アンチ・リアル

岡田泰紀

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アンチ・リアル 24

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「アンチ・リアル」 24

もしかしたら、スタジオでの最後の仕事になるかもしれない、リモデリングの物件の引渡し日を迎えた。

日出郎は、いつも自分の自腹を切って、竣工祝いの花を買っている。
今回は、キッチンのコーディネートをしてくれた薫に、取説のために同行してもらっていた。

日出郎は薫には何も説明せず、ちょっと付き合って欲しいと言って、馴染みの花屋に向かった。
いつもと同じで、3000円ぐらいで、小振りでいいから華やかなものをと頼む。

「日出さんはいつもそうしてるの?」
薫は目を細めて、花束が作られていく様を見つめていた。
「物件の程度によっては単品にすることもあるけど、必ず花は持ってくよ。
感謝の気持ちとお祝いとしてね」

日菜子はあの夜、火遊びは燃える前に消した方がいいと言った。
今その相手は、自分の横で無邪気な微笑を浮かべている。

おそらく、日菜子の言葉は正しい。

そしておそらく、自分は間違っている。

「薫ちゃん、僕の代わりにこいつを渡して欲しい。
花は、華やかな人から渡された方が嬉しいものだよ」
そう言うと、日出郎は薫の手に花束を持たせた。

「なんで?日出さんが渡すべきでしょ?
私は華やかじゃないし」

「僕よりは華やかだ。それで十分」
日出郎は、施主との記念撮影のために持ってきたデジカメで、花束を抱える薫の写真を撮った。
「正直いえば、僕が薫ちゃんの写真を撮っておきたかっただけなんだ」

先日の藤田明人との打ち合わせは、日出郎の心に少なからぬダメージを与えた。
行く末は、不吉な予感しか持てない。それが、普通の感覚だ。

もちろん、薫には何も話していない。
その、どうにも拭い難い不安を、薫と同じ時を過ごすことで忘れようとしていた。
花と共にとらえた一瞬の姿は、自分の心の支えになるはずだ。

「今日で、しばらくは社長室のソファーで仮眠する薫ちゃんを起こす機会はなくなるのが残念だな」

日出郎は、日菜子の忠告に罪悪感を覚えながら、薫との距離を徐々に詰めていく。
当分は、もしくはもう二度と、スタジオで仕事を請けないかもしれない。
だから、仕事から離れたら、二人は今までと同じようにはいかないだろう。
これからは、何かにつけて口実がいるのだ。

「何か今日は難しい顔してるよ」

薫にそう言われて、日出郎は、思わず自分の顔を撫でた。
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