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第三章 出会い、とやらをされたらしくて

肝試し(3/3)

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青い光はどんどん小さくなっていく。


「もうもう!つまらないです!シンヤさん!もっと驚くとか……情けない姿を曝して下さい!じゃないと驚かしている意味がないじゃないですか!」


いきなりそう怒鳴り付ける声の主に呆れながら口を開いた。


「……セレン。驚かす気があるなら出てくるなよ……まぁ、ミレイは驚いたみたいだけど」


そう言って尻餅をついてるミレイに手を差し出す。


「大丈夫か?ミレイ」


「あ、う、うん。セレン先輩だったんですね。火の玉かと思いました……」


俺の手に捕まったミレイを立ち上がらせる。

セレンはミレイを見て慌てたように人間ヒューマン型になった。


「あぁっ!ミレイユさん!ごめんなさい!貴方を驚かす気は全くなくて……お洋服汚れていませんか?」


「え、あ、だ、大丈夫です!汚れてもいい服着てるので!」


「それなら良かったです。本当にごめんなさい。少しシンヤさんを驚かすのに力が入ってしまって……」


「気にしないで下さい!そう言うイベントですし!」


「……うん、あのな?確かに肝試しって脅かし役は驚かすのが役目だけどさ……誰か個人だけ驚かすんじゃねぇからな?」


「失礼ですね。分かっていますよ。そんなこと。ミライヤさんとアリシアさんペアはアリシアさんを特に驚かしました。と言っても、ミライヤさんはどんなことをしても魔法を無効化するので意味がなかっただけなんですけど」


「あぁ、実はミラ、こう言うの苦手だから必死に気を張ってるんだと思いますよ。だから、終わる頃には魔力を消費し過ぎで倒れるかも知れないですね」


「あら?そうなんですか?それならもう少し驚かせば良かったですね。残念です」


「なぁ、セレンって男になんか恨みでもあんのか?」


「まさか!私はただ、シンヤさんとミライヤさんの情けない姿が見たいだけですよ?アースやファインの情けない姿なら見たことがあるのでまた見たいとは思いませんが。他の男は興味ありません。どうでもいいです」


「セレン先輩は男の人が苦手なんですか?」


セレンは少し考えてから口を開く。


「……そうですね。騒がしくてむさ苦しくて鬱陶しいと思います。ですが、アースやファイン、ミライヤさんは好きな方なのでそんなこと思いませんが。あ。ついでにシンヤさんもそこまで嫌いではないですよ?」


「……おぉ、そうか。素直に喜べないんだけどな?ところで、もう進んでいいか?いつまでもこんなところで喋ってたら進まねぇだろ」


「あ!そうだね!それじゃあ、セレン先輩、そろそろ先に進みますね!」


「えぇ。私は先に戻っていますので。精々ミレイユさんにカッコいいところを見せることですね。それでは……」


「ち……ちょっと待てぇぇぇぇぇえっ!」


セレンの言葉に思わず腕を掴んで呼び止める。

ミレイもセレンも驚いた顔したと同時にセレンはすぐさま嫌そうな顔をした。


「なんですか?早く先に進んだらどうです?シンヤさんが言い出したんですよ」


「そうだけど!」


俺はミレイには聞こえないようにセレンに耳打ちする。


「なんで、ミレイにカッコいいところを見せろなんて言ったんだよ!?」


セレンは嫌そうな顔をしながらも小声で返してきた。


「何故って……シンヤさん、ミレイユさんが好きなんでしょう?風の噂で聞きました」


「なぁ、それってミラだろ?そうだろ?ミラしかいない。絶対ミラだ。頼むからそれ以上広めるなよ?絶対だからな?約束だぞ?」


「それはお約束出来ません。アリシアさんとミレイユさん以外はみんな知っています。ですから、お二人の耳に入るのも時間の問題かと」


それを聞いて俺は頭を抱える。



おいおいおい!

何で俺の秘密がこうも簡単に知られてるんだよ!?

ミラの奴、口軽過ぎだろ!!



頭の中でミラを散々罵ってるとミレイに声をかけられた。


「シンヤくん?どうしたの?行かないの?」


顔を覗き込んでくるミレイが可愛くて思わず顔を赤くする。

それがバレないようにミレイより前を歩いて口を開く。


「い、行く!悪いな!待たせて!さっさと行こう!ミラが強がって倒れるところ見たいしな!」



そして、それをネタに散々馬鹿にしてやる!!

せめてもの仕返しだ!!



俺の言葉にミレイが笑う。


「ふふっ……そうだね。それじゃあ、早くクリアしちゃお!ミラの残念な姿を見るために!」


俺はミレイの言葉に頷くと手を差し出す。

ミレイは何の戸惑いもなく俺の手を握る。

セレンの前だったことを忘れて少し恥ずかしくなったが手を放す気はしなかった。

そのままセレンに別れを告げて先に進んだ。

セレンと別れてからどれだけ歩いても他の脅かし役のアースやエアロに会わない。

当然、ゴールが見える訳でもなく……

ミレイと二人で途方に暮れているといきなり冷たい風がどこからともなく吹いてきた。



エアロの仕業か……



とホッとしたのも束の間、風と一緒に聞き覚えのない声まで聞こえてきた。


「……せ」


「「え?」」


ミレイと二人で同時に声を上げる。


「い、今の声、ミレイじゃないのか?」


「ち、違うよ!シンヤくんじゃないの?」


「俺が言ったならミレイにそんなこと聞く訳ないだろ?」


「そ、そうだよね……じゃあ、今の声は……?」


「そ、空耳だったんじゃないか?今、肝試ししてるしちょっと不安になってたところだから葉っぱに当たった風の音が声に聞こえただけだ、きっと」


俺がそう言った直後にまたさっきと同じ声が聞こえてきた。


「……返せ……」


「し、シンヤくん!い、今のも空耳!?」


「い、いや……今のは聞こえた……」


ミレイが俺にしがみつく。

声は途切れ途切れだがだんだんはっきりと聞こえてくる。


「……返せ、……返すのじゃ」


声が聞こえてくる度にミレイは身を震わせて。

俺は意を決して目の前の暗闇の先にいるであろう得体の知れないものに叫んだ。


「お、お前は誰だ!!姿を現せ!!」


「し、シンヤくん!!」


ミレイは慌てたように俺の腕を引っ張る。

俺はミレイの手をぎゅっと握り口を開く。


「大丈夫だ、ミレイ。ミレイだけは何が何でも俺が守るから!」



なんて、カッコつけたけど実際のところ俺も怖い。

もし、魔物や魔族が出てきたら……



そう思うと足まで竦んでくる。

ミレイにそのことが悟られないよう必死に平常心を装った。

すると今度は途切れ途切れではなくちゃんとはっきり声が響く。


「引き返せ、引き返すのじゃ。其方たちにはまだ“こちらの世界”は早過ぎる。今回は助けてやるが次はないと思うのじゃぞ。分かったなら早う行くのじゃ、小童共」


相手がそう言い終わったと同時に強い風が吹いて吹き飛ばされる。

半ば強制的に引き返すことになった。

大きな木にぶつかりそうになり咄嗟にミレイの体を抱きしめて守る。

それと同時に呪文を唱えた。


「エンチャントガード!」



これで防御が上がったはずだ。

多少の痛みなら我慢出来る。



思わずミレイを抱きしめてる腕に力が入る。

木にぶつかる覚悟を決めたその時――――
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