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第三話
触れ合い
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日が落ちて、ヨンクの空は静かだった。まるで、あの嵐のような戦が嘘だったかのように。
けれど、嵐はまだ、終わっちゃいない。
長老会での決定を終えた俺は、屋敷に戻るとまず最初にノーラの部屋を訪ねた。
扉を軽く叩くと、すぐに「どうぞ」という声が返ってきた。
「エルド様……お疲れ様です」
ベッドの脇、刺繍道具を抱えていたノーラが顔を上げる。淡い灯りに照らされたその頬には、少しだけ疲れが浮かんでいた。
「少し……話がある」
静かに言うと、ノーラは何かを察したように道具を置いて、俺の目をまっすぐに見た。
「……戦が、始まるんですね?」
彼女の声は震えていなかった。けれど、その奥には確かに、怯えと悲しみがあった。
「……ああ。王国が兵を動かした。俺たちは、それを迎え撃つ。だが、仕掛けたのはあいつらだ。連合の民を守るためには、戦わなきゃならねぇ」
ノーラは、膝の上でそっと手を握りしめた。
「私の……せい、ですよね。私がここに来なければ、こんなことには……」
その言葉に、俺は一歩前に出て、彼女の手を両手で包み込んだ。
「違う。ノーラ、お前は何も悪くない。これはな……連合を見下して、好き勝手やってきた王国が、ついに自分で引いた引き金だ。お前の存在は……ただの、きっかけにすぎねぇ」
ノーラは、驚いたように目を見開いた。
「俺たちは今まで、王国の無茶にずっと耐えてきた。要求される資源、勝手な通行、都合のいい法令の押しつけ……全部、我慢して飲み込んできた。だが、もう終わりだ」
俺は視線をまっすぐに彼女へと戻す。
「それにな、ノーラ。戦おうって決めたのは、連合の皆だ。お前一人の責任なんかじゃない。お前が何もしていなくても俺は、必ず立ち上がっていたさ」
ノーラの瞳に、また涙が浮かぶ。それでも、今度はもう下を向かなかった。
俺がノーラの頬に手を添えると、ノーラは嬉しそうにその手に顔を寄せてくれる。
「エルド様……」
「ノーラ。お前を守るのは、俺の勤めだ。夫の……いや、戦鬼エルド・カレヴィとしての、俺の責任だ。だから帰りを待っていてくれ。お前が後にいてくれれば、俺は絶対に負けない」
そう言って、そっと彼女の髪を撫でた。
こうやって少しずつ触れ合う時間ができるようになってきた。
初めての女性にどうやって接すのかわからなかったが、それでも少しずつ。二人の距離は近くなっていると思える。
「誰が敵でもいい。王国でも、世界でも。俺は、お前を守るためなら……全部、叩き潰してやる」
その言葉に、ノーラは涙をこぼしながらも、小さく頷いた。
「はい。信じてます。……あなたを、信じてます。ですが、どうかご無事で」
「……ありがとう」
ノーラがそのまま俺の胸に額を当てて、俺は彼女の頭を優しく抱き止めた。
鼓動を聞かれながら、静かに重なったまま、夜が更けていった。
戦の始まりは、すぐそこにある。
だが、守るものがある限り、俺は、絶対に負けない。
けれど、嵐はまだ、終わっちゃいない。
長老会での決定を終えた俺は、屋敷に戻るとまず最初にノーラの部屋を訪ねた。
扉を軽く叩くと、すぐに「どうぞ」という声が返ってきた。
「エルド様……お疲れ様です」
ベッドの脇、刺繍道具を抱えていたノーラが顔を上げる。淡い灯りに照らされたその頬には、少しだけ疲れが浮かんでいた。
「少し……話がある」
静かに言うと、ノーラは何かを察したように道具を置いて、俺の目をまっすぐに見た。
「……戦が、始まるんですね?」
彼女の声は震えていなかった。けれど、その奥には確かに、怯えと悲しみがあった。
「……ああ。王国が兵を動かした。俺たちは、それを迎え撃つ。だが、仕掛けたのはあいつらだ。連合の民を守るためには、戦わなきゃならねぇ」
ノーラは、膝の上でそっと手を握りしめた。
「私の……せい、ですよね。私がここに来なければ、こんなことには……」
その言葉に、俺は一歩前に出て、彼女の手を両手で包み込んだ。
「違う。ノーラ、お前は何も悪くない。これはな……連合を見下して、好き勝手やってきた王国が、ついに自分で引いた引き金だ。お前の存在は……ただの、きっかけにすぎねぇ」
ノーラは、驚いたように目を見開いた。
「俺たちは今まで、王国の無茶にずっと耐えてきた。要求される資源、勝手な通行、都合のいい法令の押しつけ……全部、我慢して飲み込んできた。だが、もう終わりだ」
俺は視線をまっすぐに彼女へと戻す。
「それにな、ノーラ。戦おうって決めたのは、連合の皆だ。お前一人の責任なんかじゃない。お前が何もしていなくても俺は、必ず立ち上がっていたさ」
ノーラの瞳に、また涙が浮かぶ。それでも、今度はもう下を向かなかった。
俺がノーラの頬に手を添えると、ノーラは嬉しそうにその手に顔を寄せてくれる。
「エルド様……」
「ノーラ。お前を守るのは、俺の勤めだ。夫の……いや、戦鬼エルド・カレヴィとしての、俺の責任だ。だから帰りを待っていてくれ。お前が後にいてくれれば、俺は絶対に負けない」
そう言って、そっと彼女の髪を撫でた。
こうやって少しずつ触れ合う時間ができるようになってきた。
初めての女性にどうやって接すのかわからなかったが、それでも少しずつ。二人の距離は近くなっていると思える。
「誰が敵でもいい。王国でも、世界でも。俺は、お前を守るためなら……全部、叩き潰してやる」
その言葉に、ノーラは涙をこぼしながらも、小さく頷いた。
「はい。信じてます。……あなたを、信じてます。ですが、どうかご無事で」
「……ありがとう」
ノーラがそのまま俺の胸に額を当てて、俺は彼女の頭を優しく抱き止めた。
鼓動を聞かれながら、静かに重なったまま、夜が更けていった。
戦の始まりは、すぐそこにある。
だが、守るものがある限り、俺は、絶対に負けない。
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