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第一章 ここから私達の全てが始まったんですよね先輩!
恋色紗織
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キンッ!
鉈は麗紗ちゃんの手首に当たると真ん中からへし折れた。
麗紗ちゃんの手首は薄く切れているだけで、鉈に切られる事なくしっかりと腕に繋がっていた。
えっ……麗紗ちゃんの手が無事だったのは良かったけど……どうなってるんだ? まさか……あの子の体が硬すぎて鉈も通らなかったのか!?
確かに特色者の身体能力は高いけど……ここまで高いのは聞いた事が無い。
「鉈じゃ脆過ぎましたか……すみません先輩、今すぐ苦しんで見せますから!」
「馬鹿ッ! やめなさい!」
私は無理矢理自分を苦しめようとする麗紗ちゃんの頬をぶった。
「あなたね……謝るってのは自分を傷つければいいって事じゃない! 反省を見せる事よ! 目を覚ましなさい!」
「せ、先輩……!」
私の言葉に麗紗ちゃんははっと我に返ったような顔をして言った。
「いや……先輩がこんな私にここまで言って下さる筈が無いわ……まだ私は幻を見ているの……甘い夢を見ているの……? 贖罪しなければならないのに……! 詫び続けなければいけないのに……!」
「れ、麗紗ちゃん! ちょっと! しっかりして! 現実よ!」
「幻は消えて! 私は絶対に現実に戻って先輩にお詫びするんだから! ああああぁあああぁっあああああああぁああああぁああああっ!」
「うわっ――!」
麗紗ちゃんはそう訳の分からない事を言って体から見えない何かを放った。
そのあまりの力に私の身体は温室の天井を突き破り空まで吹き飛ばされた。
これが千歳が天災と評した能力、“恋色紗織”……!
なんて威力なんだ……! 凍牙や千歳の能力とは比べ物にならない……!
……あの子、明確な敵意を持って攻撃したな。
私を自分が作り出した妄想の産物だと勝手に勘違いして。
あれだけ言ったのに。
本音を伝えたのに。
もう分かり合えないな。やっぱり理解出来ない。
言葉では、ね。
やっぱり拳で語り合うしかないな!
え? もういっそ逃げればいいんじゃないかって? ……仮にも私はあの子の先輩だ。一度は分かってくれたし。ここで麗紗ちゃんを見捨てるのは、私の良心が許さない!
あの子が目を覚ましてくれると私は信じる!
それに麗紗ちゃんの事を凍牙と千歳に託されている!
だから出来る事はやらないと。
私はそう決意して、温室の中へ着地した。
そして……ポケットの中から“キングビースト”を取り出してごくりと飲んだ。
「また先輩の幻ですか……私が会いたいのは本物の先輩なんです!」
「幻じゃないって言ってるだろ、バカ!」
麗紗ちゃんが私に向けて桃色の糸を目にも留まらない速度で射出する。私はそれを虹色に色を変えた八重染琥珀で躱し切った。
「なっ……何よあれ……! 何なのあの幻……!」
「すごい……力がどんどん湧き上がってくる……あの子の能力も見えるぞ……!」
千歳の薬凄いな。
2分も使ったらヘトヘトになるって言ってたけど、それでこれだけの力が出せるのならその位の代償は当然だろう。多分今の私はレベル10特色者クラスの力を出せている。
これなら麗紗ちゃんを止められる!
私はそう確信しながらも肩に八重染琥珀を注ぎ、麗紗ちゃんに全力で殴り掛かった。
「ごめんね……私だって本当はこんな事をしたくない! 麗紗ちゃんお願い! 正気に戻って!」
肩から虹色の火花が迸り、拳が音を軽々と追い越して麗紗ちゃんを吹き飛ばした。
「ぐうっ……!」
「これで戻るといいけど……!」
あまりの衝撃に体勢を崩した麗紗ちゃんを見ながら私は思わずそう呟いた。
麗紗ちゃんは立ち直って顔を上げ、様子を窺う私に言った。
「今の衝撃……あなたが本物の先輩なんですね! 感触があるって事は幻じゃない……! ようやく私は現実に戻ってこられたんですね!」
「良かった……! 元に戻って――」
「これでようやく、先輩にお詫びできますね……」
「は……?」
私が麗紗ちゃんの正気が戻ったと思ったその次の瞬間、彼女はもの悲しそうにそう言った。
元に……戻ってない!?
幻じゃないって分かったんじゃないのか……!?
「すみません先輩、幻と錯覚してしまってはいけないのでちょっと動かないで下さいね……“恋色紗織”」
「なっ!?」
麗紗ちゃんはそう私に謝りながら恋色紗織を発動させる。
私は慌てて八重染琥珀で加速しようとした。
「え!?」
でもその時にはもうすでに私の体には桃色の糸がハート結びで絡みついていた。
体が……動かない……!
千歳によると、麗紗ちゃんの能力“恋色紗織”は桃色の糸を具現化し超高速かつ凄まじい威力で放つ事が出来る能力らしい。糸の強度はいくらでも変える事ができ、強くしようと思えばレベル10特色者が3人がかりで能力攻撃をしてきても全く切れない程強くする事も可能。
そして……一番恐るべきなのが……。
糸で拘束した相手の行動を何でも制限する事が出来る能力。
例えば、ジャンケンでグーしか出せないようにしたりババ抜きでババを必ず一番右端にしか持てないようにしたりという事も可能。
一度これを食らってしまったら、本人の意思で解除されるまで永遠に麗紗ちゃんの支配下に置かれてしまう事も覚悟しなければならない。
その行動の中には、能力の発動、身体の自由や意識、視覚、聴覚等も含まれている。
絶対に相手を支配する力。
それが、“恋色紗織”なのだ。
不味い……くそっ、さっきまでは躱せると思ったのに……!
あれで本気じゃなかったのか……!
身体を動かそうとするけどピクリとも動いてくれない。
意識はあるし口は動くのに……。
「本当にお待たせしてすみませんでした……今度こそ私の贖罪を……反省をお見せします……」
「や、やめろ!」
私は却って安らかな表情をしている麗紗ちゃんに叫ぶ事しか出来なかった。
鉈は麗紗ちゃんの手首に当たると真ん中からへし折れた。
麗紗ちゃんの手首は薄く切れているだけで、鉈に切られる事なくしっかりと腕に繋がっていた。
えっ……麗紗ちゃんの手が無事だったのは良かったけど……どうなってるんだ? まさか……あの子の体が硬すぎて鉈も通らなかったのか!?
確かに特色者の身体能力は高いけど……ここまで高いのは聞いた事が無い。
「鉈じゃ脆過ぎましたか……すみません先輩、今すぐ苦しんで見せますから!」
「馬鹿ッ! やめなさい!」
私は無理矢理自分を苦しめようとする麗紗ちゃんの頬をぶった。
「あなたね……謝るってのは自分を傷つければいいって事じゃない! 反省を見せる事よ! 目を覚ましなさい!」
「せ、先輩……!」
私の言葉に麗紗ちゃんははっと我に返ったような顔をして言った。
「いや……先輩がこんな私にここまで言って下さる筈が無いわ……まだ私は幻を見ているの……甘い夢を見ているの……? 贖罪しなければならないのに……! 詫び続けなければいけないのに……!」
「れ、麗紗ちゃん! ちょっと! しっかりして! 現実よ!」
「幻は消えて! 私は絶対に現実に戻って先輩にお詫びするんだから! ああああぁあああぁっあああああああぁああああぁああああっ!」
「うわっ――!」
麗紗ちゃんはそう訳の分からない事を言って体から見えない何かを放った。
そのあまりの力に私の身体は温室の天井を突き破り空まで吹き飛ばされた。
これが千歳が天災と評した能力、“恋色紗織”……!
なんて威力なんだ……! 凍牙や千歳の能力とは比べ物にならない……!
……あの子、明確な敵意を持って攻撃したな。
私を自分が作り出した妄想の産物だと勝手に勘違いして。
あれだけ言ったのに。
本音を伝えたのに。
もう分かり合えないな。やっぱり理解出来ない。
言葉では、ね。
やっぱり拳で語り合うしかないな!
え? もういっそ逃げればいいんじゃないかって? ……仮にも私はあの子の先輩だ。一度は分かってくれたし。ここで麗紗ちゃんを見捨てるのは、私の良心が許さない!
あの子が目を覚ましてくれると私は信じる!
それに麗紗ちゃんの事を凍牙と千歳に託されている!
だから出来る事はやらないと。
私はそう決意して、温室の中へ着地した。
そして……ポケットの中から“キングビースト”を取り出してごくりと飲んだ。
「また先輩の幻ですか……私が会いたいのは本物の先輩なんです!」
「幻じゃないって言ってるだろ、バカ!」
麗紗ちゃんが私に向けて桃色の糸を目にも留まらない速度で射出する。私はそれを虹色に色を変えた八重染琥珀で躱し切った。
「なっ……何よあれ……! 何なのあの幻……!」
「すごい……力がどんどん湧き上がってくる……あの子の能力も見えるぞ……!」
千歳の薬凄いな。
2分も使ったらヘトヘトになるって言ってたけど、それでこれだけの力が出せるのならその位の代償は当然だろう。多分今の私はレベル10特色者クラスの力を出せている。
これなら麗紗ちゃんを止められる!
私はそう確信しながらも肩に八重染琥珀を注ぎ、麗紗ちゃんに全力で殴り掛かった。
「ごめんね……私だって本当はこんな事をしたくない! 麗紗ちゃんお願い! 正気に戻って!」
肩から虹色の火花が迸り、拳が音を軽々と追い越して麗紗ちゃんを吹き飛ばした。
「ぐうっ……!」
「これで戻るといいけど……!」
あまりの衝撃に体勢を崩した麗紗ちゃんを見ながら私は思わずそう呟いた。
麗紗ちゃんは立ち直って顔を上げ、様子を窺う私に言った。
「今の衝撃……あなたが本物の先輩なんですね! 感触があるって事は幻じゃない……! ようやく私は現実に戻ってこられたんですね!」
「良かった……! 元に戻って――」
「これでようやく、先輩にお詫びできますね……」
「は……?」
私が麗紗ちゃんの正気が戻ったと思ったその次の瞬間、彼女はもの悲しそうにそう言った。
元に……戻ってない!?
幻じゃないって分かったんじゃないのか……!?
「すみません先輩、幻と錯覚してしまってはいけないのでちょっと動かないで下さいね……“恋色紗織”」
「なっ!?」
麗紗ちゃんはそう私に謝りながら恋色紗織を発動させる。
私は慌てて八重染琥珀で加速しようとした。
「え!?」
でもその時にはもうすでに私の体には桃色の糸がハート結びで絡みついていた。
体が……動かない……!
千歳によると、麗紗ちゃんの能力“恋色紗織”は桃色の糸を具現化し超高速かつ凄まじい威力で放つ事が出来る能力らしい。糸の強度はいくらでも変える事ができ、強くしようと思えばレベル10特色者が3人がかりで能力攻撃をしてきても全く切れない程強くする事も可能。
そして……一番恐るべきなのが……。
糸で拘束した相手の行動を何でも制限する事が出来る能力。
例えば、ジャンケンでグーしか出せないようにしたりババ抜きでババを必ず一番右端にしか持てないようにしたりという事も可能。
一度これを食らってしまったら、本人の意思で解除されるまで永遠に麗紗ちゃんの支配下に置かれてしまう事も覚悟しなければならない。
その行動の中には、能力の発動、身体の自由や意識、視覚、聴覚等も含まれている。
絶対に相手を支配する力。
それが、“恋色紗織”なのだ。
不味い……くそっ、さっきまでは躱せると思ったのに……!
あれで本気じゃなかったのか……!
身体を動かそうとするけどピクリとも動いてくれない。
意識はあるし口は動くのに……。
「本当にお待たせしてすみませんでした……今度こそ私の贖罪を……反省をお見せします……」
「や、やめろ!」
私は却って安らかな表情をしている麗紗ちゃんに叫ぶ事しか出来なかった。
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