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お見合い、ですか?
精霊王とその巫女たちとの顔合わせから1月。アールとライから私の名前のことを聞き出されたり、航ちゃんとのことを追及されたりして、非常に面倒だった。乙女な航ちゃんといえども、会うときにはふたりに話しておかなくてはいけないらしい。・・・・気が向いたらね。
私は今、神域の居住区にいる。二人が訓練などで出掛けている間、ここで、チマチマと刺繍をして過ごすのが私の日課になった。今刺しているのは甥と姪。忘れないうちに、忘れないように。兄と嫁ちゃんは・・・・まあ、そのうちに・・・・。仕事の合間を縫うように趣味でやっていたあの頃と違い、捗る捗る。自分で起こした図案を見ながら、元気ですように、幸せですようにと祈りを込めてひと刺しひと刺ししていると時間があっという間にすぎていく。そろそろ、アールとライが訓練から戻って来る時間だ。私は衣装部屋の奥にある隠れ家のような私だけの空間が見つからないように、リビングに移動しお茶にするのだった。
「ヒカ。ただいま」
ライがひとりで帰って来た。いつもアールと一緒なのにどうしたんだろう?
「ライおかえり。アールは?」
「・・神殿長に・・呼び、出されて、る」
なんとなくライの歯切れが悪い。何かあったのかな?
「そっか。ふたり一緒じゃないのは珍しいね」
「うん。・・・・えっと、ヒカに求婚したい男がたくさんいて、ね、アールが神殿長に呼び出された」
ん?どういうこと?
私の頭に???が浮かんだのが分かったライが詳しく説明してくれた。
「ずっと前からヒカのことは言われてたんだ。他の男にも会わせろって。僕もアールも忙しかったから、適当にあしらってたんだけど・・・・。痺れを切らせた神殿長に呼び出された。近々、ヒカのお見合いが、始まる・・・・」
「え?お、お見合い?!」
「うん」
ムスッとしたライの表情から不本意なのが伝わってくる。きっとアールも同じだろう。
「断れないの?」
アールとライだけでもどうしていいか戸惑ってるのに、これ以上?要らないよねぇ。
「断り続けた結果が今」
「あ~。納得。お見合いの時はアールとライは一緒にいてくれるんでしょ?」
「それは、ヒカの希望次第。女性の意向が最優先される」
なるほど。女性の少ないこの世界ならでは、だ。
「なら、同伴決定ね?」
ひとりで会うなんて選択肢はない。きっと神殿側から誰かが就くのかもしれないけど、知らない人には変わりない。怖い。
「OK」
ちょっとだけライの気分が浮上したらしい。眉間の皺がなくなった。
「ただいま・・・・」
ライから事情を聴き終わったくらいにアールがこれ以上なく疲れて戻ってきた。訓練に行った後より疲れている気がする。
「おかえり、アール。お疲れさま」
「ん。本当に、疲れた。だいたい何で滅多に外に出ないヒカのことが知れ渡ってるんだよ・・・・」
確かに。私がここから外に出たのなんて数回しかない。それもアールかライに抱っこされてるか二人に挟まれてるかだから、殆ど見えてなかったと思う。
「仕方ないよ。夫婦だと思われてた僕とアールが双子で女性を伴侶に迎えたっていうんだから。噂のネタとしては最高だったんでしょ」
「うぜぇ」
「で、どうなったの?」
アールは忌々しさを隠すことなく神殿側の決定を教えてくれた。明日からお見合いが始まるらしい。アールとライが同伴出来ない日は行かないことにした。だって、怖い。
「ところでさ、その中から選ぶ必要はあるの?」
「ない」
「ないね」
「じゃあ、会うだけ会えばいいんだ?贈り物とかは?されるよね、きっと。断るのは・・・・」
「駄目。貰っておいて換金、寄付するしかないね」
「お礼も必要ないぞ?受け取ってすぐさま俺たちに渡せ」
「理由は?」
「手にしたままってことは、気に入ったってことだから」
「贈り物が、じゃなくて、そいつのことが、な。だから、受け取ったらすぐに手を離せ。横にいる俺たちに渡すことで俺たちを信用していると示すことができる」
「なるほど。了解。ところでさ、もし私が二人以外の伴侶を選んだらどうなるの?」
「あ"あ"っ」
そんなに凄まないでよ、アール!私をじと目で睨まないで、ライ!二人とも怖いよ!
「だから、例えば、もしもの話」
「そんな“もしも”なんて必要ないでしょ?」
「ちょっと聞いてみたかったただけなんだけど・・・・」
ほんのちょっとした好奇心。一夫一妻制が身に染みている私からすれば、アールとライすらもて余してるのに、これ以上はいらない。「ハァ」と溜め息を吐いたライは仕方なさそうに話始めた。
「精霊王の神託を出して神殿を牽制した上で、どうするか話し合うかとになるんじゃないかな。ヒカが精霊王の巫女だってバラすわけだし」
「ヒカの正体をバラすんだから、当然、俺たちの正体もバレる。いろんな意味で危なくてこっちには居られないな。落ち着くまで数百年はこっちには滅多に来れなくなる。神域生活だ」
結局、選んでも無駄ってことね。数百年も神域生活なんて耐えられない。今でも市場とか行きたいのを我慢してるのに!だから、面倒臭くてもあの子の茶番に付き合ってるのか。納得。正体を告げれば行かなくてもよくなるのに何でだろうと思ってたんだよね。ハァ・・・・。ともかく、私の引きこもり生活は終わりを告げて、したくもないお見合いが私の生活に入り込んできた。そんなことより、お出掛けしたい!
私は今、神域の居住区にいる。二人が訓練などで出掛けている間、ここで、チマチマと刺繍をして過ごすのが私の日課になった。今刺しているのは甥と姪。忘れないうちに、忘れないように。兄と嫁ちゃんは・・・・まあ、そのうちに・・・・。仕事の合間を縫うように趣味でやっていたあの頃と違い、捗る捗る。自分で起こした図案を見ながら、元気ですように、幸せですようにと祈りを込めてひと刺しひと刺ししていると時間があっという間にすぎていく。そろそろ、アールとライが訓練から戻って来る時間だ。私は衣装部屋の奥にある隠れ家のような私だけの空間が見つからないように、リビングに移動しお茶にするのだった。
「ヒカ。ただいま」
ライがひとりで帰って来た。いつもアールと一緒なのにどうしたんだろう?
「ライおかえり。アールは?」
「・・神殿長に・・呼び、出されて、る」
なんとなくライの歯切れが悪い。何かあったのかな?
「そっか。ふたり一緒じゃないのは珍しいね」
「うん。・・・・えっと、ヒカに求婚したい男がたくさんいて、ね、アールが神殿長に呼び出された」
ん?どういうこと?
私の頭に???が浮かんだのが分かったライが詳しく説明してくれた。
「ずっと前からヒカのことは言われてたんだ。他の男にも会わせろって。僕もアールも忙しかったから、適当にあしらってたんだけど・・・・。痺れを切らせた神殿長に呼び出された。近々、ヒカのお見合いが、始まる・・・・」
「え?お、お見合い?!」
「うん」
ムスッとしたライの表情から不本意なのが伝わってくる。きっとアールも同じだろう。
「断れないの?」
アールとライだけでもどうしていいか戸惑ってるのに、これ以上?要らないよねぇ。
「断り続けた結果が今」
「あ~。納得。お見合いの時はアールとライは一緒にいてくれるんでしょ?」
「それは、ヒカの希望次第。女性の意向が最優先される」
なるほど。女性の少ないこの世界ならでは、だ。
「なら、同伴決定ね?」
ひとりで会うなんて選択肢はない。きっと神殿側から誰かが就くのかもしれないけど、知らない人には変わりない。怖い。
「OK」
ちょっとだけライの気分が浮上したらしい。眉間の皺がなくなった。
「ただいま・・・・」
ライから事情を聴き終わったくらいにアールがこれ以上なく疲れて戻ってきた。訓練に行った後より疲れている気がする。
「おかえり、アール。お疲れさま」
「ん。本当に、疲れた。だいたい何で滅多に外に出ないヒカのことが知れ渡ってるんだよ・・・・」
確かに。私がここから外に出たのなんて数回しかない。それもアールかライに抱っこされてるか二人に挟まれてるかだから、殆ど見えてなかったと思う。
「仕方ないよ。夫婦だと思われてた僕とアールが双子で女性を伴侶に迎えたっていうんだから。噂のネタとしては最高だったんでしょ」
「うぜぇ」
「で、どうなったの?」
アールは忌々しさを隠すことなく神殿側の決定を教えてくれた。明日からお見合いが始まるらしい。アールとライが同伴出来ない日は行かないことにした。だって、怖い。
「ところでさ、その中から選ぶ必要はあるの?」
「ない」
「ないね」
「じゃあ、会うだけ会えばいいんだ?贈り物とかは?されるよね、きっと。断るのは・・・・」
「駄目。貰っておいて換金、寄付するしかないね」
「お礼も必要ないぞ?受け取ってすぐさま俺たちに渡せ」
「理由は?」
「手にしたままってことは、気に入ったってことだから」
「贈り物が、じゃなくて、そいつのことが、な。だから、受け取ったらすぐに手を離せ。横にいる俺たちに渡すことで俺たちを信用していると示すことができる」
「なるほど。了解。ところでさ、もし私が二人以外の伴侶を選んだらどうなるの?」
「あ"あ"っ」
そんなに凄まないでよ、アール!私をじと目で睨まないで、ライ!二人とも怖いよ!
「だから、例えば、もしもの話」
「そんな“もしも”なんて必要ないでしょ?」
「ちょっと聞いてみたかったただけなんだけど・・・・」
ほんのちょっとした好奇心。一夫一妻制が身に染みている私からすれば、アールとライすらもて余してるのに、これ以上はいらない。「ハァ」と溜め息を吐いたライは仕方なさそうに話始めた。
「精霊王の神託を出して神殿を牽制した上で、どうするか話し合うかとになるんじゃないかな。ヒカが精霊王の巫女だってバラすわけだし」
「ヒカの正体をバラすんだから、当然、俺たちの正体もバレる。いろんな意味で危なくてこっちには居られないな。落ち着くまで数百年はこっちには滅多に来れなくなる。神域生活だ」
結局、選んでも無駄ってことね。数百年も神域生活なんて耐えられない。今でも市場とか行きたいのを我慢してるのに!だから、面倒臭くてもあの子の茶番に付き合ってるのか。納得。正体を告げれば行かなくてもよくなるのに何でだろうと思ってたんだよね。ハァ・・・・。ともかく、私の引きこもり生活は終わりを告げて、したくもないお見合いが私の生活に入り込んできた。そんなことより、お出掛けしたい!
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