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第四章 プレゼントですよ先輩!
ナカヨシ
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「どうしてくれるんですか先輩……責任取って下さいよ……」
「いや……その……ごめん……」
「ごめんで済まされる話じゃないんですよ!」
麗紗が机をバンッ! と激しく叩き、鋭い剣幕でそう言い放つ。
ずしりと鉛のように重苦しい空気が、私がしてしまった事の重さを実感させる。
どうしてこんな事をしてしまったんだろう。
途中で、止められたはずなのに。
「先輩に怖い映画を観せられ続けた所為で私はいまだに腰が抜けて立ち上がれないんですよ! 本当にどうしてくれるんですか!」
「うん……本当に……ごめんね?」
麗紗は私と一緒にホラー映画を観続けたせいで腰が抜けて足が生まれたての小鹿のように震えていた。
正直、ここまで耐性が無いとは思わなかった。
とても自分の腕を鉈で切り落とそうとした子だとは思えない。
私は全然怖くはなかったけど面白かったからついつい見入ってしまった。
あらすじを言うと、人類がじわじわと宇宙人に侵略され、最終的には家畜として扱われそうになるのを主人公で警察官のイケオジがどうにかする話だ。
侵略のされ方が凄くリアルだったし、イケオジがかっこよくてラストもいい終わり方だった。
「私あっちで先輩とお菓子でも食べて落ち着きたいです」
「わかった、そうしようか」
「歩けないので運んでください先輩」
「はいはい……」
私はむくれている麗紗の肩と太ももに手を回して持ち上げた。
いわゆるお姫様抱っこの格好だ。
めちゃくちゃ軽いな。
こんな体のどこにあのパワーが隠されているのだろう。
「あ……ぇ……」
「ん? どうしたの麗紗?」
「いえ……何でも……(おんぶじゃないんですか琥珀先輩!?)」
なぜか恥ずかしそうに私から顔をそらす麗紗。
私なんかしたっけ……まあいいや。
麗紗を壁とかにぶつけないように気を付けながら運んでいく。
「……まったく、そういうところですよ琥珀先輩」
「? 何か言った?」
麗紗がぼそっと何かを呟いたが、私は声が小さくてよく聞こえなかった。
私がそう聞くと、麗紗は怒り気味に返した。
「なんでもないです!」
「そ、そう……」
でもその声は心なしか弾んでいたような気がした。
そしてこの後麗紗にめちゃくちゃお菓子をあーんされた。
*
*
*
「くっ……琥珀さんが来ているというのにおもてなし出来ないとは……」
『なんだよ~? オレのせいってか?』
「お前は黙ってろ……! 峠……!」
凍牙は自室のベッドで右目を抑えながら寝込んでいた。
島で峠を解放した反動が凍牙を襲ったのだ。
だが今は、それに加えて時々峠が表に出てくるようになっていた。
『ひでえ言い方だなあ凍牙。オレはオマエの一面なんだ。もっとナカヨクしようぜ~』
「ふざけるな……勝手に出ては暴れ回るような奴なんか信用出来るか……!」
『おいおい、アバレる事のなにが悪いんだよ~!』
「悪い事しか無いだろう! だからお前は嫌いなんだ!」
凍牙からすれば、峠は自分の内側に眠る危険な怪物。
何としてでも止めなければならない存在だった。
凍牙は必死に峠を抑えようとしていた。
だが峠は、それをものともせずあっさりと表面に出てくる。
『キライだなんて……うう……あんまりだぜ……! 凍牙の人でなし!』
「お前に言われたくはない!」
峠は凍牙の冷たい態度に傷付き、枕を濡らした。
実を言うと、峠の心は非常に脆い。
峠という人格は凍牙がまだ幼い頃に封じ込められた為、精神年齢がかなり低いのだ。
故に能力の精密性も低い。
『それに凍牙ってばよわっちいし……そのせいであの気持ち悪い奴に負けちゃったじゃんよ~』
「私の修行不足だ。そこは認めるが……」
『そーだよ。もっと鍛えろよ~。オレはそんな必要ないけどな!』
峠に言われて、凍牙はあの化物の事が脳裏に浮かぶ。
あの強さは、はっきり言って別格だった。
もう失うものが一切無い、全てをかなぐり捨てたかのような強さ。
それに勝ったのが、ただの女子高生だったはずの琥珀。
凍牙は、琥珀が麗紗と仲を深めれば深める程強くなっているのを感じていた。
守るべきものがある人間の強さ――。
それが琥珀の強さなのだろうと、凍牙は考えていた。
(私は、どちらの強さを持っているんだろう)
『まだヘタレなクセによく言えるなぁ!』
「今度千歳さんに左目取って貰いますか……」
『そんなことしてもイミねーよ! やめとけ!』
自分はどちら側の人間なのだろうと葛藤する凍牙に茶々を入れる峠。
これでは嫌われるのも無理もなかった。
『オマエよ~。そんなに強くなりたいんだったら、いい方法があるぜ?』
『どうせ表に出せとか言うんだろ。断る』
峠の提案を先読みして断る凍牙。
それでも峠はめげずに凍牙に頼み込む。
『ピンポン! 正解でーす! 分かってんなら出してくれよ! アバレるのは控えめにするからさぁ!』
「……もうお前は何も言うな。何をしてでも俺はお前を出さない。それだけだ」
『……』
そんな峠に、凍牙はきっぱりとそう言い放った。
峠は、毅然とした凍牙の態度に押されて口を噤ぐ。
(オレも、オマエの一面なんだよ、凍牙)
その思いが今の凍牙に届く事はなかった。
「いや……その……ごめん……」
「ごめんで済まされる話じゃないんですよ!」
麗紗が机をバンッ! と激しく叩き、鋭い剣幕でそう言い放つ。
ずしりと鉛のように重苦しい空気が、私がしてしまった事の重さを実感させる。
どうしてこんな事をしてしまったんだろう。
途中で、止められたはずなのに。
「先輩に怖い映画を観せられ続けた所為で私はいまだに腰が抜けて立ち上がれないんですよ! 本当にどうしてくれるんですか!」
「うん……本当に……ごめんね?」
麗紗は私と一緒にホラー映画を観続けたせいで腰が抜けて足が生まれたての小鹿のように震えていた。
正直、ここまで耐性が無いとは思わなかった。
とても自分の腕を鉈で切り落とそうとした子だとは思えない。
私は全然怖くはなかったけど面白かったからついつい見入ってしまった。
あらすじを言うと、人類がじわじわと宇宙人に侵略され、最終的には家畜として扱われそうになるのを主人公で警察官のイケオジがどうにかする話だ。
侵略のされ方が凄くリアルだったし、イケオジがかっこよくてラストもいい終わり方だった。
「私あっちで先輩とお菓子でも食べて落ち着きたいです」
「わかった、そうしようか」
「歩けないので運んでください先輩」
「はいはい……」
私はむくれている麗紗の肩と太ももに手を回して持ち上げた。
いわゆるお姫様抱っこの格好だ。
めちゃくちゃ軽いな。
こんな体のどこにあのパワーが隠されているのだろう。
「あ……ぇ……」
「ん? どうしたの麗紗?」
「いえ……何でも……(おんぶじゃないんですか琥珀先輩!?)」
なぜか恥ずかしそうに私から顔をそらす麗紗。
私なんかしたっけ……まあいいや。
麗紗を壁とかにぶつけないように気を付けながら運んでいく。
「……まったく、そういうところですよ琥珀先輩」
「? 何か言った?」
麗紗がぼそっと何かを呟いたが、私は声が小さくてよく聞こえなかった。
私がそう聞くと、麗紗は怒り気味に返した。
「なんでもないです!」
「そ、そう……」
でもその声は心なしか弾んでいたような気がした。
そしてこの後麗紗にめちゃくちゃお菓子をあーんされた。
*
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「くっ……琥珀さんが来ているというのにおもてなし出来ないとは……」
『なんだよ~? オレのせいってか?』
「お前は黙ってろ……! 峠……!」
凍牙は自室のベッドで右目を抑えながら寝込んでいた。
島で峠を解放した反動が凍牙を襲ったのだ。
だが今は、それに加えて時々峠が表に出てくるようになっていた。
『ひでえ言い方だなあ凍牙。オレはオマエの一面なんだ。もっとナカヨクしようぜ~』
「ふざけるな……勝手に出ては暴れ回るような奴なんか信用出来るか……!」
『おいおい、アバレる事のなにが悪いんだよ~!』
「悪い事しか無いだろう! だからお前は嫌いなんだ!」
凍牙からすれば、峠は自分の内側に眠る危険な怪物。
何としてでも止めなければならない存在だった。
凍牙は必死に峠を抑えようとしていた。
だが峠は、それをものともせずあっさりと表面に出てくる。
『キライだなんて……うう……あんまりだぜ……! 凍牙の人でなし!』
「お前に言われたくはない!」
峠は凍牙の冷たい態度に傷付き、枕を濡らした。
実を言うと、峠の心は非常に脆い。
峠という人格は凍牙がまだ幼い頃に封じ込められた為、精神年齢がかなり低いのだ。
故に能力の精密性も低い。
『それに凍牙ってばよわっちいし……そのせいであの気持ち悪い奴に負けちゃったじゃんよ~』
「私の修行不足だ。そこは認めるが……」
『そーだよ。もっと鍛えろよ~。オレはそんな必要ないけどな!』
峠に言われて、凍牙はあの化物の事が脳裏に浮かぶ。
あの強さは、はっきり言って別格だった。
もう失うものが一切無い、全てをかなぐり捨てたかのような強さ。
それに勝ったのが、ただの女子高生だったはずの琥珀。
凍牙は、琥珀が麗紗と仲を深めれば深める程強くなっているのを感じていた。
守るべきものがある人間の強さ――。
それが琥珀の強さなのだろうと、凍牙は考えていた。
(私は、どちらの強さを持っているんだろう)
『まだヘタレなクセによく言えるなぁ!』
「今度千歳さんに左目取って貰いますか……」
『そんなことしてもイミねーよ! やめとけ!』
自分はどちら側の人間なのだろうと葛藤する凍牙に茶々を入れる峠。
これでは嫌われるのも無理もなかった。
『オマエよ~。そんなに強くなりたいんだったら、いい方法があるぜ?』
『どうせ表に出せとか言うんだろ。断る』
峠の提案を先読みして断る凍牙。
それでも峠はめげずに凍牙に頼み込む。
『ピンポン! 正解でーす! 分かってんなら出してくれよ! アバレるのは控えめにするからさぁ!』
「……もうお前は何も言うな。何をしてでも俺はお前を出さない。それだけだ」
『……』
そんな峠に、凍牙はきっぱりとそう言い放った。
峠は、毅然とした凍牙の態度に押されて口を噤ぐ。
(オレも、オマエの一面なんだよ、凍牙)
その思いが今の凍牙に届く事はなかった。
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