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第六話
四災 白瞳のネル 3
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目の前の少女。
否、《異形》ネルは、膝をつき、頭を垂れた。
白い瞳に映るのは、血も魔も理も超えた世界の理。
そして、そこに確かにいる。
「……私は八災のうちの一災。人の理に逆らい、生きる理由すらも歪んだ存在」
彼女の声は淡々としていた。
けれど、そこにはただの異形ではない、どこか人に似た感情の影が差していた。
「ですが……あなたは、それでもこの地を守った。命を選び、炎を止め、毒を凌ぎ、なお未来へ手を伸ばそうとする」
ネルは顔を上げた。
夜明けの光がその白瞳をかすかに照らす。
「ならば、私はあなたを見たい。だから従いましょう」
「……従う?」
「はい。私の観察は、すでに限界に近い。この世界を壊すためではなく、見届けるために私は存在していたい」
彼女の手がゆっくりと自らの胸に触れた。
「けれど、終わりは来る。私が、何者かであり続ける限り、この世界にとっての毒であり続けるでしょう」
俺は言葉を失っていた。
だが、ネルは静かに続けた。
「だから、契約を申し出ます。あなたに従うかわりに……あなたの手で、最後には私を滅ぼしてください」
「……っ」
「それが、私がこの世界に触れ、意味を得て、命の終わりを選ぶ唯一の救済です」
風が吹いた。焼けた大地に、白い髪がなびく。
「あなたに殺されるために、私は従う。だからこそ、全てを捧げられるのです」
まるで、それは祈りのような声音だった。
八災の一つとして生まれ、ただこの世界を見つめ、意味を求め続けた存在。
彼女の選択は、俺という人間に託された。
「ネル……」
「ご命令を」
ネルは、地面に膝をつき、両手を胸の前に揃えた。
「ここに、主従契約を結びます。私はあなたの従者となり、あなたの命を第一とし、あなたの盾となり、刃となりましょう。そして、あなたが終わりを望むそのとき、私の命を捧げます」
俺は、剣を抜いた。
儀式のように、彼女の肩へ刃の背を当てる。
これが、主従の誓いだ。
「……ならば、命じる」
俺は深く息を吐き、言葉を刻む。
「ネル、お前はこれより俺の影となり、俺の命のために戦え。そして……その魂の終わりは、必ず俺が引き受ける」
「はい。エルド・カレヴィ様」
ネルの白い瞳に、かすかに喜びが宿ったように見えた。
そうして、異形と人との契約が、静かに結ばれた。
それは共に生きる誓いであり、やがて訪れる別れの約束でもあった。
彼女との契約を結んだ際に、俺はネルを終わらせる時は、自分の終わりでもあるように感じられた。
それは異形という不思議な存在との理から外れた者との契約に思えた。
否、《異形》ネルは、膝をつき、頭を垂れた。
白い瞳に映るのは、血も魔も理も超えた世界の理。
そして、そこに確かにいる。
「……私は八災のうちの一災。人の理に逆らい、生きる理由すらも歪んだ存在」
彼女の声は淡々としていた。
けれど、そこにはただの異形ではない、どこか人に似た感情の影が差していた。
「ですが……あなたは、それでもこの地を守った。命を選び、炎を止め、毒を凌ぎ、なお未来へ手を伸ばそうとする」
ネルは顔を上げた。
夜明けの光がその白瞳をかすかに照らす。
「ならば、私はあなたを見たい。だから従いましょう」
「……従う?」
「はい。私の観察は、すでに限界に近い。この世界を壊すためではなく、見届けるために私は存在していたい」
彼女の手がゆっくりと自らの胸に触れた。
「けれど、終わりは来る。私が、何者かであり続ける限り、この世界にとっての毒であり続けるでしょう」
俺は言葉を失っていた。
だが、ネルは静かに続けた。
「だから、契約を申し出ます。あなたに従うかわりに……あなたの手で、最後には私を滅ぼしてください」
「……っ」
「それが、私がこの世界に触れ、意味を得て、命の終わりを選ぶ唯一の救済です」
風が吹いた。焼けた大地に、白い髪がなびく。
「あなたに殺されるために、私は従う。だからこそ、全てを捧げられるのです」
まるで、それは祈りのような声音だった。
八災の一つとして生まれ、ただこの世界を見つめ、意味を求め続けた存在。
彼女の選択は、俺という人間に託された。
「ネル……」
「ご命令を」
ネルは、地面に膝をつき、両手を胸の前に揃えた。
「ここに、主従契約を結びます。私はあなたの従者となり、あなたの命を第一とし、あなたの盾となり、刃となりましょう。そして、あなたが終わりを望むそのとき、私の命を捧げます」
俺は、剣を抜いた。
儀式のように、彼女の肩へ刃の背を当てる。
これが、主従の誓いだ。
「……ならば、命じる」
俺は深く息を吐き、言葉を刻む。
「ネル、お前はこれより俺の影となり、俺の命のために戦え。そして……その魂の終わりは、必ず俺が引き受ける」
「はい。エルド・カレヴィ様」
ネルの白い瞳に、かすかに喜びが宿ったように見えた。
そうして、異形と人との契約が、静かに結ばれた。
それは共に生きる誓いであり、やがて訪れる別れの約束でもあった。
彼女との契約を結んだ際に、俺はネルを終わらせる時は、自分の終わりでもあるように感じられた。
それは異形という不思議な存在との理から外れた者との契約に思えた。
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