私、これからいきます。

蓮ヶ崎 漣

文字の大きさ
41 / 77

旅行④

何とか無事に予約時間前に貸衣装のお店に到着。
けれど、そこからが大変だった。
 
「もう!何で着てくれないの!?」
 
「だから!それはこっちのセリフだってば!何で俺ばっかり着なくちゃいけないの!?せっかく来たんだから莉恵さんも少しくらい着なよ!」
 
到着してすぐにサービスの説明をされて私は迷わず大虎くんに全ての衣装を希望。
それに間髪容れずに嫌だと拒否した大虎くん。
かれこれ三十分は言い合っている気がする。
幸か不幸かお客は私たちだけだったので店員さんは困り顔で行く末を見守ってくれていた。
 
「私が着たって似合わないもの!」
 
「俺はそう思わないの!そんなこと言うなら俺だって似合わないだろうから着たくない!」
 
「大虎くんは絶対に似合うわよ!私は似合わないけれど!」
 
「あー!もう!キリがない!二着!俺、二着しか着ないから!莉恵さんも二着着てもらうよ!」
 
「えっ!?何で……!」
 
私が言い返さないうちに大虎くんは店員さんにプランやらオプションやらを決めてしまう。
後は衣装を決めるだけだ。
 
「変更は聞き入れなくていいです。これで。絶対これで。莉恵さんはとっとと衣装選んで!」
 
「か、かしこまりました」
 
「うぅ……」
 
私もしぶしぶ大虎くんに着せる衣装を見る。
けれど、とても二つまで絞れない。
 
「さ、三着……」
 
「却下。二着」
 
大虎くんは私の横で私に着せる衣装を選んでいる。
 
「(うぅ……新選組は外せないし……その新選組も隊長服と局長服まであるし……坂本辰馬の衣装まであるし……大正浪漫風の衣装まであるし……)」
 
私が悩んでいると大虎くんが小さくため息を吐いた。
 
「そんなに悩んでるの?」
 
「う、うん!だから、四着に……」
 
「却下」
 
まだ喋っている最中なのに食い気味に却下される。
それに少し腹を立て思わず大虎くんに強い口調で問いかけた。
 
「じゃあ、大虎くんはもう私に着せる服、二着とも選んだのね?」
 
「うん」
 
「そ、そうなんだ」
 
てっきり、選んでいないと返ってくると思っていた私はちょっとだけ焦ってしまう。
チラッと大虎くんを見るとニコニコ笑っていた。
 
「……大虎くんはどれを選んだの?私もそれに合わせる」
 
「そうこなくちゃね!莉恵さんにはこの二着着てもらうね?」
 
そう言って指を差した服はお姫様と大正浪漫風の貴婦人みたいなドレスの服だった。
結局、私は外せなかった新選組の隊長服と大正浪漫風の服を選び着替えに行く。
私たちが着替え終わった頃にはお客も増えて大虎くんは予想通りどっちの衣装も似合っていたためか他のお客さんにも写真を撮らせて下さいとせがまれていた。
無事に撮影を終えて着替え、お店を出る。
大虎くんと手を繋ぎながら清水寺を目指した。
 
「それにしても、大虎くんやっぱりすごく似合っていたわね!写真撮らせて下さいって言われていたでしょう?」
 
「そうだね。全部断ったけど。莉恵さんも似合ってたよ?だから、二人だけの記念ね」
 
「うん!」
 
その後は清水寺を観光して宿に戻った。
宿に戻ってすぐにお風呂に入って夕食を食べてくつろぐ。
 
「はぁ~……明日には帰ると思うとちょっと憂鬱な気持ちだわ」
 
「楽しんでもらえた?」
 
「それはもちろん!」
 
「なら良かった。でも、今日、お酒飲みすぎじゃない?」
 
大虎くんはまた整理をしているのかパソコンを弄りながら言った。
 
「そう、ね……最後だと思ったらつい飲んじゃって……」
 
そのせいか体の火照りを感じる。
 
「はぁ……なんか、熱い」
 
そう言っておろしていた髪を一つに束ねて、少しだけ浴衣をはだけさせてうちわで扇いだ。
 
「……もう、水でも飲んで寝なよ」
 
「それは嫌!もう寝ちゃったら起きてお土産買ってあとは帰るだけじゃない!そんなのつまらないわ」
 
「……じゃあ、どうするの?俺、酔っ払いの相手なんて嫌だよ」
 
「失礼ね!酔ってはないわ!」
 
「半分、酔ってるようなもんだと思うけどね」
 
「もう!そんな意地悪言う大虎くんにはくすぐりの刑!」
 
そう言って大虎くんに飛びつきくすぐる。
 
「うわっ!?ちょ、莉恵さん!くすぐったい!ふ、あははっ!ちょ、やめて、ホント……」
 
「だめですー!これは私に意地悪した罰なんですー!」
 
「あははっ!ちょ、もうっ!莉恵さん!」
 
大虎くんは私の両手を掴んで動きを封じた。
 
「いやー!放して!」
 
「だーめ!またくすぐるつもりでしょ?それにすっごく良い眺めだし」
 
「え?」
 
私は慌てて今の自分の格好を見ると、少しだけはだけていたと思っていた浴衣は思った以上にはだけている。
思わず顔が赤くなった。
 
「た、大虎くんのエッチ!変態!放して!」
 
「何でも結構。自業自得でしょ。人がせっかく我慢してあげてるのに、こんなに煽ってくるなんて……そんなに可愛がってほしいの?」
 
その言葉にさらに顔を真っ赤に染める。
 
「(た、確かに期待していないかと言われれば嘘になるかもしれないけれど……!でも、決して煽ったつもりはないわ!!)」
 
私が必死に首を振って抵抗していると、いきなり体が持ち上がった。
 
「えっ!?ちょっ!?」
 
「ほら、ちゃんと俺につかまらないと落ちちゃうよ?」
 
「そ、そうじゃなくて!重いでしょ!?っていうかお姫様抱っこ!?」
 
「何?不満?」
 
「ち、違う!むしろ、憧れていたけれど……って、そうじゃないの!どこに連れて行くつもり!?」
 
「布団」
 
「ふ、布団!?な、何する気!?」
 
「え?一緒に寝るけど」
 
「えっ!?」
 
「何?」
 
「っ!た、大虎くんのエッチ!」
 
「え、添い寝してあげるって意味だったんだけど……」
 
「えっ!?」
 
慌てて顔を上げると、クスクス笑っている大虎くん。
そのまま、布団の上に降ろされる。
 
「それじゃあ、おやすみ」
 
「えっ!?一緒に寝るんじゃないの!?」
 
「え?添い寝してほしいの?」
 
「ち、違うけど!ふ、普通は何かするんじゃないのかなって!」
 
「?今回の旅行は莉恵さんの疲れを取るために来てるのに疲れさせてどうするの?本末転倒じゃん」
 
「で、でも……!恋人同士ならそれが普通じゃないかしら!?」
 
途中で自分がとんでもないことを言っていることに気づき、私は慌てて弁解する。
 
「ち、違うのよ?私がしたいとかじゃなくて……や、やっぱり酔っているみたい!ごめんなさい!忘れて……」
 
そこまで言って涙が一筋こぼれた。
 
「(旅行は確かに楽しかった。けれど、手を繋いでくれたくらいで、それ以上のことはしてくれなくて……それが、少し寂しかった)」
 
自分がどうしたいのか分からなくなり涙も止まる気配はない。
 
「ご、ごめんなさい!気にしないで!すぐに泣き止むから!」
 
私がそう言うと突然視界が暗くなる。
抱き締められていると気づくのに時間はかからなかった。
 
「た、大虎くん!?」
 
「……ごめんね。俺、勝手に莉恵さんのためとか思って莉恵さんの気持ち考えてなかった。だから、してほしいこと、ちゃんと言って?言ってくれないと分かんないよ」
 
大虎くんは私を抱き締めながらそう言ってくれたのでそっと腕を回して口を開く。
 
「……頭、撫でてほしい」
 
大虎くんは優しく頭を撫でてくれる。
 
「莉恵さん、いつもお疲れ様。疲れてるのに俺のために家のこと全部やってくれて本当にありがとう」
 
その言葉だけですごく嬉しくなった。
私はさらに力を込めて大虎くんにくっつく。
大虎くんもそれに応えるように私を抱き締めてくれて頭も撫で続けてくれた。
チラッと大虎くんを見上げると目が合い大虎くんはフッと笑うと私の頬にキスを落とす。
そのまま何度もどちらともなく唇にキスをした。
感想 1

あなたにおすすめの小説

ソツのない彼氏とスキのない彼女

吉野 那生
恋愛
特別目立つ訳ではない。 どちらかといえば地味だし、バリキャリという風でもない。 だけど…何故か気になってしまう。 気がつくと、彼女の姿を目で追っている。 *** 社内でも知らない者はいないという程、有名な彼。 爽やかな見た目、人懐っこく相手の懐にスルリと入り込む手腕。 そして、華やかな噂。 あまり得意なタイプではない。 どちらかといえば敬遠するタイプなのに…。

フローライト

藤谷 郁
恋愛
彩子(さいこ)は恋愛経験のない24歳。 ある日、友人の婚約話をきっかけに自分の未来を考えるようになる。 結婚するのか、それとも独身で過ごすのか? 「……そもそも私に、恋愛なんてできるのかな」 そんな時、伯母が見合い話を持ってきた。 写真を見れば、スーツを着た青年が、穏やかに微笑んでいる。 「趣味はこうぶつ?」 釣書を見ながら迷う彩子だが、不思議と、その青年には会いたいと思うのだった… ※他サイトにも掲載

一億円の花嫁

藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。 父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。 もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。 「きっと、素晴らしい旅になる」 ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが…… 幸か不幸か!? 思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。 ※エブリスタさまにも掲載

大好きな背中

詩織
恋愛
4年付き合ってた彼氏に振られて、同僚に合コンに誘われた。 あまり合コンなんか参加したことないから何話したらいいのか… 同じように困ってる男性が1人いた

義姉と押し入れに隠れたら、止まれなくなった

くろがねや
恋愛
父の再婚で、義姉ができた。 血は繋がっていない。でも——家族だ。そう言い聞かせながら、涼介はずっと沙耶から距離を取ってきた。 夏休み。田舎への帰省。甥っ子にせがまれて始まったかくれんぼ。急いで飛び込んだ押し入れの中に、先客がいた。 「……涼介くん」 薄い水色の浴衣。下ろした髪。橙色の光に染まった、沙耶の顔。 逃げ場のない暗闇の中で、二人分の体温が混ざり合う。 夜、来て。 その一言が——涼介の、全部を壊した。 甘くて、苦しくて、止まれない。 これは、ある夏の、秘密の話。

手を伸ばした先にいるのは誰ですか~愛しくて切なくて…憎らしいほど愛してる~【完結】

まぁ
恋愛
ワイン、ホテルの企画業務など大人の仕事、そして大人に切り離せない恋愛と… 「Ninagawa Queen's Hotel」 若きホテル王 蜷川朱鷺  妹     蜷川美鳥 人気美容家 佐井友理奈 「オークワイナリー」 国内ワイナリー最大手創業者一族 柏木龍之介 血縁関係のない兄妹と、その周辺の何角関係…? 華やかな人々が繰り広げる、フィクションです。

結婚する事に決めたから

KONAN
恋愛
私は既婚者です。 新たな職場で出会った彼女と結婚する為に、私がその時どう考え、どう行動したのかを書き記していきます。 まずは、離婚してから行動を起こします。 主な登場人物 東條なお 似ている芸能人 ○原隼人さん 32歳既婚。 中学、高校はテニス部 電気工事の資格と実務経験あり。 車、バイク、船の免許を持っている。 現在、新聞販売店所長代理。 趣味はイカ釣り。 竹田みさき 似ている芸能人 ○野芽衣さん 32歳未婚、シングルマザー 医療事務 息子1人 親分(大島) 似ている芸能人 ○田新太さん 70代 施設の送迎運転手 板金屋(大倉) 似ている芸能人 ○藤大樹さん 23歳 介護助手 理学療法士になる為、勉強中 よっしー課長(吉本) 似ている芸能人 ○倉涼子さん 施設医療事務課長 登山が趣味 o谷事務長 ○重豊さん 施設医療事務事務長 腰痛持ち 池さん 似ている芸能人 ○田あき子さん 居宅部門管理者 看護師 下山さん(ともさん) 似ている芸能人 ○地真央さん 医療事務 息子と娘はテニス選手 t助 似ている芸能人 ○ツオくん(アニメ) 施設医療事務事務長 o谷事務長異動後の事務長 雄一郎 ゆういちろう 似ている芸能人 ○鹿央士さん 弟の同級生 中学テニス部 高校陸上部 大学帰宅部 髪の赤い看護師(川木えみ) 似ている芸能人 ○田來未さん 准看護師 ヤンキー 怖い

【完結】僕ら二度目のはじめまして ~オフィスで再会した、心に残ったままの初恋~

葉影
恋愛
高校の頃、誰よりも大切だった人。 「さ、最近はあんまり好きじゃないから…!」――あの言葉が、最後になった。 小島久遠は、新たな職場で、元カレとまさかの再会を果たす。 若くしてプロジェクトチームを任される彼は、 かつて自分だけに愛を囁いてくれていたことが信じられないほど、 遠く、眩しい存在になっていた。 優しかったあの声は、もう久遠の名前を呼んでくれない。 もう一度“はじめまして”からやり直せたら――そんなこと、願ってはいけないのに。 それでも—— 8年越しのすれ違いは、再会から静かに動き出す。 これは、終わった恋を「もう一度はじめる」までの物語。