麗紗ちゃんは最狂メンヘラ

吉野かぼす

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私、やっと分かったんだよ麗紗

どん、なと、きでも

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「あ、あああ……」
『……っ』

「嘘だろ……」

 皆、目の前に広がる麗紗の血飛沫に言葉を失った。

『あいつ……やっぱり人間じゃないわ』
『狂気以外の感情を全く感じない……怖いわね』

 二人ですらもかつて琥珀だったものに吐き気がする程の悍ましさを感じた。

「麗紗ぁ~!」

 かつて琥珀だったものは麗紗の生首をひとしきり愛でると、瘴気の剣を凍牙に向けて構える。

「琥珀さん……! いや……もう琥珀さんなんかじゃない……! ああああああああああああああっ!」

『ふざけやがって……! ああああああああああああああっ!』

 二人はかつて琥珀だったものに全身全霊で氷塊を放つ。

「もっと好きって言ってぇー!」

「『ぐあああああああああああああああっ!』」

 しかしそれは瘴気の剣の前では霧同然だった。
 二人は斬撃の余波に宙に投げ出された。

「てめえ……この野郎ぉーーーーーーっ!!!」

 漢野がかつて琥珀だったものに殴り掛かる。

「もっと私を愛してぇー!」
「があっ……!」

 瘴気の剣が、漢野の腕に鮮血を走らせた。
 漢野は傷口を手で抑えて痛みに耐える。

『あの人間が押された……あいつ、力が増しているわ』

『狂気が増して強くなったのね……早く倒さないと手に負えなくなるわね……!』

 二人は水色の砲撃をかつて琥珀だったものに乱れ撃つ。
 それも凶刃の前に無に帰した。

「ずっと私と一緒に居てよ、麗紗」

 かつて琥珀だったものは瘴気の剣から闇を迸らせる。

「しまった……!」

 漢野は咄嗟に両腕を上げてガードをした。
 が、瘴気の剣が振るわれる事は無かった。

「が……あ……っ……」
「なっ……」

 首が切り離された麗紗の体が、突きを放つ。
 それは無量の愛と決死の覚悟が籠った、あまりにも重い突きだった。

 拳が瘴気の剣を真っ二つに打ち砕き、かつて琥珀だったものの体を吹き飛ばす。

「わた、しは――どん、なと、きでも――あなたの、ことを――」

 麗紗の生首の口が微かに動き言葉を紡ぐが、最後までは紡げられなかった。

 麗紗の体が、糸の切れた人形のようにぱたりと倒れる。

「「『『『……………………………………………』』』」」

 この場に居た誰もが、唖然とさせられた。

 そんな皆を後目に、かつて琥珀だったものから瘴気が蒸発するように立ち消え、元の琥珀が露わになる。

「あれは……!」
『まさか……!』



「ここ……は……」

 どこなんだろう。
 私は今まで、何をしていたんだ? 

 見慣れない光景に私は混乱した。
 というかこの死体の山は一体……。

 頭が寝起きのように働いてくれない。
 どうして私はこんな所に居るんだろう。

 ここに来るまでの記憶が全くない。
 何で思い出せないんだ……。

 私は必死に脳を働かせながら、ゆっくりと体を起こした。
 そして見てしまった。

 胴体と首が切り離された、麗紗の死体を。

「うっ……あああああああああああああっ!!!」

 それが引き金になって、今まで……私が麗紗に襲われてからの記憶が全部蘇った。

 あのおぞましい快感も、命を刈り取る愉しさも。

「あああ……」

 私は、取返しのつかないことをしてしまった。
 多くの罪の無い人の命を奪い、麗紗の命まで……。

 私は、ふらついた足取りで麗紗の亡骸のもとに駆け寄った。

「麗紗……ごめんなさい……」
「琥珀さん……戻られたのですね」

「うん……」

 凍牙は哀しさの抜けない表情でそう言った。
 麗紗は命を懸けてまで私を戻してくれたんだ。

 最期まで、私の事を、一途に、ひたむきに、不器用に愛していた。

 大きく道を踏み外してしまったけれど。

「ごめん……今まであなたの愛に応えられなくて」

 もし私が、もっと麗紗の事を好きになれていたら、麗紗も道を誤る事は無かったのかもしれない。

 そう思うと、とてもやるせない気持ちになった。
 でも……せめて私は、今からでも麗紗の想いに応えたい。

 遅すぎるけど。

「私も……あなたのことが、好きだから」

 想いを口にして、麗紗の唇にそっとキスをした。
 ふわりとした感触に、血の味が混じる。

 それでも私は、血の中にほのかな甘さを感じた。

「麗紗……ちょっと待っててね……すぐに終わらせるから」

 私は、聞こえないと分かっていても、麗紗にそう言って、空気中に両手で八重染琥珀を注いだ。

 その琥珀色の光を、眩く練り上げ、双剣を象った。
 麗紗への想いを込めて。

「“ガチ恋セイバー”」

 これでやっと、名前通りの剣になった。
 光り輝く“ガチ恋セイバー”を見て私はそう思った。







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