41 / 49
俺たちはチームなんだ
しおりを挟む
「けぽふっ、生ビールおいしーっす!」
そろそろあたけに聞いてみるか。
そう、吸血鬼としてのあたけの核心に迫る質問だ。
「あたけ、好きな肉はあるか?」
「ええっ?なんだよ急に、いきなり言われてもなあ~……」
「うっす!先輩、ジョッキが空っぽになっちゃたっす!もっともっとお酒飲みたいっす!」
「ありちゃん、勝手に注文しておいていいよ」
「まあ全体的に肉なら何でもいいけどハンバーグとかかな」
「それは料理だろ」
「難しいから先輩に注文して欲しいっす!」
「いや料理だけどさ、だっていきなり好きな肉とか言われても、うーん牛肉……?」
「先輩!注文やって欲しいっす!お酒お酒!」
「レバーが好きだったりはしないのか?ステーキの焼き加減とかはどうなんだ?やっぱりレアとか」
「飲みたい!あたしお酒飲みたいっす!うっす!」
「な、なあたかし……ありちゃんが困ってるよ」
「やってやって!ぎゃん!先輩!注文やって!やーって!!」
「ありちゃん」
たかしはにっこりと完璧な笑顔で微笑んだままだ。
それでも彼の真っ直ぐした眼差しに心臓をわし掴みにされたような感覚に襲われたありちゃんは、即座に笑顔を作って応じる。
まるで悪戯をして親オオカミに睨まれてしまった子オオカミだ。
「う、う~……っ、うっす!」
「お酒、美味しかったんだね」
「……うす」
「じゃあ一緒に注文して覚えようか?」
「うう~っ……難しいっす」
「ありちゃん、これは狩りだよ」
「狩り?」
「そうだ、俺の財布やこの焼き肉屋から肉を狩るという……狩りなんだ」
「うー……?」
(ありちゃん、酔っぱらうと二倍くらいわがままになるんだな)
人狼はアルコールに弱いのか。
それともありちゃんがたまたまアルコールに弱いのか。
どちらにせよありちゃんにお酒はあまり飲ませない方がいいかもしれない。
いや、酒で酔うようなら潰れるまで飲ましてやれば、あたけとゆっくり話すことができるかも知れない。たかしはぴっぴっするヤツ(オーダー用タブレット)を手に取ると、ありちゃんの傍らで丁寧に操作方法を解説する。
「こうして、こうして、こう」
「こうっすか?」
「いや、こうして、こうして、こう」
「このアイスクリーム美味しそうっす!」
「じゃあ一緒に注文しようか」
「うっす!」
「では……こうして、こうして、こう」
たかしはにこにこと根気よくありちゃんに操作を説明する。
ありちゃんの頬がすっかり桜色に染まっているのはアルコールのせいばかりではないだろう。
(うっす!先輩の格好いい声を録音して勉強したいっす~!)
やがてありちゃんが操作方法をマスターするとたかしは花をまとうようなスタイリッシュかつ謎の動きを繰り出しながら席に戻り、あたけへの質問を再開する。
「生レバーは好きか?血の滴る肉とかは?」
「い、いや、だからなんなんだよその質問!まあ嫌いじゃないけど大好きだってほどじゃないな……」
そこまで言うとあたけは落ち着きなく左右を見回し、たかしの耳元でささやくように答える。
「つーかお前、なんか聞きにくいことを聞きたいんだろ?」
「まあな……」
「いいけど、こういう人の多い店で聞くなよ。ありちゃんだっているんだし……」
あたけのためにもお互いさっさと共有しておいた方がいいかもしれないが、とはいえ確かに、あたけの言う通りかもしれない。
「すまない。お前の言う通りだ。それに伯父さんにも聞くなと言われていたことだからな……」
「ん?もしかして吸血鬼関係のこと?」
「ん、ん、ああ、まあ……」
「いや、そんな心配しなくてもさあ、俺もやることやってるから……」
たかしが曖昧に答えると、あたけは焦ったように後頭部を掻いて言葉を濁す。
「そうか、悪かった」
「いやいいよ、俺だっていざとなったらお前に相談したいし……」
「ああ、俺たちは……」
「「友達だからな」」
二人の声がハモる。
たかしとあたけは軽く拳を合わせると、お互いににやりと微笑んだ。
ありちゃんは黙ったままだ。
お酒も飲まずにぴっぴっするヤツを真剣な表情でいじりまわしている。
やがてありちゃんがふぅとため息をつきながらタブレットをテーブルに戻すとすぐにそれはやって来た。
気がついたあたけが口を開く。
「なんだ?サプライズイベントかなんかか?」
「え……」
たかしが視線を移すと、厨房の奥から15人くらいの従業員たちががらがらとワゴンを引いてやって来るのがわかった。
ワゴンには切り揃えられた肉の塊がいくつも載っており、山盛り肉のどんぶり飯や骨付きステーキはもうもうと煙を上げている。
もちろん肉だけではない、酒類やデザートまで山積みだ。
ビール、ワイン、芋焼酎、純米酒、ウィスキーなどなどが並々と注がれたガラスの容器が乗せられており、チーズケーキやバニラアイス、ティラミスといった定番の デザートから、つぶつぶシャキシャキとした食感が嬉しいみかんと和梨のパフェ、濃厚で刺激的なゴルゴンゾーラがクセになる贅沢レアチーズケーキなどの『焼肉屋びばぐりる』ならでのメニューがたくさん皿に盛られていた。
「うっす!来たっすよ先輩!」
「……」
キラキラと目を輝かせるありちゃんとは対照的にあたけは渋い顔でちらりとたかしを見る。
「来ちゃったよたかし」
「……来たか」
「たかし……これ……俺も払おうか?」
「いや、いい……ありがとう」
(ありちゃんに勝手に注文していいと言ったのは俺だしな……)
あたけの厚意は有難いが、ここはリーダーとしての意地がある。
(……俺たちはチームなんだ)
先ほどありちゃんを少し邪険に扱ってしまったことを反省しながら、たかしはジョッキを傾けるのであった。
そろそろあたけに聞いてみるか。
そう、吸血鬼としてのあたけの核心に迫る質問だ。
「あたけ、好きな肉はあるか?」
「ええっ?なんだよ急に、いきなり言われてもなあ~……」
「うっす!先輩、ジョッキが空っぽになっちゃたっす!もっともっとお酒飲みたいっす!」
「ありちゃん、勝手に注文しておいていいよ」
「まあ全体的に肉なら何でもいいけどハンバーグとかかな」
「それは料理だろ」
「難しいから先輩に注文して欲しいっす!」
「いや料理だけどさ、だっていきなり好きな肉とか言われても、うーん牛肉……?」
「先輩!注文やって欲しいっす!お酒お酒!」
「レバーが好きだったりはしないのか?ステーキの焼き加減とかはどうなんだ?やっぱりレアとか」
「飲みたい!あたしお酒飲みたいっす!うっす!」
「な、なあたかし……ありちゃんが困ってるよ」
「やってやって!ぎゃん!先輩!注文やって!やーって!!」
「ありちゃん」
たかしはにっこりと完璧な笑顔で微笑んだままだ。
それでも彼の真っ直ぐした眼差しに心臓をわし掴みにされたような感覚に襲われたありちゃんは、即座に笑顔を作って応じる。
まるで悪戯をして親オオカミに睨まれてしまった子オオカミだ。
「う、う~……っ、うっす!」
「お酒、美味しかったんだね」
「……うす」
「じゃあ一緒に注文して覚えようか?」
「うう~っ……難しいっす」
「ありちゃん、これは狩りだよ」
「狩り?」
「そうだ、俺の財布やこの焼き肉屋から肉を狩るという……狩りなんだ」
「うー……?」
(ありちゃん、酔っぱらうと二倍くらいわがままになるんだな)
人狼はアルコールに弱いのか。
それともありちゃんがたまたまアルコールに弱いのか。
どちらにせよありちゃんにお酒はあまり飲ませない方がいいかもしれない。
いや、酒で酔うようなら潰れるまで飲ましてやれば、あたけとゆっくり話すことができるかも知れない。たかしはぴっぴっするヤツ(オーダー用タブレット)を手に取ると、ありちゃんの傍らで丁寧に操作方法を解説する。
「こうして、こうして、こう」
「こうっすか?」
「いや、こうして、こうして、こう」
「このアイスクリーム美味しそうっす!」
「じゃあ一緒に注文しようか」
「うっす!」
「では……こうして、こうして、こう」
たかしはにこにこと根気よくありちゃんに操作を説明する。
ありちゃんの頬がすっかり桜色に染まっているのはアルコールのせいばかりではないだろう。
(うっす!先輩の格好いい声を録音して勉強したいっす~!)
やがてありちゃんが操作方法をマスターするとたかしは花をまとうようなスタイリッシュかつ謎の動きを繰り出しながら席に戻り、あたけへの質問を再開する。
「生レバーは好きか?血の滴る肉とかは?」
「い、いや、だからなんなんだよその質問!まあ嫌いじゃないけど大好きだってほどじゃないな……」
そこまで言うとあたけは落ち着きなく左右を見回し、たかしの耳元でささやくように答える。
「つーかお前、なんか聞きにくいことを聞きたいんだろ?」
「まあな……」
「いいけど、こういう人の多い店で聞くなよ。ありちゃんだっているんだし……」
あたけのためにもお互いさっさと共有しておいた方がいいかもしれないが、とはいえ確かに、あたけの言う通りかもしれない。
「すまない。お前の言う通りだ。それに伯父さんにも聞くなと言われていたことだからな……」
「ん?もしかして吸血鬼関係のこと?」
「ん、ん、ああ、まあ……」
「いや、そんな心配しなくてもさあ、俺もやることやってるから……」
たかしが曖昧に答えると、あたけは焦ったように後頭部を掻いて言葉を濁す。
「そうか、悪かった」
「いやいいよ、俺だっていざとなったらお前に相談したいし……」
「ああ、俺たちは……」
「「友達だからな」」
二人の声がハモる。
たかしとあたけは軽く拳を合わせると、お互いににやりと微笑んだ。
ありちゃんは黙ったままだ。
お酒も飲まずにぴっぴっするヤツを真剣な表情でいじりまわしている。
やがてありちゃんがふぅとため息をつきながらタブレットをテーブルに戻すとすぐにそれはやって来た。
気がついたあたけが口を開く。
「なんだ?サプライズイベントかなんかか?」
「え……」
たかしが視線を移すと、厨房の奥から15人くらいの従業員たちががらがらとワゴンを引いてやって来るのがわかった。
ワゴンには切り揃えられた肉の塊がいくつも載っており、山盛り肉のどんぶり飯や骨付きステーキはもうもうと煙を上げている。
もちろん肉だけではない、酒類やデザートまで山積みだ。
ビール、ワイン、芋焼酎、純米酒、ウィスキーなどなどが並々と注がれたガラスの容器が乗せられており、チーズケーキやバニラアイス、ティラミスといった定番の デザートから、つぶつぶシャキシャキとした食感が嬉しいみかんと和梨のパフェ、濃厚で刺激的なゴルゴンゾーラがクセになる贅沢レアチーズケーキなどの『焼肉屋びばぐりる』ならでのメニューがたくさん皿に盛られていた。
「うっす!来たっすよ先輩!」
「……」
キラキラと目を輝かせるありちゃんとは対照的にあたけは渋い顔でちらりとたかしを見る。
「来ちゃったよたかし」
「……来たか」
「たかし……これ……俺も払おうか?」
「いや、いい……ありがとう」
(ありちゃんに勝手に注文していいと言ったのは俺だしな……)
あたけの厚意は有難いが、ここはリーダーとしての意地がある。
(……俺たちはチームなんだ)
先ほどありちゃんを少し邪険に扱ってしまったことを反省しながら、たかしはジョッキを傾けるのであった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママはヤンママ女子高生! ラン&ジュリー!!
オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
キャラ文芸
神崎ラン(♂)の父親の再婚相手は幼馴染みで女子高生の高原ジュリー(♀)だった。
ジュリーは金髪美少女だが、地元では『ワイルドビーナス』の異名を取る有名なヤンキーだった。
学校ではジュリーは、ランを使いっ走りにしていた。
当然のようにアゴで使われたが、ジュリーは十八歳になったら結婚する事を告白した。
同級生のジュリーが結婚するなんて信じられない。
ランは密かにジュリーの事を憧れていたので、失恋した気分だ。
そう言えば、昨夜、ランの父親も再婚すると言っていた。
まさかとは思ったが、ランはジュリーに結婚相手を聞くと、ランの父親だと判明した。
その夜、改めて父親とジュリーのふたりは結婚すると報告された。
こうしてジュリーとの同居が決まった。
しかもジュリーの母親、エリカも現われ、ランの家は騒然となった。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる