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第73話 豚頭
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それは風下から現れた。
数は30に登るだろう、わらわらと湧くように姿を現した。狩人や、ときに野生動物が自身の匂いを伝えないよう、風下から襲いかかることは知られている。あれらに見える豚さんたちは大層臭いらしいので、こうやって知恵を回すらしい。
弟殿下はカザンが顔を出した意味をすぐに理解した。流石に優秀と評される人物だけあって、あっと言う間に兵達をまとめて戦陣を整えていく。
カザンがなぜ察知できたのか。それは、相手の中に椿のように魔力を伸ばしてくる個体が居たからだ。こちらを探っていたのだろうか、それともわざと挑発したのだろうか。
豚頭の巨躯は、カザンを超える2m近いものだ。
予想通り、某国民的RPGのオークと同じ容貌をしている。
まるで力士のような、筋肉質な肩から腕、脚を露出する姿で、ぽっこりと腹の膨らんだ胴には板金鎧を身に付けている。まるで手足の生えた樽のような存在感だ。そしてその身体を、太い毛質の毛皮が覆っている。凡人が斬りかかっても傷など付けれないだろう。
『うわぁ、確かにこれに斬りかかろうってヒトは居ないかもね』
『青鬼も、そうなんだがな……』
ぼやくカザンは、正面を勇者である茜とイケメン眼鏡のマーリンに預け、右翼に斬り込んで行く。すぐに十数人のニジニ兵が続いた、カザンの背を守るように立ち回っている。
そのカザンは、豚頭と正面から斬り結び始めた。なるほど、手首や鼻っ面など、筋肉の薄い場所を狙っている。まずは数を減らすべく、手早く無力化する腹積もりらしい。
正面に向き直ると、茜の雷魔法が幾条も走るのが目に飛び込んできた。威力は申し分ない、むしろいつも以上だ。だが、今回に限っては効果が薄く感じられる。
豚頭は、茜の雷を浴びてまとめて倒れる仲間を見るやいなや、散開して魔法の被害を抑える行動に出たのだ。明らかに豚頭には指揮系統がある。
こいつら、簡単に片付きそうにない。
『こんな数、初めてです!』
茜は焦っているが、眼鏡がなんとかフォローするだろう。そもそも、近づけば雷で死ぬのだ。豚頭も簡単には近づいてこない。そして、足止め以上の効果を茜から引き出すのは、参謀たるマーリンの仕事なのだ。こちらは放っておこう。
左翼では、殿下とオリガ嬢が魔法を撃ち込み、近づけさせまいと奮闘している。神官スターシャと、覗き魔女ポーシャには2人のサポートを言いつけた。いつも、長物を抱えた椿と怒突き合いの訓練をしているスターシャ、槍を持った豚頭の相手は慣れたものだろう。こちらも、ポーシャが上手く援護してくれるはず。
椿は中央に留まり、辺りを警戒し始めた。
さっきから感じる違和感の正体を探るべきだ。
奴ら、わざわざ風下から奇襲を目論んだくせに、魔力を伸ばして気付かせるような真似をした。陽動じゃないのか? 現に、ニジニ兵は隊列を東西に伸ばされてしまった。
薄くなった後方を襲う伏兵がいるかもしれない。
ほら、風上から気配を殺し、魔力を隠蔽して近づく気配がある。
――来るぞ!!
灌木を突き破って、一際大きな豚頭が走り込んできた!
強者は光る、それは魔力の輻射だ。やはり、あちらの豚頭たちは陽動だった。こいつの接近から意識をそらす工夫だったのだ。けど無駄だよ、この豚頭、ビンビンに光ってるもの。隠しきれていない。
その豚頭は走るままに、椿の手首よりも太い柄の槍を突きこんできた。避けた椿の胴を狙って、そのまま槍を横薙ぎにする。辛くも受けるが、足の裏が地面を滑る。振りかぶりもしないで、なんて威力だ。
……これ、こいつ、守り人だ!
分かるぞ、黒い青鬼から、赤いゴブリン、そしてこいつ、中身は同じ奴だ。始めから、椿を狙っていたのだ。女ひとりを一対一で始末できなかったのが不満なのか、赤ゴブのときもカザンを無視して椿に襲いかかってきた。
ついに向こうから来てしまった!
茜を前方に釘付けにする用兵で、椿と立ち会う時間を作る。魔法が効かない場の優位性を捨ててまで奇襲するためだ。この用意周到さ、感服する。
空気を切る音がするほど鋭い突き、太く重い槍の横薙ぎ、どれも強烈だ。熊モードでも力負けしそうになる。青鬼から、ゴブリンと来て、今度は豚頭か。この巨体は反則だろう、卑怯だよ。潔く、元の身体で掛かって来いっつーの! どうせ死んでも、別の体で復活できるんだろうに!!
「ソノ、獣ノ物真似ヲ、止メテカラ言エッ!」
喋った!
ほら見ろ、中身は人間じゃないのか?!
なんとなく予想していた考えが、こいつの存在で確信となった。あの、パルテノン神殿みたいな風呂、椿の場合は死んだらあそこに戻されるのだろう。そしてまた、役目を果たせと、この世界に放り込まれるに違いない。
この豚頭の中身もそうだ。魔王側の勇者、その通りなのだ。
誰かが言っていたではないか、召喚の奇跡は女神が起こすって。女神の敵対者の魔王だって対抗するに決まっている。こいつも異世界から呼ばれたのかもしれない、椿と同じ被害者なのだ。
同じ身の上、同情はするが遠慮はしない。先に帰らせてもらうぞ。
全身を巡らす魔力を更に増やす、もちろん薙刀にも。豚頭が光る刀身を見てギョッとする。未知の威力に警戒したのだろう、受けに専念しだした。
しかしこいつは、手強い。何でも斬れる武器と言っても、刃を立てねば斬れない。
動く対象を斬るだけでも難しいのに。その上で、刀身の腹をカチ上げるように受け、椿の手首に柄を差し込んで斬撃を妨害してくる。そもそも攻撃が届きもしないのだ。
舌を巻く手練だ。
おまけに、少しでも足を止めれば、その巨体で押し込んでくる。槍の有効距離なんぞお構いなしだ!
くそ! 本当に祖父を相手にしているようだ。
こいつの槍の扱いは、この世界の槍術じゃない。どちらかと言うと杖術だ。左右の持ち手を広く開け、石突でかち上げて来たかと思うと、その石突を掴んで振り下ろしてくる。目まぐるしく間合いを変える攻めだ。樽のような腹をしているくせに、その動きは洗練されている。
もう攻め続けるしかない、受けに回ったら勝ち目はない。
少しずつ、確実に豚頭の槍の柄を削っていく。
戦場の喧騒がかき消え、圧縮された時間の中で数え切れない打ち合いが続く。
いい! 加減に! 諦めろ!
息の切れた豚頭が足を止めた一瞬、ついにその槍を圧し折ってやった。
返す刀で、その太い脚を切り飛ばす。
――いまだっ!
片膝を突き、地に手をつけ蹲る豚頭の首を落とす。
そのつもりで踏み込んだ瞬間、椿の腹を何かが貫いた。
「はグっ――」
……槍だ、地面から槍が生えている。槍は、地面に置いた豚頭の手の下から生えていた。
しまった、椿はコレをもう何度も見てきたはずだ。
霊穴の土俵から取り出した武器は埋めてあったのではない、作り出したのだ。きっと、この守り人の固有魔法なのだ。
更に槍を取り出す豚頭、表情などないはずのイノシシの顔が笑っていると分かる。腹を下から突き上げられ、足が軽く浮いてしまった。これではもう、抵抗することもできない。ふぐぅ、ここまでか……
その椿の前に、シェロブが立ち塞がった。
(何やってるの、逃げなさい)
もう、声が出ない。
確証はないけど、椿はやり直しが利くのだ。そんな人間をわざわざ庇って、命を捨てる必要はない。
シェロブはまだ、何か渾身の一手を講じているのか、ありったけの魔力をその身に循環させている。
シェロブと椿を一緒くたに串刺しにしたいのだろう。そんな立ち位置にゆっくりと移動した豚頭が槍を構えた瞬間――
――ヒュゴッ!!!
重く、鋭い音が響いてニヤける豚面が弾け飛んだ。その勢いで、巨躯が錐揉みして吹っ飛んでいく。
(何だ?!)
豚頭が居た位置に、ズドンと大音を立てて転がったのは、丸太だ。それも多分、鉄の。いつぞや見た、魚頭の槍をまとめてくっつけたような形をしている。
『おい、まだ死ぬなよ!
白いの、すぐ一番きついポーションだ!』
吹っ飛んだ守り人を一瞥もしないで、カザンが駆けつけてくる。
これか? コレがカザンの奥の手か? くそ、意識が朦朧としてよく分からなかった。
カザンは振動を与えないほど鋭く、椿の腹を貫く槍の柄を切断する。そして、崩れ落ちる椿の身体を、うつ伏せに横たえた。
『白いの、他人の身体の魔力を循環させられるか?』
『はい!』
『飲ませたらすぐだ、いくぞ』
言うやいなや、カザンは椿に刺さった槍を、背中側から一気に引き抜いた。ぎゃー! そっとやれ!! 腰に足を置いて椿の身体を地面に固定すると、本当に遠慮なく一気に引き抜いてきた!
確かにもう、魔力を操る気力はない。真剣な顔のシェロブが、椿の代わりにポーションの効果を最大限に得ようと、籠められた魔力を全身に巡らせていく。そして、腹の傷へ集めていくのが分かった。カザンがその上からザブザブとポーションを注いでくる。
でもポーションの治療って、傷が治る過程で痛みも戻るんだよね。
その痛みで、椿は意識を手放したのだった……
数は30に登るだろう、わらわらと湧くように姿を現した。狩人や、ときに野生動物が自身の匂いを伝えないよう、風下から襲いかかることは知られている。あれらに見える豚さんたちは大層臭いらしいので、こうやって知恵を回すらしい。
弟殿下はカザンが顔を出した意味をすぐに理解した。流石に優秀と評される人物だけあって、あっと言う間に兵達をまとめて戦陣を整えていく。
カザンがなぜ察知できたのか。それは、相手の中に椿のように魔力を伸ばしてくる個体が居たからだ。こちらを探っていたのだろうか、それともわざと挑発したのだろうか。
豚頭の巨躯は、カザンを超える2m近いものだ。
予想通り、某国民的RPGのオークと同じ容貌をしている。
まるで力士のような、筋肉質な肩から腕、脚を露出する姿で、ぽっこりと腹の膨らんだ胴には板金鎧を身に付けている。まるで手足の生えた樽のような存在感だ。そしてその身体を、太い毛質の毛皮が覆っている。凡人が斬りかかっても傷など付けれないだろう。
『うわぁ、確かにこれに斬りかかろうってヒトは居ないかもね』
『青鬼も、そうなんだがな……』
ぼやくカザンは、正面を勇者である茜とイケメン眼鏡のマーリンに預け、右翼に斬り込んで行く。すぐに十数人のニジニ兵が続いた、カザンの背を守るように立ち回っている。
そのカザンは、豚頭と正面から斬り結び始めた。なるほど、手首や鼻っ面など、筋肉の薄い場所を狙っている。まずは数を減らすべく、手早く無力化する腹積もりらしい。
正面に向き直ると、茜の雷魔法が幾条も走るのが目に飛び込んできた。威力は申し分ない、むしろいつも以上だ。だが、今回に限っては効果が薄く感じられる。
豚頭は、茜の雷を浴びてまとめて倒れる仲間を見るやいなや、散開して魔法の被害を抑える行動に出たのだ。明らかに豚頭には指揮系統がある。
こいつら、簡単に片付きそうにない。
『こんな数、初めてです!』
茜は焦っているが、眼鏡がなんとかフォローするだろう。そもそも、近づけば雷で死ぬのだ。豚頭も簡単には近づいてこない。そして、足止め以上の効果を茜から引き出すのは、参謀たるマーリンの仕事なのだ。こちらは放っておこう。
左翼では、殿下とオリガ嬢が魔法を撃ち込み、近づけさせまいと奮闘している。神官スターシャと、覗き魔女ポーシャには2人のサポートを言いつけた。いつも、長物を抱えた椿と怒突き合いの訓練をしているスターシャ、槍を持った豚頭の相手は慣れたものだろう。こちらも、ポーシャが上手く援護してくれるはず。
椿は中央に留まり、辺りを警戒し始めた。
さっきから感じる違和感の正体を探るべきだ。
奴ら、わざわざ風下から奇襲を目論んだくせに、魔力を伸ばして気付かせるような真似をした。陽動じゃないのか? 現に、ニジニ兵は隊列を東西に伸ばされてしまった。
薄くなった後方を襲う伏兵がいるかもしれない。
ほら、風上から気配を殺し、魔力を隠蔽して近づく気配がある。
――来るぞ!!
灌木を突き破って、一際大きな豚頭が走り込んできた!
強者は光る、それは魔力の輻射だ。やはり、あちらの豚頭たちは陽動だった。こいつの接近から意識をそらす工夫だったのだ。けど無駄だよ、この豚頭、ビンビンに光ってるもの。隠しきれていない。
その豚頭は走るままに、椿の手首よりも太い柄の槍を突きこんできた。避けた椿の胴を狙って、そのまま槍を横薙ぎにする。辛くも受けるが、足の裏が地面を滑る。振りかぶりもしないで、なんて威力だ。
……これ、こいつ、守り人だ!
分かるぞ、黒い青鬼から、赤いゴブリン、そしてこいつ、中身は同じ奴だ。始めから、椿を狙っていたのだ。女ひとりを一対一で始末できなかったのが不満なのか、赤ゴブのときもカザンを無視して椿に襲いかかってきた。
ついに向こうから来てしまった!
茜を前方に釘付けにする用兵で、椿と立ち会う時間を作る。魔法が効かない場の優位性を捨ててまで奇襲するためだ。この用意周到さ、感服する。
空気を切る音がするほど鋭い突き、太く重い槍の横薙ぎ、どれも強烈だ。熊モードでも力負けしそうになる。青鬼から、ゴブリンと来て、今度は豚頭か。この巨体は反則だろう、卑怯だよ。潔く、元の身体で掛かって来いっつーの! どうせ死んでも、別の体で復活できるんだろうに!!
「ソノ、獣ノ物真似ヲ、止メテカラ言エッ!」
喋った!
ほら見ろ、中身は人間じゃないのか?!
なんとなく予想していた考えが、こいつの存在で確信となった。あの、パルテノン神殿みたいな風呂、椿の場合は死んだらあそこに戻されるのだろう。そしてまた、役目を果たせと、この世界に放り込まれるに違いない。
この豚頭の中身もそうだ。魔王側の勇者、その通りなのだ。
誰かが言っていたではないか、召喚の奇跡は女神が起こすって。女神の敵対者の魔王だって対抗するに決まっている。こいつも異世界から呼ばれたのかもしれない、椿と同じ被害者なのだ。
同じ身の上、同情はするが遠慮はしない。先に帰らせてもらうぞ。
全身を巡らす魔力を更に増やす、もちろん薙刀にも。豚頭が光る刀身を見てギョッとする。未知の威力に警戒したのだろう、受けに専念しだした。
しかしこいつは、手強い。何でも斬れる武器と言っても、刃を立てねば斬れない。
動く対象を斬るだけでも難しいのに。その上で、刀身の腹をカチ上げるように受け、椿の手首に柄を差し込んで斬撃を妨害してくる。そもそも攻撃が届きもしないのだ。
舌を巻く手練だ。
おまけに、少しでも足を止めれば、その巨体で押し込んでくる。槍の有効距離なんぞお構いなしだ!
くそ! 本当に祖父を相手にしているようだ。
こいつの槍の扱いは、この世界の槍術じゃない。どちらかと言うと杖術だ。左右の持ち手を広く開け、石突でかち上げて来たかと思うと、その石突を掴んで振り下ろしてくる。目まぐるしく間合いを変える攻めだ。樽のような腹をしているくせに、その動きは洗練されている。
もう攻め続けるしかない、受けに回ったら勝ち目はない。
少しずつ、確実に豚頭の槍の柄を削っていく。
戦場の喧騒がかき消え、圧縮された時間の中で数え切れない打ち合いが続く。
いい! 加減に! 諦めろ!
息の切れた豚頭が足を止めた一瞬、ついにその槍を圧し折ってやった。
返す刀で、その太い脚を切り飛ばす。
――いまだっ!
片膝を突き、地に手をつけ蹲る豚頭の首を落とす。
そのつもりで踏み込んだ瞬間、椿の腹を何かが貫いた。
「はグっ――」
……槍だ、地面から槍が生えている。槍は、地面に置いた豚頭の手の下から生えていた。
しまった、椿はコレをもう何度も見てきたはずだ。
霊穴の土俵から取り出した武器は埋めてあったのではない、作り出したのだ。きっと、この守り人の固有魔法なのだ。
更に槍を取り出す豚頭、表情などないはずのイノシシの顔が笑っていると分かる。腹を下から突き上げられ、足が軽く浮いてしまった。これではもう、抵抗することもできない。ふぐぅ、ここまでか……
その椿の前に、シェロブが立ち塞がった。
(何やってるの、逃げなさい)
もう、声が出ない。
確証はないけど、椿はやり直しが利くのだ。そんな人間をわざわざ庇って、命を捨てる必要はない。
シェロブはまだ、何か渾身の一手を講じているのか、ありったけの魔力をその身に循環させている。
シェロブと椿を一緒くたに串刺しにしたいのだろう。そんな立ち位置にゆっくりと移動した豚頭が槍を構えた瞬間――
――ヒュゴッ!!!
重く、鋭い音が響いてニヤける豚面が弾け飛んだ。その勢いで、巨躯が錐揉みして吹っ飛んでいく。
(何だ?!)
豚頭が居た位置に、ズドンと大音を立てて転がったのは、丸太だ。それも多分、鉄の。いつぞや見た、魚頭の槍をまとめてくっつけたような形をしている。
『おい、まだ死ぬなよ!
白いの、すぐ一番きついポーションだ!』
吹っ飛んだ守り人を一瞥もしないで、カザンが駆けつけてくる。
これか? コレがカザンの奥の手か? くそ、意識が朦朧としてよく分からなかった。
カザンは振動を与えないほど鋭く、椿の腹を貫く槍の柄を切断する。そして、崩れ落ちる椿の身体を、うつ伏せに横たえた。
『白いの、他人の身体の魔力を循環させられるか?』
『はい!』
『飲ませたらすぐだ、いくぞ』
言うやいなや、カザンは椿に刺さった槍を、背中側から一気に引き抜いた。ぎゃー! そっとやれ!! 腰に足を置いて椿の身体を地面に固定すると、本当に遠慮なく一気に引き抜いてきた!
確かにもう、魔力を操る気力はない。真剣な顔のシェロブが、椿の代わりにポーションの効果を最大限に得ようと、籠められた魔力を全身に巡らせていく。そして、腹の傷へ集めていくのが分かった。カザンがその上からザブザブとポーションを注いでくる。
でもポーションの治療って、傷が治る過程で痛みも戻るんだよね。
その痛みで、椿は意識を手放したのだった……
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