俺の嫁が可愛すぎるので、とりあえず隣国を滅ぼすことにした。

イコ

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第七話

決意の怒り

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 戦場の空気が変わった。

 味方の咆哮、王国軍の悲鳴。突撃の号令と共に、毒を祓われた兵たちが再び剣を手に取り、陣形を整え始める。

 俺とモルテの斬撃が前線をこじ開け、ネルとレドが後方の浄化と指揮支援に回る。

 王国軍の旗が揺れた。

 敵将が指示を出す声が響く。

「前衛、持ちこたえろ! まだ数で押せる!」

 だが、もう遅い。

 こちらには俺が戻った。

 剣を握り直し、再度跳躍する。高く、鋭く。

 俺は誰にも指示をしない。先頭に立って戦うだけだ。

 真上から叩き込んだ一撃が、王国軍の指揮官の陣を真っ二つに裂いた。

 兵士たちが慌てて後退を始める。

「くそっ……戦鬼が来たぞ! 退け! 退けええッ!」

 後衛の魔導師部隊が一斉に転移陣を展開する。

 遅い。これまで仲間たちを傷つけた分の報いを受けよ。

「なっ! どうしてだ。毒も魔法も、剣も通じない!!!」
「やめてくれ!」
「うわ~!!」

 悲鳴をあげる者たちを蹂躙する。
 
 彼らは、自分たちが狩られるなど思っていなかったのだろう。

 王国軍が撤退していく。

 人の壁を作り、己の命だけを逃すために。

 俺は王国の兵士たちに剣を振るう。

 それは悪鬼と呼ばれようと、我が国を襲ったことを後悔させてやる。

 王国軍が退却したのを見届けて、医療区画へ帰ってきた。

 薄暗い空間の奥、簡素な寝台の上に、彼女はいた。

「ノーラ!」

 毒により衰弱した者たちを看病している彼女。

 俺が歩み寄る気配に、彼女がゆっくりと顔を上げる。

「……エルド様?」

 かすれた声だった。けれど、確かに彼女の声だった。

 俺は、膝をついて、彼女の手をそっと握った。

「戻った。……遅くなって、すまない」

 ノーラの瞳から、涙がこぼれる。
 震える指が、俺の顔を抱きしめた。

「来て……くれたんですね……信じておりました……」
「ああ、お前の声が、俺をここまで引き戻してくれた」

 その一言で、ノーラは堰を切ったように泣き出した。
 嗚咽混じりに、彼女は言葉を吐き出す。

「私……何もできなかった。守れなかったです。毒にやられて……剣も、握れなくて……!」
「それでも、生きていた。それで十分だ」

 俺は強く、彼女の手を握った。

「生きていてくれた。それが、今の俺には……一番、救いだった」

 しばし、ふたりは言葉を交わさず、ただ手を繋いだまま、時間が流れた。

 そして俺は、心に誓う。

 もう二度と、彼女を、仲間を、町を――奪わせはしない。

 王国は卑劣な方法を使う奴らだ。

 数で、毒で、倫理など何もない獣だ。

「ノーラ、俺は覚悟を決めたよ」
「エルド様?」
「俺は、王国を滅ぼして、王になる」

 俺の言葉にノーラは涙を止めて、驚いた顔をする。

 ここまでしてきた相手を許せるはずがない。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 あとがき

 どうも作者のイコです。

 第七章は以上になります。
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