麗紗ちゃんは最狂メンヘラ

吉野かぼす

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第一章 ここから私達の全てが始まったんですよね先輩!

琥珀VS識英凍牙その2

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 これは……足止め厳しいな……。計画は変更だ。
 え? ようやく観念して麗紗ちゃんとラブラブ新婚生活を送るのかって? 違う違う! 

 私が好きなのは我が推し一人だけだ。推しイズナンバーワン! 
 まあそれは置いといて……。

 あいつの足止めが駄目なら……倒すんだよ!
 私の八重染琥珀はあいつの能力に遥かに負けている。

 でも、威力は幾らでも上げられるのが八重染琥珀だ。だから不意打ちを狙って一撃で決める! 

 ……私が特色者と戦う時って大体こんな戦法になるんだよな。能力の性質上仕方がない部分もあるけど。
 私はそう考え、厨房の方に逃げようとした。

「うわっ!」
 しかし私は滑って転んでしまった。

 床が冷たい。また透明な氷……! 今の一瞬で床一面を氷で覆ったのか……何て速さだ……! 

 氷で上手く身動きが取れない私を見て、コックが足にスケートのように刃状に氷を纏わせ言う。

「スケートはお嫌いですか?」
「やった事も無いよ!」

 私の返事にクスリと笑いながらコックは氷の上を優雅に滑り出した。

 なんか楽しそうだ。こいつムカつくわ~。
 などと思っていると奴は段々とスピードを上げ始めた。いや……段々なんてレベルじゃない。

 ほんの数秒で奴の姿がぶれて見える程の速さになっている。
 いやいやいや! 強すぎるでしょ! 

 本当何でコイツコックやってんの!? 特殊部隊か何かに入ってろよ! 

「スケートとはこういう――――――。楽――ですよ!」
「いやドップラー効果で何言ってるか全然分からん!」

「それでは――――!」
「止まれや一回!」

 私のツッコミも虚しくコックは残像が見える程までスピードを上げた。

 そして―――私でも知覚出来ない速さで氷弾が飛んできた。
 飛んできた、というのはあくまで推測。

 私の体が激しい痛みを感じて初めてようやくコックが氷弾か何かで攻撃してきているのが分かっただけだ。

 あまりの力の差に私はただ氷弾の雨に打たれる事しか出来なかった。

「ぎゃああああああああああああ!!」
「……この程度で倒れていてはお嬢様から逃げ切る事など不可能ですよ」
「なっ……! まさかあんた……!」

 倒れる私にコックは攻撃を止め私にそう言い放った。その意外な発言に驚く私にコックはため息をついて続ける。

「勘違いしないで下さい。私はあなたに逃げる事を諦めて頂く為に戦っているのですから」

「あっそ……ていうかあんた能力レベル幾つよ……」
「放出型のレベル8です。あなたは?」

 レベル8か……どうりであれだけ強い訳だ。最初めっちゃ手加減してたなこの野郎……。

「奇遇だね……私もあんたと同じ放出型だよ……レベル6だけど」
「レベル6ですか……その割には異様に強い気がしますが……おっと、そう言えば私自己紹介をしていませんでしたね。私はこの屋敷のコックを務めさせて頂いております識英凍牙と申します」

「凍牙か……いい名前なんじゃない? 私は弥栄琥珀。よろしくね――なんて言う訳ないでしょうが!」
「なっ!?」

 私は近くに散らばっている氷弾に八重染琥珀を注ぎ込み、

 爆発させ―――閃光を放った。
 眩い光が辺りを包む。

「ま、眩しい……!」
 コック改め凍牙は眩しさのあまり目を抑えている。 
 これならどんなにレベル差があっても効く。

 光る瞬間に目を瞑っていた私は体中が上げる悲鳴を堪えながら氷の上を八重染琥珀の加速で滑って厨房に向かい冷蔵庫の横に隠れた。

 さっきの攻撃もこれで避ければ良かった……。
 でもとりあえず不意打ち成功……! 後はとんでもない一撃を食らわせてやるだけだ。私の八重染琥珀なら出来る! 

 私はもう一つ拾っておいた氷弾を見つめながらそう思った。



「くっ……小癪な……あの人は一体何処に……!」
 閃光を受けた凍牙は琥珀を見失ってしまった。

「しかし何て応用の効く能力なんだ……! 私は少々あの能力の力を見誤っていた……!」

 それと同時に自分の見立ての甘さに嫌気が差す凍牙。あの能力はレベル7相当の力はあると考えていた彼だったが、琥珀はそれ以上の厄介さを出してみせた。

 凍牙はそこに自分の甘さと同時に感心も覚える。
 だから。

「ここは……私の必殺技を使わせて頂きましょう! “フリーズフィールド”!」

 凍牙がそう言い放った瞬間、彼の足元から出た氷がリビングを覆い始めた。

 先ほどまでの透明な氷ではないが、その量と速さは凄まじく、リビングを十数秒もしない内に氷で埋め尽くしていく。

 この“フリーズフィールド”は隠れた相手を確実にじわじわと追い詰めるのに最適である。

 “フリーズフィールド”によって囲まれた場所の気温は当然真冬以下であり、尚且つ氷に触れた物を感知する事も可能。

炎等を操る特色者でもない限りは絶対に回避不可能! 
「ふふ……これであなたはどう出る……?」
 凍牙は琥珀の出方を予想してほくそ笑んだ。





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