異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない

紅子

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眩しすぎる

絶句した。二人の顔面偏差値のあまりの高さに開いた口が塞がらない。いや、顔だけでなく、その躯体も彫刻が服を着ているのかと思うほど均整がとれている。アールは黒髪碧眼で美丈夫と言う言葉がふさわしく、ライは金髪碧眼で美青年というか白馬の王子様そのものだ。ふたりとも白いシャツに黒のズボンというあっさりとした服装なのにケチのつけようがない。

「どうした?」

「もしかして口に合わない食べ物があった?!?」

顔をあげて固まってしまった私を心配そうに除き込むアールと料理に不備でもあったかと慌て出したライに私はやっと正気に戻った。

「あ、ち、違います。ごはん、美味しかったです。ありがとうございます。服もありがとうございました」

ぺこんと頭を下げてお礼をした。

「はぁぁぁ、よかった。体調が悪くなったかと思ったよ」

「大丈夫そうだな?」

私を気遣ってくれる言葉にちょっとだけほっこりとする。

「はい。よく眠れましたし、大丈夫です」

「あー、俺たちに敬語はいらない」

それは、なかなか難しいことを言ってくれる。

「アール、急かしちゃダメだよ?それよりもヒカは今の状況をちゃんと知りたいんじゃない?」

それは、とっっっっっっても知りたい。ライはコクコクと首を縦に振る私をひょいっと抱き上げるとスタスタと歩き出した。

「え?!ある、歩けます!」

「まあまあ」

二人の外見を知ってしまった私には刺激が強すぎる。ジタバタともがいてみたが、びくともしなかった。まあ、あのガッチリとした躯体の前には無駄な抵抗というものだ。ライは私を抱えて隣の部屋へと移動し、ソファーの上におろしてくれた。そして、自分は私の隣に腰を下ろす。反対隣にはアールが当然のように座った。目の前にはお茶とお菓子がアールによって既に用意されている。居たたまれない。何この状況・・・・。人生初の状況に心臓がバクバクとうるさいし顔どころか全身、真っ赤に違いない。私は幼女。私は幼女。私は・・・・。無理ぃ・・・・。

「慣れてね?」

「俺たちはヒカの護衛だ。常に側にいる」

ライの声もアールの声も耳を素通りしていく。男の人、それも現実では絶対に出会うことのない美形の男性が肩の触れ合う距離にいるという落ち着かない状況から意識を引き剥がすために、テーブルをさ迷っている視線をあげると、半円型のソファーとテーブルの向こうに外の景色が見えた。床から1mの高さからガラス張りになっていて森や草原が広がっている。ベランダはない。どうやらこの部屋は高層階にあるらしい。

「さて、何から話そうか」

ぼーっと景色を眺めて現実逃避を試みていた私の耳にライの声が届いた。バクバクと落ち着かない心臓をそのままに、ちらっとライを見ると私と同じように外に視線を向けていた。アールは私の髪を弄って遊んでいる。止めてもらいたい。が、今はそれは置いておこう。聞きたいことは山ほどあるし、知りたいこともたくさん、知りたくないことも、ある。

「あの、ここは?私の荷物は・・・・」

「ヒカの荷物は預かってるよ。後で渡すね?ここは僕たちの部屋で、聖騎士団精鋭部隊の宿舎の最上階。僕は副隊長でアールは部隊長。さっきもアールが言ったけど、僕たちはヒカの護衛だよ」

よかったぁ。服はどうでもいいけど、鞄にある画材や刺繍糸は私の財産だ。保管してくれていると分かって安心した。ここがこの二人のテリトリーだというのも安心できる。なんとなくこの二人は信じていい気がするからだ。が、それも知りたいことだけど、そうじゃなくて、ね?昨日も聴こえてきたし、この説明に私たちの世界にはもうないであろう単語が散りばめられている時点で確定なんだけど、それでもちゃんと教えてもらいたい。

「ここはヒカの元いた世界とは違う場所。知りたいのはそっちかな?」

私の方を向いたライの瞳には、気遣う色が見えた。元いた世界とは違う・・・・。異世界。はっきりとそれを聞いても私の心は凍りついたように動かなかった。

「へ?!」

ふわんと身体が浮いていきなりアールの膝にのせられた。なんで?

「気にするな」

いや、気にするよ!

「うん。そのままで話しを続けようか」

アールとライの心配そうな顔を見たら拒否はできなかった。

「ヒカこそが精霊王たちに招かれた精霊王の巫女だよ。昨日の会話は聞いてたかな?」

私は頷いた。

「あの女、まりあ嬢だったか?あいつは、ヒカに成り代わろうとしたんだ。ヒカの姿が俺たちの目にうっすらと現れたところで横からヒカを突き飛ばして無理に侵入してきた」

アールは忌々しそうに眉を寄せている。ライも苛立ちを隠そうともしない。そういえば、光に包まれた後で「邪魔よ!」と言う声とドン!という衝撃があったことを思い出した。

「お蔭で、本来ならヒカにいくはずの魔力が僕たちに流れて、封印が解けたけど。ヒカはちっちゃくなっちゃったね」

あれ?あの子が来なければ、私は幼女に成ることはなかったの?

「このヒカも可愛いが、大人のヒカは綺麗だった。早く元に戻れ?」

綺麗とかさらっと言わないで欲しい。慣れていない私はどう返事をしたものか「アウ・・」と言葉にならない音を発することしかできない。

「ヒカにいくはずの魔力は僕たちの中にあるから、ちょっとずつヒカに馴染ませていくね?ヒカは特に何もしなくてもいいよ」

「そうだな。ヒカは安心して俺たちの側にいればいい」

よく分からないが、暫くはここに置いてもらえそうだ。

「私のことは他の人には気付いていないんですか?私の姿がうっすらでも現れたんですよね?」

「ああ。それが見えたのは俺たちだけだ。神殿長や他の騎士、求婚者たちはまりあ嬢しか見えてない」

「それにヒカは服に埋もれてたでしょう?アールがすぐに隠蔽をかけたから服にもヒカにも誰も気付いてないよ」

「まりあさんも精霊王の巫女なんですよね?」

「いや、あれはただの一般人だ。魔力はこの世界の神官よりは多いが。ヒカを突き飛ばしたんだ。巫女にすらなれない」

「フン!あんなのが巫女になれるわけないよ。少なくとも僕は要らないね」

「俺も要らねぇよ」

二人は忌々しそうに顔を歪めた。この時とても重要な情報が盛り沢山だったのだけど、自分の置かれた状況を把握するのに精一杯で、完全にスルーしてしまっていた。仕方ないじゃん!その後もアールとライの説明は続いた。野生の動物とは違う体内に魔力をたくさん蓄えた魔物と呼ばれる生き物がいること、各国の騎士団や聖騎士団はそれを討伐することを任務のひとつとしていること、ここは精霊の力を借りた魔法があること、精霊の頂点にいるのが精霊王で、火・風・水・土それに光と闇の王が存在すること、この神殿には精霊と意思疎通できる巫女と呼ばれる者がいること、巫女は殆どが男だということなどこの世界のことを聞いた。この世界は、女性が0.1ととても少ない。そして、人口の殆どを占める男だが・・・・子供を産めるそうだ。そうして人口を保っているらしい。女性、要らなくない?

「ゲ・・・・・・・・」

別に同性愛に嫌悪感や拒否感や忌避感はないし、個人の自由だと思っている。だが、妊娠できるとか言われるとさすがに頭がくらくらして、キャパオーバーしそうだ。アールとライの話しが一通り落ち着いたところで、私は一番聞きたくて、一番聞きたくないことを重い口を無理矢理開いて尋ねた。

「私は・・・・帰れるの?」

「「・・・・」」

「そっか」

沈黙は明確な答えになると私はこの時初めて実感した。

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