10 / 77
出会い
結局、彼に送ってもらうことになった。
「……ねぇ、結城くん」
「何?」
「元彼を気にしているのって殴られたから?」
「はぁ!?もしかして気づいてないの!?」
「え?何を?」
私がそう言ったら彼は頭を抱えて、何かぶつぶつ言い始める。
「確かに鈍感だとは聞いてたけど……ここまで?頭良さそうなのに何で勘は鋭くないんだよ……つーか、俺、気になってるって言ったよね?何で気づかないんだよ……」
「ゆ、結城くん?大丈夫?」
とりあえず、声をかけてみた。
すると結城くんは軽く私を睨みながら口を開く。
「莉恵さんって人から鈍感って言われない?」
「え?えぇ、言われるわね。でも、それがどうしたの?」
「つまりはそういうことだよ……」
「えぇ?全然分からないんだけど」
彼はため息を吐くとそれ以降何も喋らなくなった。
(私、何かした?
してないと思うんだけど……)
仕方がないので元彼と病院に行ったときの記憶を探る。
いくつか候補が出てきてさらに記憶を辿る。
そして、私は思い出した。
「あ、思い出した……」
「えっ!?」
「……もしかして、ゆうきちゃん?」
「うわぁ……思い出さなくてよかったのに……」
ある日、元彼と病院に行ったとき、敷地内の木の下で泣いている子がいて。
どうしたの?と声をかけた。
その子は怖いのが嫌だといっそ楽にしてほしいと泣いていて。
名前を聞いたらゆうきとだけ答えてくれた。
私は無理に頑張らなくて良いんだよ
と言って頭を撫でていたら元彼が戻って来たので
バイバイゆうきちゃん
と言って別れたのだ。
「今は短くなっているけど……ビルで会ったときよりもあのときの方が髪、長かったわね。それに普通名前を聞かれたら名字じゃなくて下の名前を答えるものよ?だから、女の子と間違えても仕方ないわよね?」
「あーっ!もう!それでいいから!もう思い出さないで!」
「ふふっ」
「(懐かしいなぁ……
そんなこともあったわ。
あ、でも……)」
「結城くんと会ったのはそれっきりよね?なのに、どうして私のこと覚えていたの?」
私がそう聞くと結城くんは少し考えながら口を開いた。
「……嬉しかったから。みんな、頑張れ頑張れとしか言わなくて……俺は頑張ってるのにこれ以上何を頑張ればいいんだって思って泣いてたら莉恵さんに声をかけられて。莉恵さんは無理に頑張らなくてもいいって言ってくれて……すごく気持ちが楽になったんだ。あぁ、頑張るの休んでいいんだって」
そう言った結城くんの顔は本当に嬉しそうで。
その笑顔に、またドキッとする。
もうすぐ私の家に着くのが寂しいと感じてまだ一緒にいたいと思った。
その寂しさを紛らわすために話をする。
「ねぇ、結城くん。どうやって私のこと知ったの?」
「え?あー……莉恵さんと話したのはそれっきりだったけど何度か来てたみたいだから写メ撮ってもらって看護師さんに聞いた」
「……ねぇ、それって隠し撮りって言うんじゃない?」
「……撮ったの俺じゃないし。ちゃんと正面向いててカメラ目線だから隠し撮りでも盗撮でもないよ……たぶん」
「ふふっ、冗談よ。そう言えば一回だけ看護師さんに写真撮らせてって頼まれたことあったわ」
「うん。その看護師さんと一番仲良かったから。その人に莉恵さんの名前とか年齢も教えてもらった」
「そうだったのね」
気づけばもうすぐ私の家だった。
「あ、私の家もうすぐ近くなの。だから、ここで大丈夫よ」
「……そっか。家に入ったらすぐ鍵閉めてチェーンかけてね」
「結城くんったら心配性ね」
「あのおっさんが捕まるまでは絶対!莉恵さんの家知ってるんだから」
「……そうね。分かった。言われた通りにする」
「うん。あとさ……」
いきなり結城くんは俯くと何か考えているみたいで気になって尋ねる。
「ん?何?」
「連絡先、教えて。看護師さんもさすがにそこまでは聞けなかったみたいだから。それに……」
結城くんは何か決心がついたみたいで顔を上げると言葉を続けた。
「もっと莉恵さんと話したいし会いたい」
その言葉が嬉しくて。
私は微笑んだ。
「……分かったわ。連絡先、交換しましょう」
そう言って連絡先を交換した。
結城くんはすごく嬉しそうで。
見ているこっちまで嬉しくなる。
「ありがと!莉恵さん!何かあったらすぐ連絡して。飛んでくから」
そう言って結局私は家の前まで送ってもらった。
その日からほぼ毎日のように結城くんとメールや電話をする。
色んな話をして元彼と別れた原因も結城くんにはあっさり話せた。
結城くんはあまり自分のことを話さないけれど趣味とか誕生日は教えてくれて。
週一回は会う約束をして一緒に出かけた。
結城くんは会う度に何故か一度は頭を抱え何かぶつぶつ言っていたけれど。
そして、明日はちょうど再会して一ヶ月になる。
いつものように結城くんと出かける約束をしていて今は着ていく服を選んでいるのだった。
「(あぁ、早く明日にならないかな……)」
「……ねぇ、結城くん」
「何?」
「元彼を気にしているのって殴られたから?」
「はぁ!?もしかして気づいてないの!?」
「え?何を?」
私がそう言ったら彼は頭を抱えて、何かぶつぶつ言い始める。
「確かに鈍感だとは聞いてたけど……ここまで?頭良さそうなのに何で勘は鋭くないんだよ……つーか、俺、気になってるって言ったよね?何で気づかないんだよ……」
「ゆ、結城くん?大丈夫?」
とりあえず、声をかけてみた。
すると結城くんは軽く私を睨みながら口を開く。
「莉恵さんって人から鈍感って言われない?」
「え?えぇ、言われるわね。でも、それがどうしたの?」
「つまりはそういうことだよ……」
「えぇ?全然分からないんだけど」
彼はため息を吐くとそれ以降何も喋らなくなった。
(私、何かした?
してないと思うんだけど……)
仕方がないので元彼と病院に行ったときの記憶を探る。
いくつか候補が出てきてさらに記憶を辿る。
そして、私は思い出した。
「あ、思い出した……」
「えっ!?」
「……もしかして、ゆうきちゃん?」
「うわぁ……思い出さなくてよかったのに……」
ある日、元彼と病院に行ったとき、敷地内の木の下で泣いている子がいて。
どうしたの?と声をかけた。
その子は怖いのが嫌だといっそ楽にしてほしいと泣いていて。
名前を聞いたらゆうきとだけ答えてくれた。
私は無理に頑張らなくて良いんだよ
と言って頭を撫でていたら元彼が戻って来たので
バイバイゆうきちゃん
と言って別れたのだ。
「今は短くなっているけど……ビルで会ったときよりもあのときの方が髪、長かったわね。それに普通名前を聞かれたら名字じゃなくて下の名前を答えるものよ?だから、女の子と間違えても仕方ないわよね?」
「あーっ!もう!それでいいから!もう思い出さないで!」
「ふふっ」
「(懐かしいなぁ……
そんなこともあったわ。
あ、でも……)」
「結城くんと会ったのはそれっきりよね?なのに、どうして私のこと覚えていたの?」
私がそう聞くと結城くんは少し考えながら口を開いた。
「……嬉しかったから。みんな、頑張れ頑張れとしか言わなくて……俺は頑張ってるのにこれ以上何を頑張ればいいんだって思って泣いてたら莉恵さんに声をかけられて。莉恵さんは無理に頑張らなくてもいいって言ってくれて……すごく気持ちが楽になったんだ。あぁ、頑張るの休んでいいんだって」
そう言った結城くんの顔は本当に嬉しそうで。
その笑顔に、またドキッとする。
もうすぐ私の家に着くのが寂しいと感じてまだ一緒にいたいと思った。
その寂しさを紛らわすために話をする。
「ねぇ、結城くん。どうやって私のこと知ったの?」
「え?あー……莉恵さんと話したのはそれっきりだったけど何度か来てたみたいだから写メ撮ってもらって看護師さんに聞いた」
「……ねぇ、それって隠し撮りって言うんじゃない?」
「……撮ったの俺じゃないし。ちゃんと正面向いててカメラ目線だから隠し撮りでも盗撮でもないよ……たぶん」
「ふふっ、冗談よ。そう言えば一回だけ看護師さんに写真撮らせてって頼まれたことあったわ」
「うん。その看護師さんと一番仲良かったから。その人に莉恵さんの名前とか年齢も教えてもらった」
「そうだったのね」
気づけばもうすぐ私の家だった。
「あ、私の家もうすぐ近くなの。だから、ここで大丈夫よ」
「……そっか。家に入ったらすぐ鍵閉めてチェーンかけてね」
「結城くんったら心配性ね」
「あのおっさんが捕まるまでは絶対!莉恵さんの家知ってるんだから」
「……そうね。分かった。言われた通りにする」
「うん。あとさ……」
いきなり結城くんは俯くと何か考えているみたいで気になって尋ねる。
「ん?何?」
「連絡先、教えて。看護師さんもさすがにそこまでは聞けなかったみたいだから。それに……」
結城くんは何か決心がついたみたいで顔を上げると言葉を続けた。
「もっと莉恵さんと話したいし会いたい」
その言葉が嬉しくて。
私は微笑んだ。
「……分かったわ。連絡先、交換しましょう」
そう言って連絡先を交換した。
結城くんはすごく嬉しそうで。
見ているこっちまで嬉しくなる。
「ありがと!莉恵さん!何かあったらすぐ連絡して。飛んでくから」
そう言って結局私は家の前まで送ってもらった。
その日からほぼ毎日のように結城くんとメールや電話をする。
色んな話をして元彼と別れた原因も結城くんにはあっさり話せた。
結城くんはあまり自分のことを話さないけれど趣味とか誕生日は教えてくれて。
週一回は会う約束をして一緒に出かけた。
結城くんは会う度に何故か一度は頭を抱え何かぶつぶつ言っていたけれど。
そして、明日はちょうど再会して一ヶ月になる。
いつものように結城くんと出かける約束をしていて今は着ていく服を選んでいるのだった。
「(あぁ、早く明日にならないかな……)」
あなたにおすすめの小説
ソツのない彼氏とスキのない彼女
吉野 那生
恋愛
特別目立つ訳ではない。
どちらかといえば地味だし、バリキャリという風でもない。
だけど…何故か気になってしまう。
気がつくと、彼女の姿を目で追っている。
***
社内でも知らない者はいないという程、有名な彼。
爽やかな見た目、人懐っこく相手の懐にスルリと入り込む手腕。
そして、華やかな噂。
あまり得意なタイプではない。
どちらかといえば敬遠するタイプなのに…。
フローライト
藤谷 郁
恋愛
彩子(さいこ)は恋愛経験のない24歳。
ある日、友人の婚約話をきっかけに自分の未来を考えるようになる。
結婚するのか、それとも独身で過ごすのか?
「……そもそも私に、恋愛なんてできるのかな」
そんな時、伯母が見合い話を持ってきた。
写真を見れば、スーツを着た青年が、穏やかに微笑んでいる。
「趣味はこうぶつ?」
釣書を見ながら迷う彩子だが、不思議と、その青年には会いたいと思うのだった…
※他サイトにも掲載
一億円の花嫁
藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。
父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。
もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。
「きっと、素晴らしい旅になる」
ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが……
幸か不幸か!?
思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。
※エブリスタさまにも掲載
義姉と押し入れに隠れたら、止まれなくなった
くろがねや
恋愛
父の再婚で、義姉ができた。
血は繋がっていない。でも——家族だ。そう言い聞かせながら、涼介はずっと沙耶から距離を取ってきた。
夏休み。田舎への帰省。甥っ子にせがまれて始まったかくれんぼ。急いで飛び込んだ押し入れの中に、先客がいた。
「……涼介くん」
薄い水色の浴衣。下ろした髪。橙色の光に染まった、沙耶の顔。
逃げ場のない暗闇の中で、二人分の体温が混ざり合う。
夜、来て。
その一言が——涼介の、全部を壊した。
甘くて、苦しくて、止まれない。
これは、ある夏の、秘密の話。
手を伸ばした先にいるのは誰ですか~愛しくて切なくて…憎らしいほど愛してる~【完結】
まぁ
恋愛
ワイン、ホテルの企画業務など大人の仕事、そして大人に切り離せない恋愛と…
「Ninagawa Queen's Hotel」
若きホテル王 蜷川朱鷺
妹 蜷川美鳥
人気美容家 佐井友理奈
「オークワイナリー」
国内ワイナリー最大手創業者一族 柏木龍之介
血縁関係のない兄妹と、その周辺の何角関係…?
華やかな人々が繰り広げる、フィクションです。
結婚する事に決めたから
KONAN
恋愛
私は既婚者です。
新たな職場で出会った彼女と結婚する為に、私がその時どう考え、どう行動したのかを書き記していきます。
まずは、離婚してから行動を起こします。
主な登場人物
東條なお
似ている芸能人
○原隼人さん
32歳既婚。
中学、高校はテニス部
電気工事の資格と実務経験あり。
車、バイク、船の免許を持っている。
現在、新聞販売店所長代理。
趣味はイカ釣り。
竹田みさき
似ている芸能人
○野芽衣さん
32歳未婚、シングルマザー
医療事務
息子1人
親分(大島)
似ている芸能人
○田新太さん
70代
施設の送迎運転手
板金屋(大倉)
似ている芸能人
○藤大樹さん
23歳
介護助手
理学療法士になる為、勉強中
よっしー課長(吉本)
似ている芸能人
○倉涼子さん
施設医療事務課長
登山が趣味
o谷事務長
○重豊さん
施設医療事務事務長
腰痛持ち
池さん
似ている芸能人
○田あき子さん
居宅部門管理者
看護師
下山さん(ともさん)
似ている芸能人
○地真央さん
医療事務
息子と娘はテニス選手
t助
似ている芸能人
○ツオくん(アニメ)
施設医療事務事務長
o谷事務長異動後の事務長
雄一郎 ゆういちろう
似ている芸能人
○鹿央士さん
弟の同級生
中学テニス部
高校陸上部
大学帰宅部
髪の赤い看護師(川木えみ)
似ている芸能人
○田來未さん
准看護師
ヤンキー
怖い
【完結】僕ら二度目のはじめまして ~オフィスで再会した、心に残ったままの初恋~
葉影
恋愛
高校の頃、誰よりも大切だった人。
「さ、最近はあんまり好きじゃないから…!」――あの言葉が、最後になった。
小島久遠は、新たな職場で、元カレとまさかの再会を果たす。
若くしてプロジェクトチームを任される彼は、
かつて自分だけに愛を囁いてくれていたことが信じられないほど、
遠く、眩しい存在になっていた。
優しかったあの声は、もう久遠の名前を呼んでくれない。
もう一度“はじめまして”からやり直せたら――そんなこと、願ってはいけないのに。
それでも——
8年越しのすれ違いは、再会から静かに動き出す。
これは、終わった恋を「もう一度はじめる」までの物語。