私、これからいきます。

蓮ヶ崎 漣

文字の大きさ
50 / 77

勘違い⑥

私は田原さんに頭を下げて口を開く。
 
「田原さん、今日はありがとうございました」
 
「いえ!元はと言えば美琴が悪いんで気にしないで顔上げてください!」
 
「でも、わざわざこうしてお時間作ってくださったじゃないですか。お礼くらい言わせてください」
 
「ははっ!じゃあ、どういたしまして、です」
 
「はい」
 
そういって微笑むと会計を終えた美琴さんが出てきて大虎くんは私の手を握った。
 
「それじゃあ、解散ってことで。帰ろ?莉恵さん」
 
「え?あ、うん」
 
「あ!待って!」
 
美琴さんの声に立ち止まり振り返ると美琴さんは頭を下げて叫ぶ。
 
「今回は本当にすみませんでした!大虎のこと、どうぞよろしくお願いします!」
 
その言葉に私はにっこり微笑んではい、と答えた。
大虎くんは恥ずかしかったのかそんなこと大声で叫ぶな!と怒鳴って私を引っ張りながら歩き出す。
その様子に私はまたクスクスと笑う。
家に着くと大虎くんは私を座らせその前ににっこり笑いながら立った。
何となく嫌な予感が頭を過ぎる。
私は恐る恐る口を開いた。
 
「あ、あの、大虎くん?」
 
「ん?なぁに?」
 
「も、もしかして、怒っている……?」
 
「何を?」
 
「え?そ、その、今回の件を……」
 
「嫌だな。怒ってないよ?約束を破った件と俺を信じてくれなかった件以外は」
 
その言葉を聞いて私は苦笑いを浮かべる。
 
「(そりゃあ、そうよね……?あんなに来ることを嫌がっていた文化祭に行ったんだもの。
しかも、浮気を疑って。そりゃあ、怒るわよね……?)」
 
「でも、大虎くんも悪いと思うの。美琴さんが女装趣味って教えておいてくれれば納得できたかもしれないもの」
 
私がそういうと大虎くんは表情を変えずに口を開く。
 
「莉恵さんのあの態度からだと仮に教えてても信じてくれなかったと思うけど?」
 
うっ!と言葉に詰まった。
確かにあのときの美琴さんは女にしか見えなかったしたとえ教えてくれていても信じない可能性の方が高い。
思わず、顔を逸らすと大虎くんの手が私の顔を包み元の位置に戻される。
気まずさが私を襲って目を合わせないようした。
 
「莉恵さん?順番にお話しようか?あとでゆっくり話そうって言ったもんね?」
 
大虎くんの有無を言わさぬ表情にうなづくことしかできない。
 
「それじゃあ、たっぷりとお互い分かるまできちんと話し合おっか」
 
「お、お手柔らかにお願いします……」
 
「それは莉恵さん次第かな。俺、しばらく大学休めるしいくらでも時間かけれるよ」
 
「わ、私は明日仕事なの!」
 
「うん。知ってる。だから、頑張ってね?」
 
「いやあぁぁぁぁぁぁあっ!!」
 
「こーら。叫ばないの。近所迷惑でしょ?」
 
「ほ、本当に止めて!!その件は私が悪かったから!!ごめんなさい!!」
 
「口では何とでも言えるよね?こういうことはちゃんとしないとまた同じことするでしょ?」
 
「そ、そんなことないわ!!絶対!!必要性を感じない!!」
 
「俺は必要性を感じるから諦めて」
 
「き、きゃあぁぁぁぁぁぁあっ!!」
 
その後、私は大虎くんに嫌というほどお仕置きをされた。
しばらく大学に行かなくても大丈夫だという大虎くんはベッドで気持ち良さそうにぐっすり眠っている。
私は全身の筋肉痛と戦いながら仕事に向かうのだった――――
感想 1

あなたにおすすめの小説

ソツのない彼氏とスキのない彼女

吉野 那生
恋愛
特別目立つ訳ではない。 どちらかといえば地味だし、バリキャリという風でもない。 だけど…何故か気になってしまう。 気がつくと、彼女の姿を目で追っている。 *** 社内でも知らない者はいないという程、有名な彼。 爽やかな見た目、人懐っこく相手の懐にスルリと入り込む手腕。 そして、華やかな噂。 あまり得意なタイプではない。 どちらかといえば敬遠するタイプなのに…。

フローライト

藤谷 郁
恋愛
彩子(さいこ)は恋愛経験のない24歳。 ある日、友人の婚約話をきっかけに自分の未来を考えるようになる。 結婚するのか、それとも独身で過ごすのか? 「……そもそも私に、恋愛なんてできるのかな」 そんな時、伯母が見合い話を持ってきた。 写真を見れば、スーツを着た青年が、穏やかに微笑んでいる。 「趣味はこうぶつ?」 釣書を見ながら迷う彩子だが、不思議と、その青年には会いたいと思うのだった… ※他サイトにも掲載

一億円の花嫁

藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。 父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。 もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。 「きっと、素晴らしい旅になる」 ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが…… 幸か不幸か!? 思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。 ※エブリスタさまにも掲載

大好きな背中

詩織
恋愛
4年付き合ってた彼氏に振られて、同僚に合コンに誘われた。 あまり合コンなんか参加したことないから何話したらいいのか… 同じように困ってる男性が1人いた

義姉と押し入れに隠れたら、止まれなくなった

くろがねや
恋愛
父の再婚で、義姉ができた。 血は繋がっていない。でも——家族だ。そう言い聞かせながら、涼介はずっと沙耶から距離を取ってきた。 夏休み。田舎への帰省。甥っ子にせがまれて始まったかくれんぼ。急いで飛び込んだ押し入れの中に、先客がいた。 「……涼介くん」 薄い水色の浴衣。下ろした髪。橙色の光に染まった、沙耶の顔。 逃げ場のない暗闇の中で、二人分の体温が混ざり合う。 夜、来て。 その一言が——涼介の、全部を壊した。 甘くて、苦しくて、止まれない。 これは、ある夏の、秘密の話。

手を伸ばした先にいるのは誰ですか~愛しくて切なくて…憎らしいほど愛してる~【完結】

まぁ
恋愛
ワイン、ホテルの企画業務など大人の仕事、そして大人に切り離せない恋愛と… 「Ninagawa Queen's Hotel」 若きホテル王 蜷川朱鷺  妹     蜷川美鳥 人気美容家 佐井友理奈 「オークワイナリー」 国内ワイナリー最大手創業者一族 柏木龍之介 血縁関係のない兄妹と、その周辺の何角関係…? 華やかな人々が繰り広げる、フィクションです。

結婚する事に決めたから

KONAN
恋愛
私は既婚者です。 新たな職場で出会った彼女と結婚する為に、私がその時どう考え、どう行動したのかを書き記していきます。 まずは、離婚してから行動を起こします。 主な登場人物 東條なお 似ている芸能人 ○原隼人さん 32歳既婚。 中学、高校はテニス部 電気工事の資格と実務経験あり。 車、バイク、船の免許を持っている。 現在、新聞販売店所長代理。 趣味はイカ釣り。 竹田みさき 似ている芸能人 ○野芽衣さん 32歳未婚、シングルマザー 医療事務 息子1人 親分(大島) 似ている芸能人 ○田新太さん 70代 施設の送迎運転手 板金屋(大倉) 似ている芸能人 ○藤大樹さん 23歳 介護助手 理学療法士になる為、勉強中 よっしー課長(吉本) 似ている芸能人 ○倉涼子さん 施設医療事務課長 登山が趣味 o谷事務長 ○重豊さん 施設医療事務事務長 腰痛持ち 池さん 似ている芸能人 ○田あき子さん 居宅部門管理者 看護師 下山さん(ともさん) 似ている芸能人 ○地真央さん 医療事務 息子と娘はテニス選手 t助 似ている芸能人 ○ツオくん(アニメ) 施設医療事務事務長 o谷事務長異動後の事務長 雄一郎 ゆういちろう 似ている芸能人 ○鹿央士さん 弟の同級生 中学テニス部 高校陸上部 大学帰宅部 髪の赤い看護師(川木えみ) 似ている芸能人 ○田來未さん 准看護師 ヤンキー 怖い

【完結】僕ら二度目のはじめまして ~オフィスで再会した、心に残ったままの初恋~

葉影
恋愛
高校の頃、誰よりも大切だった人。 「さ、最近はあんまり好きじゃないから…!」――あの言葉が、最後になった。 小島久遠は、新たな職場で、元カレとまさかの再会を果たす。 若くしてプロジェクトチームを任される彼は、 かつて自分だけに愛を囁いてくれていたことが信じられないほど、 遠く、眩しい存在になっていた。 優しかったあの声は、もう久遠の名前を呼んでくれない。 もう一度“はじめまして”からやり直せたら――そんなこと、願ってはいけないのに。 それでも—— 8年越しのすれ違いは、再会から静かに動き出す。 これは、終わった恋を「もう一度はじめる」までの物語。