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私、やっと分かったんだよ麗紗
いかないでよ
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「“いかないでよ育造くん”……? 恋愛マスターのバイブルってこの少女漫画……?」
麗紗はその少女漫画の可愛らしい表紙をまじまじと見つめながら首を傾げる。
「そう! 信じられないかもしれないけど、信じる者は救われるのよ!」
「でも少女漫画ってキレイでキラキラしてる感じの純粋な話が多いから参考にはならないんじゃ……」
「そんな事ないわよ! 少女漫画っていうのは意外とドロドロしてるのよ! 舐めてかかったら心を病むわ!」
「そ、そんなに?」
半信半疑な麗紗に、真乃はそう誇張して言い放つ。
ただ、少女漫画が泥沼のように重い話である事は多い。
主人公の恋のライバルが大抵性格が捻じ曲がっており、平気で主人公にタチの悪い陰湿ないじめを仕掛けてくるのだ。
“少女”漫画なので女性の醜い面が克明に描かれているのである。
ヤンデレな子も結構登場するので少女漫画は男性にもオススメだ!
「まあ分かったわ……! そういう先入観はよくないし……真剣に読んでみるわ!」
「それでいいのよ! 先輩を落とす為に頑張りなさい!」
「当たり前じゃない! 絶対に先輩は私のものよ……!」
凄まじい熱量で漫画を読み進める麗紗を見て、真乃はほっと胸を撫で下ろした。
(たぶんこれで大丈夫でしょ……私もあの時は少女漫画を参考にしたし……いやあの時はカウントに入れないけど! それにいざ失敗してもこの漫画が間違ってた事にすればいいし! これで私に矛先が向かずに済むわ!)
それが一番の悪手であるとも知らずに。
*
*
*
屋敷の庭で。
「“百姓一気”」
「おらぁっ!」
耕一郎が放ったトラクターに漢野がパンチを撃ち込んだ。
トラクターがバラバラに砕け散り、ガラクタと化す。
「殴りがいがねえな……もっと硬いの出してくれよ師匠ォ! ……ってまた土の中に隠れやがった! そいつぁ卑怯だぜ!」
漢野は周囲に広がる土煙に向かって叫ぶ。
しかし土煙の中から返事は返ってこなかった。
「でもよ……別に見えなくても勘で分かんだよ……!」
漢野は目を閉じて触感や第六感を頼りに耕一郎の気配を探る。
彼の能力“ド根性馬鹿力”はそういった感覚なども強化するのだ。
「分かった……! 上だ!」
耕一郎の気配があった方向を見上げる漢野。
しかし上空にセスナが滑空しているのみで耕一郎の姿は見当たらない。
「どうなってんだ……? ってまさか……!」
漢野がある事に気付いたその瞬間、彼の近くに上空から何かが落下してきた。
「何だこりゃ……この匂い……何かの燃料か?」
それは燃料らしき液体が入ったポリタンク。
どれも落下の衝撃に耐えきれず割れており、その割れ目から中の液体が漏れ出している。
そこに、点火されている状態の火炎放射器が落とされる。
火が燃料を得て一気に燃え広がり、漢野の体を焼き焦がす。
「のわっ! あっつあっつ! やめろよ! 日焼けしちまうだろ! ふっ!」
漢野は大きく息を吸い込んで吐き出し、突風を起こした。
業火がロウソクの火のように儚く消える。
「へへ……火なんて息吹きゃ消えるもんなんだよ!」
「嘘だろ……ちょっとは効くと思ったんだけどな~」
その様子を上空から見ていた耕一郎はポリポリと頭を掻いた。
彼が考えていた以上に漢野が強かったのだ。
「めんどくせえから……鉄砲玉でもするか」
耕一郎はあくびをしながらセスナを急降下させる。
「ん……? 今度は……こっちに向かってきやがったかぁ!」
漢野は自分の方に迫り来るセスナを見て目を輝かせた。
そして漢野は仁王立ちして正々堂々とセスナを待ち構える。
「来いよ……! 一回飛行機のヤツと力比べしてみたかったんだよォ!」
セスナが、漢野の眼前まで迫る。
漢野は両手を突き出し真正面からセスナを受け止める。
「おお……っ! こいつぁ面白ぇ……! すげえパワーだァ! でも俺の方が強えッ!」
セスナの機体が漢野に持ち上げられ、ちゃぶ台のように引っ繰り返される。
機体が爆ぜ炎が立ち昇った。
「俺の勝ちだぜ飛行……どわっ!?」
「隙ありィ!」
耕一郎が勝利宣言をする漢野の背中にトラクターを投げつける。
彼はセスナが墜落する寸前に脱出したのだ。
そして漢野が隙を見せるであろう時に不意打ちを放つ用意をしていた。
それが今のタイミングだったのである。
「やっと正面から来てくれたか……! 師匠ォ!」
「違うわ! 何で今のでピンピンしてんだよお前!」
「根性だ! 根性で大体どうにかなんだよ!」
しかしその程度でへばる漢野ではない。
漢野は耕一郎の腹に拳を突き出した。
「ぐおっ……!」
耕一郎の勝負服が弾け飛ぶ。
「漢野さんの勝ちです!」
「しゃあっ!」
二人の勝負を見守っていた凍牙が、漢野の勝利を宣言する。
漢野は思わずガッツポーズを決め……。
「ぎゃあああああ! 目がしみる! 目がしみるぅ! 何じゃこりゃ!?」
「イタチの最後っ屁ってやつだ。実際の喧嘩だったら引き分けだったな!」
ゴシゴシと目を擦り始めた。
耕一郎が最後の最後で自分の周りに農薬を霧状に撒いていたのだ。
「大人げないですよ耕一郎さん……」
「決闘中にやったんだからルール違反じゃねえぞ! だから何も問題はねえ!」
そんな耕一郎に、凍牙が呆れて言う。
耕一郎は全く悪びれる様子を見せないが、彼の言う通り決闘のルール上の問題は全く無い。
「その通りだぜ……! それにこれ位やってもらわねえと――あいつに勝てねえ」
漢野は目を擦るのを止め、凍牙に言った。
目に闘志を滾らせながら。
「“あいつ”とは……まさか……」
「麗紗の事だよ。またいつ暴れ出すかも分かんねえだろ?」
麗紗はその少女漫画の可愛らしい表紙をまじまじと見つめながら首を傾げる。
「そう! 信じられないかもしれないけど、信じる者は救われるのよ!」
「でも少女漫画ってキレイでキラキラしてる感じの純粋な話が多いから参考にはならないんじゃ……」
「そんな事ないわよ! 少女漫画っていうのは意外とドロドロしてるのよ! 舐めてかかったら心を病むわ!」
「そ、そんなに?」
半信半疑な麗紗に、真乃はそう誇張して言い放つ。
ただ、少女漫画が泥沼のように重い話である事は多い。
主人公の恋のライバルが大抵性格が捻じ曲がっており、平気で主人公にタチの悪い陰湿ないじめを仕掛けてくるのだ。
“少女”漫画なので女性の醜い面が克明に描かれているのである。
ヤンデレな子も結構登場するので少女漫画は男性にもオススメだ!
「まあ分かったわ……! そういう先入観はよくないし……真剣に読んでみるわ!」
「それでいいのよ! 先輩を落とす為に頑張りなさい!」
「当たり前じゃない! 絶対に先輩は私のものよ……!」
凄まじい熱量で漫画を読み進める麗紗を見て、真乃はほっと胸を撫で下ろした。
(たぶんこれで大丈夫でしょ……私もあの時は少女漫画を参考にしたし……いやあの時はカウントに入れないけど! それにいざ失敗してもこの漫画が間違ってた事にすればいいし! これで私に矛先が向かずに済むわ!)
それが一番の悪手であるとも知らずに。
*
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屋敷の庭で。
「“百姓一気”」
「おらぁっ!」
耕一郎が放ったトラクターに漢野がパンチを撃ち込んだ。
トラクターがバラバラに砕け散り、ガラクタと化す。
「殴りがいがねえな……もっと硬いの出してくれよ師匠ォ! ……ってまた土の中に隠れやがった! そいつぁ卑怯だぜ!」
漢野は周囲に広がる土煙に向かって叫ぶ。
しかし土煙の中から返事は返ってこなかった。
「でもよ……別に見えなくても勘で分かんだよ……!」
漢野は目を閉じて触感や第六感を頼りに耕一郎の気配を探る。
彼の能力“ド根性馬鹿力”はそういった感覚なども強化するのだ。
「分かった……! 上だ!」
耕一郎の気配があった方向を見上げる漢野。
しかし上空にセスナが滑空しているのみで耕一郎の姿は見当たらない。
「どうなってんだ……? ってまさか……!」
漢野がある事に気付いたその瞬間、彼の近くに上空から何かが落下してきた。
「何だこりゃ……この匂い……何かの燃料か?」
それは燃料らしき液体が入ったポリタンク。
どれも落下の衝撃に耐えきれず割れており、その割れ目から中の液体が漏れ出している。
そこに、点火されている状態の火炎放射器が落とされる。
火が燃料を得て一気に燃え広がり、漢野の体を焼き焦がす。
「のわっ! あっつあっつ! やめろよ! 日焼けしちまうだろ! ふっ!」
漢野は大きく息を吸い込んで吐き出し、突風を起こした。
業火がロウソクの火のように儚く消える。
「へへ……火なんて息吹きゃ消えるもんなんだよ!」
「嘘だろ……ちょっとは効くと思ったんだけどな~」
その様子を上空から見ていた耕一郎はポリポリと頭を掻いた。
彼が考えていた以上に漢野が強かったのだ。
「めんどくせえから……鉄砲玉でもするか」
耕一郎はあくびをしながらセスナを急降下させる。
「ん……? 今度は……こっちに向かってきやがったかぁ!」
漢野は自分の方に迫り来るセスナを見て目を輝かせた。
そして漢野は仁王立ちして正々堂々とセスナを待ち構える。
「来いよ……! 一回飛行機のヤツと力比べしてみたかったんだよォ!」
セスナが、漢野の眼前まで迫る。
漢野は両手を突き出し真正面からセスナを受け止める。
「おお……っ! こいつぁ面白ぇ……! すげえパワーだァ! でも俺の方が強えッ!」
セスナの機体が漢野に持ち上げられ、ちゃぶ台のように引っ繰り返される。
機体が爆ぜ炎が立ち昇った。
「俺の勝ちだぜ飛行……どわっ!?」
「隙ありィ!」
耕一郎が勝利宣言をする漢野の背中にトラクターを投げつける。
彼はセスナが墜落する寸前に脱出したのだ。
そして漢野が隙を見せるであろう時に不意打ちを放つ用意をしていた。
それが今のタイミングだったのである。
「やっと正面から来てくれたか……! 師匠ォ!」
「違うわ! 何で今のでピンピンしてんだよお前!」
「根性だ! 根性で大体どうにかなんだよ!」
しかしその程度でへばる漢野ではない。
漢野は耕一郎の腹に拳を突き出した。
「ぐおっ……!」
耕一郎の勝負服が弾け飛ぶ。
「漢野さんの勝ちです!」
「しゃあっ!」
二人の勝負を見守っていた凍牙が、漢野の勝利を宣言する。
漢野は思わずガッツポーズを決め……。
「ぎゃあああああ! 目がしみる! 目がしみるぅ! 何じゃこりゃ!?」
「イタチの最後っ屁ってやつだ。実際の喧嘩だったら引き分けだったな!」
ゴシゴシと目を擦り始めた。
耕一郎が最後の最後で自分の周りに農薬を霧状に撒いていたのだ。
「大人げないですよ耕一郎さん……」
「決闘中にやったんだからルール違反じゃねえぞ! だから何も問題はねえ!」
そんな耕一郎に、凍牙が呆れて言う。
耕一郎は全く悪びれる様子を見せないが、彼の言う通り決闘のルール上の問題は全く無い。
「その通りだぜ……! それにこれ位やってもらわねえと――あいつに勝てねえ」
漢野は目を擦るのを止め、凍牙に言った。
目に闘志を滾らせながら。
「“あいつ”とは……まさか……」
「麗紗の事だよ。またいつ暴れ出すかも分かんねえだろ?」
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