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第3章:禁じられた魔女たち
59:学長室へご招待
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「へぇ~・・・!怖いねぇ~。」
朝食の席でリリーは深刻な顔で新聞を読んでいた。
「テカーノヴァ街でまた失踪者かぁ~。これで51人目だって。」
向かいに座ってオムライスを食べるディアナに、リリーは新聞の内容を話す。
「恐ろしいですわね。でも、これだけの人数がいなくなったとなると警察もいよいよ大規模な捜査を始めるでしょう。そうすれば行方不明になっている人達も一網打尽・・・は言い方が悪いですけど、全員見つけられるでしょう。」
深刻そうなリリーとは対照的に、ディアナは落ち着いた顔でコーヒーを飲んだ。
「いやいやそう簡単にいかないかもよ?知ってる?街で広まってるウワサ。」
「まっ、魔女がこの街に、いるかもしれないって、、のだよね?」
ハラハラした顔で聞いてくるアイリスにリリーはコクっと頷いた。
「怖がらなくてもいいですよアイリス。テカーノヴァ街に魔女が入り込むなんてこと絶対にありませんから。」
「どっ、どうして?」
コーヒーカップをカチャンと置いてディアナは説明を始めた。
「テカーノヴァ街には二千年前に張られた悪魔除けの結界が、全部で三重に張られていますから。しかも奥に行くに連れて強度が増しています。それらを全部突破して街の中に入り込むなんてジャンヌ・・・リリーのお母様でもできないのですから、一介の魔女が侵入することなんて、まずありえません。その証拠に、テカーノヴァ街で魔女犯罪が起こったことなんて創設以来ないのですから。」
自分達が住んでいる街が、魔女に対して堅牢であることを再認識したアイリスだったが、ここで一つの疑問が生まれる。
「だったら、さ。なんで、リリーは入って、、これたの?」
そう。
魔女の子であるリリーなら、街に入ろうとした時点で結界に弾かれたはずである。
でもそうはならなかった。
それは何故か?
「だよね。ボク魔女の子どもだよ。なんでボクは街の中に入れたの?」
「それは・・・。」
ディアナは腕を組んで考える。
「きっと・・・大したことないって思われたのでしょう。街に。」
ディアナの答えを聞いた途端、リリーはあんぐりと口を開けた。
「大したことないってなんじゃい!?それじゃあボク、すごいペーペーってことになっちゃうよ!?」
「ペーペーでしょ?残念なほどに。」
「もう~!!なんでそんなこと言うのさ~!!」
向かいの席まで行って、リリーはディアナをポカポカと叩く。
「ちょっ、ちょっと止めて下さいよ~!」
「だったら謝れ~!」
仲良くじゃれるリリーとディアナを見て、アイリスの怖い気持ちはすぐになくなってしまった。
あのツインハイトの試合から二ヶ月。
リリーは街と学校に馴染み、ディアナも家と事実上勘当になってしまったがすっかり毒気は抜けて、三人は良い学友どうしになった。
学園生活を送る中で、多少の困難や危険はあったものの、三人の日々は充実していた。
「なに朝っぱらがベタベタやってんだ?」
ボサボサの寝ぐせが多いヴィキが、頭をポリポリしながらダイニングに入ってきた。
「あっ、おはようヴィキ。」
「また激しい寝ぐせですね。少しはレディとして身だしなみに気を遣ってみては?」
「うっせ。ほらお前らに呼び出し。」
ヴィキは三人にメモ用紙をそれぞれ渡した。
『昼時に学院長室で菓子などはいかが?マリア・ガブリエル。』
「マリアせんせいからだ。」
「お菓子・・・?」
「どういうおつもりでしょうか?」
手紙の内容に首を傾げる三人に、ヴィキはニヤけた。
「お前らなんかやらかしたんじゃねぇ~の~?」
茶々を入れるヴィキに、三人はムッとした。
「ボクなんにもしてないし!?」
「わっ、私だって・・・!」
「やましいことなど一切ございませんわ!!」
「へぇ~?じゃあなんで先生はお前らをわざわざ自室に呼ぶんだ。」
改めて聞いてきたヴィキに、三人はそれぞれに目配せを送る。
そして、徐々に恐怖を感じてきた。
「ホントになんにもしてないよね?ボク達・・・。」
そう信じたい。
朝食の席でリリーは深刻な顔で新聞を読んでいた。
「テカーノヴァ街でまた失踪者かぁ~。これで51人目だって。」
向かいに座ってオムライスを食べるディアナに、リリーは新聞の内容を話す。
「恐ろしいですわね。でも、これだけの人数がいなくなったとなると警察もいよいよ大規模な捜査を始めるでしょう。そうすれば行方不明になっている人達も一網打尽・・・は言い方が悪いですけど、全員見つけられるでしょう。」
深刻そうなリリーとは対照的に、ディアナは落ち着いた顔でコーヒーを飲んだ。
「いやいやそう簡単にいかないかもよ?知ってる?街で広まってるウワサ。」
「まっ、魔女がこの街に、いるかもしれないって、、のだよね?」
ハラハラした顔で聞いてくるアイリスにリリーはコクっと頷いた。
「怖がらなくてもいいですよアイリス。テカーノヴァ街に魔女が入り込むなんてこと絶対にありませんから。」
「どっ、どうして?」
コーヒーカップをカチャンと置いてディアナは説明を始めた。
「テカーノヴァ街には二千年前に張られた悪魔除けの結界が、全部で三重に張られていますから。しかも奥に行くに連れて強度が増しています。それらを全部突破して街の中に入り込むなんてジャンヌ・・・リリーのお母様でもできないのですから、一介の魔女が侵入することなんて、まずありえません。その証拠に、テカーノヴァ街で魔女犯罪が起こったことなんて創設以来ないのですから。」
自分達が住んでいる街が、魔女に対して堅牢であることを再認識したアイリスだったが、ここで一つの疑問が生まれる。
「だったら、さ。なんで、リリーは入って、、これたの?」
そう。
魔女の子であるリリーなら、街に入ろうとした時点で結界に弾かれたはずである。
でもそうはならなかった。
それは何故か?
「だよね。ボク魔女の子どもだよ。なんでボクは街の中に入れたの?」
「それは・・・。」
ディアナは腕を組んで考える。
「きっと・・・大したことないって思われたのでしょう。街に。」
ディアナの答えを聞いた途端、リリーはあんぐりと口を開けた。
「大したことないってなんじゃい!?それじゃあボク、すごいペーペーってことになっちゃうよ!?」
「ペーペーでしょ?残念なほどに。」
「もう~!!なんでそんなこと言うのさ~!!」
向かいの席まで行って、リリーはディアナをポカポカと叩く。
「ちょっ、ちょっと止めて下さいよ~!」
「だったら謝れ~!」
仲良くじゃれるリリーとディアナを見て、アイリスの怖い気持ちはすぐになくなってしまった。
あのツインハイトの試合から二ヶ月。
リリーは街と学校に馴染み、ディアナも家と事実上勘当になってしまったがすっかり毒気は抜けて、三人は良い学友どうしになった。
学園生活を送る中で、多少の困難や危険はあったものの、三人の日々は充実していた。
「なに朝っぱらがベタベタやってんだ?」
ボサボサの寝ぐせが多いヴィキが、頭をポリポリしながらダイニングに入ってきた。
「あっ、おはようヴィキ。」
「また激しい寝ぐせですね。少しはレディとして身だしなみに気を遣ってみては?」
「うっせ。ほらお前らに呼び出し。」
ヴィキは三人にメモ用紙をそれぞれ渡した。
『昼時に学院長室で菓子などはいかが?マリア・ガブリエル。』
「マリアせんせいからだ。」
「お菓子・・・?」
「どういうおつもりでしょうか?」
手紙の内容に首を傾げる三人に、ヴィキはニヤけた。
「お前らなんかやらかしたんじゃねぇ~の~?」
茶々を入れるヴィキに、三人はムッとした。
「ボクなんにもしてないし!?」
「わっ、私だって・・・!」
「やましいことなど一切ございませんわ!!」
「へぇ~?じゃあなんで先生はお前らをわざわざ自室に呼ぶんだ。」
改めて聞いてきたヴィキに、三人はそれぞれに目配せを送る。
そして、徐々に恐怖を感じてきた。
「ホントになんにもしてないよね?ボク達・・・。」
そう信じたい。
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