異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない

紅子

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イライライラ

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「精鋭部隊の部隊長殿と副隊長殿の伴侶と伺い、お会いするのを楽しみにしておりました。これはささやかながら、私からの贈り物です」

そう言って、目の前の金髪に翠の瞳をした爽やかそうな美青年が私に向かって、金細工にエメラルドの付いた髪飾りを差し出してきた。そのあからさまな贈り物にひきつりそうになる顔をどうにか保ち、それを一瞥してその箱ごとアールに渡した。それを見て見合い相手は落胆している。

そう、今はお見合いの真っ最中である。今日で5回目。既に辟易としている。アールとライが忙しくて本当によかったと、心からそう思う。こんなのが毎日なんて耐えられない。

「・・・・」

私はお茶を飲むだけで話たりはしない。見合い相手が勝手に自己アピールするのを聞いていればいい。ここで余計なことを言うと興味を持ってもらえたと勘違いさせてしまうことに3人目で気が付いた。だから、ひたすらちびちびとお茶を飲み、お菓子を食べる。アールが作ったものだから安心して口にできるのだ。神殿から出されるお菓子?無理無理。何が入ってるか、怖くて口にしたくない。「お見合い相手に買収されてないとは言えないでしょ?」って、何度もライに言われた。

「そろそろお時間です」

お見合い相手がひたすら喋り尽くした頃、扉に控える神殿が用意した神官から声が掛かるとそこで終了。

「あの、もう少しお時間を・・・・」

美青年が私の方をチラチラ見ながら時間の延長を申し出る。今まで申し出なかった人は一人もいない。アールとライを目の前にして、私のこの態度で、どうして食い下がろうとするのか、理解に苦しむ。今のところアールとライ以上はいない。私を伴侶とした今でも様々な女性から声をかけられているのを私は知っている。ていうか、私を抱き上げていても媚びてくるんだから、イラッとする。しかも私にはきつぅい視線付き。

「ヒカ?」

どうする?と尋ねるアールの簡潔な問いかけに、首を横に振る。早く帰ってほしい。

「どうしても、ダメ、ですか?」

見合い相手がなおも食い下がるが、ここは、心を鬼にして無視を決める。

「アール、ジュース飲みたい」

「何ジュースだ?」

「うーん、すっきり、レモンとか?」

分かりやすくアールに甘える。これも相手に対する牽制のひとつ。

「分かった」

アールは隣接する簡易キッチンに入っていった。

「ヒカ、疲れてない?」

「疲れた。ジュース飲んだら、少し庭に出てもいい?」

ライに凭れかかりながら、ハァと分からないように溜め息を吐いた。

「少し散歩しようか?」

「うん、そうする♪」

見合い相手を無視して、そんな会話を繰り広げていると大抵諦めて部屋を出ていってくれる、のだが・・・・。

「でしたら!私もご一緒させてください」

この人はしつこかった。私の眉間にシワが寄る。束の間の休息を邪魔しないでほしい。だが、肝心の見合い相手は、渋い顔の私を見て、反応してもらえたと嬉しそうにしているのだから、その心情が理解できない。イライラが募っていく。

「帰る。暫くアールとライ以外は誰にも会いたくない」

本当に疲れる。無視するのも精神的にきついのに、無表情で反応を押し殺すのも負担にしかならない。ライが頷いて肯定してくれるのが救いだ。

「そのように伝えてくれる?この後の予定もなし。次の日程はこちらから連絡するよ」

「分かりました。そのように手配いたします」

神殿側も女性の意思を無下にはできない。

「どうした?」

アールがキッチンから戻ってきた。私にジュースを手渡してくれる。

「ヒカが疲れちゃったから、暫くはお休みすることにしたよ」

ライが私の髪を優しく撫でてくれる。私はちびちびとジュースを飲みながら、アールを上目遣いに見上げると心配そうな視線とぶつかった。

「その方がいいな。顔色が悪い」

頬に添えられたアールの手が温かくて思わずその手に頬を寄せてしまった。思ったよりも冷たい私の体温に驚いたアールは、飲んでいた冷たいジュースをさっと回収するとライに私を抱えさせた。

「帰るぞ」

「ちょっとだけ庭を散歩しちゃダメ?」

私の冷えた身体を心配するアールにこのまま部屋に連れていかれそうだと思った私は二人にお願いした。

「そうだな。少し外の空気を吸った方がよさそうだ」

「このままだよ?」

「うん」

私たちはお見合い相手たちとは違う専用の出入り口から部屋をあとにした。その見合い相手は、と言うと図々しくもまだ部屋に居座っていたが、私たちを追いかけるように部屋を出ていった気配がした。なんだか、今までの人たちとは違う不穏なものを感じて気味が悪い。案の定・・・・。

「ヒカ様!」

追いかけてきた。もう、いい加減にしてほしい。イライライラ・・・・。

「お待ち下さい!部隊長殿も副隊長殿も精霊の巫女であるまりあ様から求められておいでなのはご存じですか?あの方が選んだ人物が精霊王となるのです。その二人といくら親しくなったところで、無駄なのですよ?精霊王とその巫女、そして筆頭護衛兼伴侶の間には割り込むことはできません。ですから、今のうちにヒィ!!!」

アールもライも歩みを止め、アールは見合い相手の喉元に鞘に収まったままの剣を突きつけた。

「おい、何勝手なことばっかり言ってやがる?!」

「そうだね。僕が愛しているのはヒカだけだよ。僕もアールもヒカから離れるつもりはない。精霊の巫女だかなんだか知らないけど、他の女性の伴侶に手を出すのはご法度だよ」

ライの気分が冷たい声が、アールの怒りを隠しもしない声に続いた。

「精霊王?なりたい奴がなればいい。ヒカ以外に用はない。俺たちの伴侶はヒカだけだ!」

それだけ言うと二人はクルリと踵を返すと再び歩き始めた。

「精霊の巫女の望みは叶えなければいけません!それが天の意思で・・・・」

見合い相手が何か叫んでいたが、私たちは無視を決めて庭園を横切った。散歩はお預けだ。

わたしは・・・・。この時漸く自分の恋心に気が付いた。いつの間にかアールとライが特別な存在になっていたのだ。外見だけじゃない。私をちゃんと見て、上部だけでない私の意思を尊重してくれる二人を好きにならないわけがない。二人といる生活が当たり前になっていた。いなくなるなんて考えたこともなかった。

・・・・。どうしよう・・・・。

自覚した途端に恥ずかしくて、今までどうしてきたのか、どうしていいか分からなくなった。この日を境に、私は今まで二人にされてきたことをされる度、どんな態度をとっていいのか、恥ずかしさで若干パニックになり、全身真っ赤になってあわあわと俯くしか出来なくなったのだった。それを見た二人がニンマリとしていることなど全く気づくことはなかった。
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