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12.千年越しの親子の会話。
しおりを挟む「昔はどんな人だったって、藪から棒にどうしたの?
そうねぇ、子供の頃は勉強大好きで真面目に学校に通ってたってお父さんからは聞いていたわよ。」
「何で父さんから聞いた話が先に出てくるんだよ?
母さんから見てどうだったかを聞かせてくれよ。」
「それがね、お母さんは泊まり込みでの仕事ばかりで、コウの事はほとんどお父さんに任せっきりだった...。
ミズナちゃんのお父さん、国王さまと同じだったから、聞いてて心が苦しかったわ。」
「確かに凄い研究してたんだもんな。そりゃ忙しいよ。
じゃあ、母さんも父さんに愛想尽かされなかったのかよ?」
「お父さんはね、優しくて生真面目で頑張り屋さんだったの。無口だったけどね。ふふ。
コウには妹がいたの、覚えてる?」
「んー、いたような気がする。」
「あなたにはね、二つ歳下のヒカリって名前の可愛い妹がいたわ。
お母さんはヒカリを産んでまもなく、泊まり込みの勤務が決まったの。」
「そんなの、会社もイジワルだよな。」
「仕方ないわよ。
でも、子供二人をお父さんに任せて泊まり込みなんて話は断ったわ。
だけどお父さんはね、昔からお母さんの夢を応援してくれてて、チャンスは絶対に無駄にしちゃダメだって言われたの。
だからお母さんは、お父さんに甘えてしまった。」
「そうだったのか。
それで、父さんは男手一つで二人を育てきったんだな。
俺、父さんの事が大好きだったのを思い出したよ。」
「お父さんの事、思い出してくれて嬉しいわ。」
「てか、それなら俺、母さんにはほとんど会ってなかったんだよな?
でも、魔族になった母さんの顔はちゃんと分かったぜ?」
「そりゃ、会わなくても毎日ビデオ通話してたもの!」
「...ビデオ通話って?
互いの顔を見ながら電話できる機械って感じか?」
「そうそう!それでお母さんは毎日コウとヒカリの顔を見て元気もらってたんだから!
コウは十歳にもなったらビデオ通話恥ずかしがっちゃって、してくれなくなったけどね~。ふふ。」
「それで千年経っても母さんって気づけたわけか。」
「ホントよ!気づいてくれてありがとぉぉ!
コールドスリープ後は大抵記憶に障害が出るのは分かってたから、国王の前での立ち回りは博打だったわ。」
「ほんと、母さんスゲェよ...。」
「あ!話途中だったわね。
小学校高学年頃からコウは、急に猛勉強するようになったってお父さん嬉しそうに話してたわ。
それで、有名大学を卒業してね、お父さんの会社の後継候補として入社したわ。」
「俺、そんなに勉強好きだったんだな。
で、父さんの会社って何をしてたんだ?」
「お父さんはね、ジャポルネ最大のスマホメーカーの社長だったわ。
スマホ、知ってる?今この世界には見当たらないけど、手に収まるサイズの小型のコンピュータで、それこそビデオ通話とか何でもできたわ。」
「凄い便利そうなのに、どうして千年後のこの世界には残らなかったんだろう。」
「それは...、分からないわ。
で、ここから先はあなたにとっては思い出すのは辛いと思うけど、ある凶悪事件の犯人にされてしまうの。」
「ああ、その事件は実は少し思い出したんだ。
俺が会社の寮の出入り口を塞いで放火した事にされたんだろ?
当時マスターキーは俺が管理してて、焼け跡から出てきた防犯カメラには放火する俺の姿が映っていた。
厳密には、俺に似せた男がな。
トップの奴には完全にハメられたよ...。
他にも言い逃れできないような証拠をいくつも偽装されたんだよな。」
「そうね...。
あと、これはあなたの処刑直前に起きた事だから知らされていないと思うけど、お父さんね...。
自分の会社で、しかも後継候補の息子が起こした事件の重責に堪えかねて、自殺してしまったのよ...。」
「父さんが...、自殺...?」
トップ...!次に会ったら絶対に殺してやる...!絶対にだ!楽に死ねると思うなよ。
「そしてお母さんはね、お父さんの脳から注射液を作り出すわ...。
そしてそれをコールドスリープ直前のあなたに注射した。
つまりコウ、あなたは人間の力を受け継いだ人間。
人間の能力は人間とのコミュニケーションをとる事。
だからあなたは魔界では無能扱いされてしまった。」
「俺の能力が人間にだけ働くのはそういう事だったのか!
でも待てよ、母さんも同じ能力を持ってるよな?
母さんは誰の脳から作った注射液を打ったんだ?」
それを聞いた瞬間、母さんは急に崩れ落ちて泣いた。
感情が堰を切って溢れ出すように...。
「うぅ...う...。...ヒカリよ......。
お母さんのね、もう一人の大切な可愛い可愛い子供...。」
「...うそ...だろ?」
母さんはしばらく泣き崩れていた。
「うぅ...。ヒカリはね、お父さんに似て優しくて、他人の痛みを自分の事のように感じる事が出来る子だったの。でも、少しコミュニケーションが苦手だったわ...。
愛するお兄ちゃんとお父さん、同時に失って一番辛い時なのに、お母さんはすぐにヒカリに寄り添ってあげられなかったの...。
忙しかったなんて言い訳はしないわ。お母さんが家に帰った頃には、ヒカリは...。
うぅぅ...うわァァァ!!うぅぅぅ...。」
俺は母さんを抱き締める。
息が止まるほど強くギュッと、でも優しく。
「母さんっ!自分を責めるな。悪いのは全部アイツだ。
それに、俺の中には父さんが、母さんの中にはヒカリがいる。俺たち家族四人は千年の時を超えて今一緒にいるじゃないか...!」
「ありがとう。コウ...。
あなたが私の子供で本当に幸せよ。」
しばらく二人で抱き合った。
俺たちが生きた千年に比べたらほんの一瞬だけど、その瞬間は永遠のようだった。
街の方から人が歩いてくる気配がする。
俺は恥ずかしくなって抱き合うのをやめると、通行人は俺たちをマジマジと見て、口を開く。
なんて言われるか...、緊張した。
「おやぁ。あなたたちが国王の言っていた親子かい?
魔族がゴブリンを退治してくれるって聞いた時はビックリしたけど、頑張っておくれよ!」
俺は人間の凄さを改めて思い知った。
民から信頼される国王の器。それを信頼する民の心の広さ。これこそが人間の最大の武器だ。
「あ、ありがとな!
必ずみんなが安心して暮らせる世界にしてみせるよ!」
昨日まで人間に恨まれてたのが嘘みたいだった。
俺は英雄になったみたいな気分で嬉しかった。
早く他の人間にも会ってみたい。
「よし!母さん!ミッション開始だ!
お昼ご飯をテイクアウトしてくるぞ!」
「ふふ。お母さん楽しみよ!」
母さんもすっかり元気みたいだ。
そういえば、母さんの能力は俺のに比べてテレパシーに膨大な力を使うみたいだな...。
俺は大企業の社長の父さんを、母さんはまだ小学生のヒカリを...。
受け継いだ人間の差が現れてるって事か...。
そんな事を考えながら、二人でいつものレストランへ向かう。
おっと、足音を消してついてきてくれているユータンも忘れちゃいけないな。
...いや、ユータンの他にも尾行する影がもう一つ、いや二つあるな...。
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