お気楽公爵家の次男に転生したので、適当なことを言っていたら英雄扱いされてしまった。

イコ

文字の大きさ
117 / 153
第四話

異端者たちの観察

しおりを挟む
《side 魔神メイギス》

 広場に集まった人々の歓声が耳に心地いい。

 一番高い建物の一番高い場所で、ボクはとても楽しい光景を目の当たりにしている。

 たくさんの人々が、少年の言葉に耳を傾ける光景はとても素晴らしい。

 その光景を悠然と眺めているのは本当に楽しいことだ。

 学園都市の住民たちが、フライ・エルトールと名乗った少年の言葉に心を動かされ、彼らの熱気が、一つの塊になり結束を生み出す。

 全て美しくて、そして滑稽でたまらない。

「これが『絆』ってやつか……面白いものだね」

 ボクは軽く笑いながら呟く。少年の演説は、とても耳障りがいい。言葉の裏に真摯さがありながらも、どこか軽やかで、それが人々を惹きつけるのだろう。

「おい、メイギス。何を笑っていやがる? あの連中は俺たちを見つけようとしているんだぞ!」
「うるさいよ。バーサク」

 苛立った声が背後から聞こえて、ボクはうんざりして振り返る。

 今回の一件で、協力者と同行している魔術師であるバーサクが腕を組んでボクを睨んでいる。その目は怒りに燃えているようだった。

「そんな余裕ぶっこいてる場合じゃねえだろう。奴らが動き出したらどうするんだ?」

 彼が常に怒りを表しているのは、不安を隠すためなのだろう。バーサクなんて大層な名前を持っているくせにとても臆病な男だ。

「ふふ、バーサク。焦らなくてもいいんだよ。あのフライとかいう少年は確かに面白いけど、ボクたちに直接危害を加えるほどの力はない。むしろ、ああいう連中を観察するのは楽しいじゃないか」

 ボクは微笑みながら答えたが、バーサクは眉間に皺を寄せるばかりだ。

「お前は常に遊び感覚でやってるんじゃないだろうな?」
「遊び……か。まあ、そう思われても仕方ないかもね。でも、ボクにとってはこれが『日常』なんだよ。千年も生きているとさ、楽しいことを見つけるのも一苦労なんだよ」
「けっ! 何が魔神メイギスだ! 眉唾もんだぜ」
「君に信じてもらえなくても痛くも痒くもないけどね」

 ボクはバーサクから視線を外して、フライ少年を見る。

 聖痕も、魔術も持たない何もない少年。だけど、不思議な魅力を秘めた少年に、どこか心惹かれてしまう。

「メイギスさん……でも、本当に大丈夫なんでしょうか?」

 今度は、不安そうな声で少女が話しかけてきた。彼女の名はエフェミア。ボクたちの仲間だが、バーサクとは対照的に臆病で可愛らしい性格をしている。

「大丈夫だよ。君が心配する必要はないよ」

 ボクは彼女に優しく微笑みかけた。

「でも……学園都市の人たち、あんなに団結していて……もし私たちを見つけたら……」
「見つけられないさ。彼らには『見えないもの』を感じ取る力なんてない。ボクたちの存在は、あのフライ君にだって気づけないよ」

 そう言いながら、ボクは再び広場に目を向けた。フライ少年が手を挙げ、人々の歓声を受けながら微笑んでいる。

 彼は、まるで英雄のようだ。

「……けど、ああいう奴がいるからこそ、時代は動く。ふふ、本当に何度見ても面白いんだ」
「何が面白いんだよ? あいつらは俺たちの邪魔をするだけのガキだろうが!」

 バーサクが苛立たしげに声を上げるが、ボクは気にも留めない。むしろ、その苛立ちが可笑しくて、つい笑ってしまう。

「ガキ……ね。確かに若いけど、フライ君には何か特別なものを感じるんだよね。ボクと同じで『千年』を生きることはないだろうけど、それでも彼の輝きは一瞬でも強烈だ。眩しいよね、ああいう存在って」
「メイギスさん、それって……」

 エフェミアが不安そうに問いかけてくる。彼女は、フライ君も、聖痕や魔術に選ばれた者ではないかと不安に思っているんだろうね。

 だけど、それは違う。彼は至って平凡で、普通の人だ。

「違うよ。ボクたちはとは違う。平凡で、普通の子供だよ。ただの興味だよ、エフェミア。それに、彼らがどうやってこの街を守ろうとするのか、それを見届けるのは悪くない。魔導士では、魔術師を止めることはできない。それは君たちがよくわかっているんじゃないかな? 暴走のバーサク。短命のエフェミア」

 ボクは二人の魔術名を口にしながら、再び笑みを浮かべる。

 広場では、フライが演説を終えて、立ち去っていくところだった。彼の周囲に集まった人々の顔には、不安と希望が入り混じっている。

 だが、フライという少年の言葉が希望を生み出していることは間違いない。

「さあ、僕たちもそろそろ次の計画を進めようか?」

 そう言うと、バーサクは舌打ちをしながら立ち上がり、エフェミアは小さく頷いた。

 二人は空へと姿を消して、存在がなくなる。最後にボクも空へと溶け込む。

「フライ・エルトール……君がどれだけ輝こうとも、それを打ち消す力がボクたちにはあるんだよ。だから、楽しませておくれ。どうか、ボクたちを退屈させないでね」

 ボクはそう呟きながら、静かにその場を後にした。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。

みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。 勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。  辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。  だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

処理中です...