリー!!

オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
キャラ文芸
神崎ラン(♂)の父親の再婚相手は幼馴染みで女子高生の高原ジュリー(♀)だった。 ジュリーは金髪美少女だが、地元では『ワイルドビーナス』の異名を取る有名なヤンキーだった。 学校ではジュリーは、ランを使いっ走りにしていた。 当然のようにアゴで使われたが、ジュリーは十八歳になったら結婚する事を告白した。 同級生のジュリーが結婚するなんて信じられない。 ランは密かにジュリーの事を憧れていたので、失恋した気分だ。 そう言えば、昨夜、ランの父親も再婚すると言っていた。 まさかとは思ったが、ランはジュリーに結婚相手を聞くと、ランの父親だと判明した。  その夜、改めて父親とジュリーのふたりは結婚すると報告された。 こうしてジュリーとの同居が決まった。 しかもジュリーの母親、エリカも現われ、ランの家は騒然となった。  

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...