麗紗ちゃんは最狂メンヘラ

吉野かぼす

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第三章 ちゃんと私を見てくださいよ先輩!

幕開け

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(やっぱり来たわね……特色者……!)

 千歳は襲撃者の下へ暗い砂浜を全速力で走っていた。襲撃者の位置は、携帯の画面上に表示されている。

 島の防犯カメラの映像を携帯に映し出す程度の細工は千歳にとって朝飯前だった。

「おーい! 一人で行くなよ~」
「耕一郎ちゃん! 意外と早かったわね~」

 走る千歳の所に、耕一郎が駆けつける。
 今日の彼は珍しく積極的だった。

「当たり前だ。とっとと片付けて寝るぞ!」
「そうね!」

 耕一郎の言葉に千歳は笑顔で頷いた。
 非常事態でも耕一郎は耕一郎だった。

 そんな彼が千歳に問う。

「なあ、敵は何人だ?」
「6人よ。思ってたよりも多いわね」

「それ位だったらまあ何とかなるだろ」
「耕一郎ちゃんが本気出してくれればね」

「へっ、よく言うよ。お前も奥の手があるってのに……琥珀と戦った時は全然本気出してなかっただろお前」

 千歳の皮肉を皮肉で返す耕一郎。
 そう、彼女は琥珀と戦った時殆ど本気を出していなかった。

「当たり前でしょ。あんな所で本気出す訳無いわ。ちょっとお灸を据えたかっただけよ」

「……お前そんなだから恋人出来た事ね……」
「何? そんなだから何?」

 千歳は薬餌式ドライヤー銃を耕一郎の頭に向ける。
 その動きが一瞬で行われた事に耕一郎は戦慄する。

「い、いや何でもねえ。は、早く行こうぜ!」
「分かったわ!」

 耕一郎がそう言うと千歳は何事もなかったかのように銃を白衣にしまい前を向いて走り出した。

(つくづく危ねえ奴だな……これが昔女装を恥ずかしがってたガキとはな……)

 耕一郎は千歳の隣を走りながら苦笑した。
 と、そんな事がありながらも二人がしばらく走っていると。

「居たわ! 待ちなさい!」
「人の島で何やってんだ? ええ?」

 二人はついに島の端の浜辺で襲撃者を発見した。
 防犯カメラの映像と差異はなく6人。

 二人の声掛けに、水色の髪をした女の特色者――真乃が答えた。

「ふふ、暴れにきてやったのよ。鍬田。あんたを困らせる為にね!」
「あ? 誰だお前?」

「はぁ!? 何で覚えてないのよ!?」

 ビシッと耕一郎に指を差してそう言い放つ真乃だったが、残念な事に耕一郎は脳内に彼女を記憶に残していなかった。

 当然、真乃の積年の恨みが爆発する。

「……ふざけんじゃないわよッ!!!」
「おわっ!?」

 バネを生かした鋭い蹴りが耕一郎の腹に迫る。
 耕一郎は慌てて蹴りを右手で打ち払う。

「ぐっ……クソが!」
「いきなり襲い掛かってくるとはな……危ない危ない」

「いやどう見ても何かある感じじゃない……耕一郎ちゃん、あなた一体何したのよ……」

 何気なく言う耕一郎に千歳は怪訝な顔をする。
 そして真乃とは別の特色者――榎葉が二人に説明する。

「私らはとある会社からある製品の実験をここでするように言われててね。悪いがちょっと暴れさせて――」

「お、お前はぁっ!?」
「あ? ……な、何でテメエがここに……」

 耕一郎が元彼女である榎葉の存在に気付く。
 まさかの再会に、二人は言葉を失い固まってしまう。

 何とも言えない空気が流れ、皆が唖然として動けなくなる。

(ど、どういう事? なんで敵側に何かある感じの耕一郎ちゃんの知り合いが多いの?)

 千歳は必死に頭を整理するが追い付かない。
 襲撃者の目的は分かったものの状況が混乱していた。

 そんな中、一番最初に口を開いたのは真乃だった。

「……ねえ榎葉! あんたこのクソ野郎と知り合いってどういう事!? まさかあんたもコイツに何かされたの!?」

「……いや、俺はそいつに何も」
「アンタは黙ってて!!!」

 耕一郎が弁解しようとするも、真乃に一喝され黙らされてしまう。

 真乃は耕一郎を黙らせると榎葉をさらに問い詰めた。

「ねえ、どうなのよ……あんたもコイツが憎いんでしょ?」

「いや何かされたっつーか……私は特に何もされてねーけどとりあえずコイツシバこうぜ。お前はコイツに嫌な事されたんだろ?」

「榎葉……あんた……」

 榎葉の提案に、感動する真乃。
 何とも言えなかった空気が、段々と薄れていく。

「よし、榎葉! 私達はアイツを徹底的に叩きのめすわよ!」
「おう!」

「根津と霜降はこの白髪の女と、残り二人は桜月麗紗を食い止めなさい!」
「「「「はい!」」」」

 襲撃者達はようやく動き始めた。
 その様子を見守っていた千歳は、真乃の言動に引っ掛かっていた。

(“桜月麗紗を食い止めなさい”……? 正気なのこの女……いや、まさか……!)

 麗紗を食い止める。
 普通、いくら特色者であってもそれは不可能だ。

 だが真乃はその指示を下した。
 という事は、何かしらの策があるという証。

 千歳は半信半疑ながらも、脳内でその仮定を立てた。

 そしてその仮定は絶対に阻まなければならないものだった。

「させない!」

 千歳は銃を別荘の方向へと駆け出した二人の特色者に向けて乱射した。

 何個ものハート型の炎が、二人を焼き尽くそうとする。

 だがその炎は、突如現れた赤い魚雷によって防がれた。

「そういう事すんなよ。めんどくせーなあ」
「くっ……!」

「助かりましたよ! 危うく焼き熊になる所でした!」
「礼を言うぞ、女」

「へっ、さっさと行きな」

 二人の特色者は、榎葉に礼を言って夜の闇に消えていった。

 千歳は敵を二人逃がした事に歯噛みする。

 だがまだ敵は4人居る。
 迂闊に動けば状況は更に悪化する恐れがあった。

「悪いなかわい子ちゃん。君の相手は俺らだぜ」
「ごめんなさいね……戦わせて下さい……」

「はあ……しょうがないわね……あなた達と戦ってあげる」

 千歳の前に右近とつみれが立ちはだかる。
 ため息をつきながら千歳は二人に銃を構える。

「さあ……あの時の屈辱を……倍返しさせてもらうわ!」
「色々面倒だからお前をボコす」

「何だかよく分からねえけど……かかってきな!」

 耕一郎の前には真乃と榎葉が立つ。
 彼も拳を構えて臨戦態勢に入る。

「それじゃあ行くぜ……!」
「行きますよ……!」

 右近とつみれが、染色解放銃を取り出し、撃鉄を引く。

『『安定解除』』

「「変身!」」

 銃声が、戦いの幕開けとなった。



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