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そして二年が過ぎ
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「フレイズ、大丈夫よ、ここは私のお友達の家よ」
レティーシャさまが、炎に構わずフレイズ嬢を抱き上げる。フレイズ嬢がレティーシャさまにぎゅっと抱きついて、炎は収まった。
レティーシャさま、ドレスが焦げているように見えますが、大丈夫ですか!?
「知らない場所だったから驚いたみたい」
そう言いながら、レティーシャさまはフレイズ嬢の手首に水色のリボンを巻き直した。目が覚めたら知らない場所で知らない人がいれば、驚くのは分かる。
でも何で炎が出るの? 二歳で魔法使いなの?
「フレイズは魔力が多いから、ちょっとしたことで洩れちゃうのよ」
後で知ったことだが、魔力の多い人は、感情が昂ると魔力が洩れだすことがあるらしい。火属性だと感情の揺れに呼応してろうそくの炎が燃え盛ったりするらしい。フレイズ嬢の場合も魔法を使って炎を出した訳ではなく、洩れた魔力が炎という形に具現化しただけで……少し驚いただけで炎が出ちゃうって、どゆこと? どんだけ魔力多いの?
「それを抑えるために、この水色のリボンをいつも巻いてるんだけど」
あの水色のリボンは、抑制のための魔術具だったらしい。
それを私が解いてしまったと……あああ、ごめんなさい!!
「リボン解けそうだったから、結び直してあげようと思ったの」
説明しながら、私はもう涙目である。知らなかったとはいえ、全面的に私が悪い。
「気にしなくていいのよ。こっちこそごめんなさいね。二人とも怪我はないわね?」
レティーシャさまが、私とシオン兄さまに確認する。
「大丈夫、です」
呆然としていたシオン兄さまが、声を掛けられて再起動した。
兄さまも大変である。妹が猫になったかと思ったら、次は目の前で令嬢が燃え上がったり。
「私も大丈夫です」
レティーシャさまが抱き上げてフレイズ嬢から離してくれてなかったら危なかったかもだけど。
「ハルシャ、焦げたものは弁償するから請求して頂戴」
「いいえレティーシャさま、大したことはありませんから」
フレイズ嬢が眠っていたソファが少し焦げた程度である。
「レティーシャさまこそお怪我は? フレイズさまも」
ドレスの焦げているレティーシャさまが、母さまは心配でならないようだ。
「私も火属性だから他の人より耐性があるわ、心配しないで。フレイズは自分の魔力には害されないし」
よく分からないけど、怪我がないなら良かった。
結局お茶会は、予定より早くお開きとなり、レティーシャさまたちは帰って行った。
「あれだけの騒ぎで猫にならなかったんだから、本当に大丈夫なのね」
母さまにしみじみと言われて、お茶会が、クマのぬいぐるみとリボンの効果の最終確認だったことを思い出す。
うん、あれ以上のインパクトはそうないだろう。
その後、ジスカール家から新しいソファが届いたり、明るい色のリボンが届いたり。
クマのぬいぐるみを抱いたりリボンをつけるのは、ここぞという時だけで、普段は呪いを阻害することなく何かの拍子に猫になりつつ日々を過ごす。気分転換に、わざと猫になって外に出るという技も会得した。
猫で日向ぼっこ、最高である。
母さまの希望と、ジスカール卿の要望により、最初は二ヶ月ごとに、魔導研究所の御子息の研究室に、様子を見てもらいに通った。特に何の異常もないまま一年が過ぎたので、三ヶ月ごとになった。私の体が心配で、と診察を希望していた母さまが、『今後は三ヶ月ごとでいいでしょう』と言われたときにとてもがっかりしていた。
母さま、何となく分かってたけど、私が心配っていうより、レティーシャさまに会いたかっただけだよね!?
そしていつの間にか私は、五歳を迎えていた。
レティーシャさまが、炎に構わずフレイズ嬢を抱き上げる。フレイズ嬢がレティーシャさまにぎゅっと抱きついて、炎は収まった。
レティーシャさま、ドレスが焦げているように見えますが、大丈夫ですか!?
「知らない場所だったから驚いたみたい」
そう言いながら、レティーシャさまはフレイズ嬢の手首に水色のリボンを巻き直した。目が覚めたら知らない場所で知らない人がいれば、驚くのは分かる。
でも何で炎が出るの? 二歳で魔法使いなの?
「フレイズは魔力が多いから、ちょっとしたことで洩れちゃうのよ」
後で知ったことだが、魔力の多い人は、感情が昂ると魔力が洩れだすことがあるらしい。火属性だと感情の揺れに呼応してろうそくの炎が燃え盛ったりするらしい。フレイズ嬢の場合も魔法を使って炎を出した訳ではなく、洩れた魔力が炎という形に具現化しただけで……少し驚いただけで炎が出ちゃうって、どゆこと? どんだけ魔力多いの?
「それを抑えるために、この水色のリボンをいつも巻いてるんだけど」
あの水色のリボンは、抑制のための魔術具だったらしい。
それを私が解いてしまったと……あああ、ごめんなさい!!
「リボン解けそうだったから、結び直してあげようと思ったの」
説明しながら、私はもう涙目である。知らなかったとはいえ、全面的に私が悪い。
「気にしなくていいのよ。こっちこそごめんなさいね。二人とも怪我はないわね?」
レティーシャさまが、私とシオン兄さまに確認する。
「大丈夫、です」
呆然としていたシオン兄さまが、声を掛けられて再起動した。
兄さまも大変である。妹が猫になったかと思ったら、次は目の前で令嬢が燃え上がったり。
「私も大丈夫です」
レティーシャさまが抱き上げてフレイズ嬢から離してくれてなかったら危なかったかもだけど。
「ハルシャ、焦げたものは弁償するから請求して頂戴」
「いいえレティーシャさま、大したことはありませんから」
フレイズ嬢が眠っていたソファが少し焦げた程度である。
「レティーシャさまこそお怪我は? フレイズさまも」
ドレスの焦げているレティーシャさまが、母さまは心配でならないようだ。
「私も火属性だから他の人より耐性があるわ、心配しないで。フレイズは自分の魔力には害されないし」
よく分からないけど、怪我がないなら良かった。
結局お茶会は、予定より早くお開きとなり、レティーシャさまたちは帰って行った。
「あれだけの騒ぎで猫にならなかったんだから、本当に大丈夫なのね」
母さまにしみじみと言われて、お茶会が、クマのぬいぐるみとリボンの効果の最終確認だったことを思い出す。
うん、あれ以上のインパクトはそうないだろう。
その後、ジスカール家から新しいソファが届いたり、明るい色のリボンが届いたり。
クマのぬいぐるみを抱いたりリボンをつけるのは、ここぞという時だけで、普段は呪いを阻害することなく何かの拍子に猫になりつつ日々を過ごす。気分転換に、わざと猫になって外に出るという技も会得した。
猫で日向ぼっこ、最高である。
母さまの希望と、ジスカール卿の要望により、最初は二ヶ月ごとに、魔導研究所の御子息の研究室に、様子を見てもらいに通った。特に何の異常もないまま一年が過ぎたので、三ヶ月ごとになった。私の体が心配で、と診察を希望していた母さまが、『今後は三ヶ月ごとでいいでしょう』と言われたときにとてもがっかりしていた。
母さま、何となく分かってたけど、私が心配っていうより、レティーシャさまに会いたかっただけだよね!?
そしていつの間にか私は、五歳を迎えていた。
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