私、これからいきます。

蓮ヶ崎 漣

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クリスマスパーティー④

金村と名乗った女性は田原さんに直接プレゼントを差し出した。
 
「田原さん!これ、私からのクリスマスプレゼントです!」
 
「え?いや、でも、ほら、交換だし直接渡されても困るっていうか……」
 
「そんなこと言わないでください!私、田原さんに渡そうと思って田原さんのために選んできたんですよ!私は田原さん以外からのプレゼントは要らないですし……だから、私と交換しましょう?ね?」
 
「いや、ね?って言われても他の人たちはちゃんと誰に当たっても良いように用意してるんだし……まもりちゃんだけ特別扱いはできないからさ。その代わり、気持ちだけは受け取っておくよ」
 
「それって私と付き合ってくれるってことですか!」
 
「えっ!?なんでそうなるの!?」
 
「私のプレゼントを受け取ってくれないなら美琴さんと別れて私と付き合ってください!」
 
その言葉に我慢ができなくなったのか美琴さんがギロッと金村さんを睨む。
何かを言おうとしていた美琴さんを田原さんが遮り、二人の間に入った。
田原さんは金村さんに真剣な顔をして口を開く。
 
「悪いけどさ、それはどっちも無理。個人的にプレゼントを受け取るのはみんなに悪いし美琴と別れるのはフラれても無理。俺がまもりちゃんを拒まないのは同じチームだからであってそれ以上の感情はないよ。ギクシャクしたくないから接してきたけどそういう度の過ぎる我儘を言われると優しくする意味がなくなる」
 
「え?」
 
田原さんの言葉に驚きを隠せないでいる金村さんに田原さんは続けた。
 
「俺は君に対して絶対恋愛感情は抱かない。だから、俺のことは諦めてくれ」
 
「そ、そんな!私、本当に田原さんのことが好きなんです!」
 
「君のその気持ちは俺にとっては迷惑でしかないからさ。これ以上、ほかのみんなを困らせるようなら帰ってもらえるか?」
 
「っ!」
 
金村さんは荷物を取るとその場から立ち去る。
静まり返った会場。
誰も何も喋らない。
その沈黙に耐えられなくなったのか聖来が口を開く。
 
「あ、あの!」
 
視線が聖来に注がれた。
 
「あ、あたし、ついさっき会社に呼び出し食らっちゃったから帰っても大丈夫……?」
 
そういえば電話していたような気がする。
私もチラッと携帯を見れば会社からの着信があった。
大虎くんの服を引っ張りその画面を見せると大虎くんは気づいたのか口を開く。
 
「呼び出されたんじゃしょうがないですよね。むしろ、早く行った方がいいですよ」
 
「あ、ありがとう!ごめんね!それじゃあ!」
 
そういって聖来は帰った。
田原さんの先輩もその流れで帰る。
私は会社に電話をかけ直したが通話になったと同時に携帯を取られた。
 
「ちょっ!大虎くん!」
 
大虎くんは私の口を手で塞ぐと携帯に耳を当てる。
 
「『栗山ぁ!お前、俺が頼んでおいた仕事が上がってねぇじゃねぇか!呑気に休みなんか取ってねぇでさっさと出勤して来い!』」
 
スピーカーモードにはしていないはずなのに課長の声が漏れてきた。
大虎くんがこれ本当?という感じで首を傾げてきたので私は首を横に振る。
 
「(ちゃんと仕事は全部終わらせてから有休を出したもの。新しい案件は増えているかもしれないけれど仕事が残っているはずがない。ましてや、課長から頼まれた仕事なんてもらったその日に片付けているんだから上がってない訳がない)」
 
考えていると帰ったはずの聖来が私に手招きをしていた。
思わず、手招きし返すと聖来は私のところに駆け寄ってくる。
聖来は状況を把握したのか小声で口を開いた。
 
「課長から仕事が残ってるっていうから莉恵の分も確認したんだけど……その仕事、あたしたちが帰ったあとに送ったものらしいから莉恵は来ない方がいいよ。莉恵に送られた分の仕事はあたしがやっておくから心配しないで」
 
聖来が言い終えたと同時に課長の怒鳴り声がする。
 
「『おい!栗山!聞いているのか!?』」
 
大虎くんは聖来の話を聴こえていたのか口を開いた。
 
「すみません。彼女は今、高熱を出して寝込んでいるので確認ができそうにないです」
 
「『っ!?誰だ!お前は!』」
 
「彼女を看病している者です。先ほども言ったように高熱を出して寝込んでいるので仮に仕事が残っていたとしても行かせられません。用件がそれだけでしたらお切りしてもよろしいですか?」
 
「『ま、待て!栗山君にしかできない案件なんだ!締切は今日!だから、是が非でも来てもらわないと……!』」
 
「そういわれましても支えがないと起き上がれないほどですので行かせられません。インフルエンザの可能性もありますし今日明日とお休みをいただいていると聞いているので今日中に熱が下がらないようでしたら病院にも連れて行かないといけませんので今日は安静にさせます。それとも、貴方は今彼女に無理をさせて病欠を長引かせるおつもりですか?彼女にしかできない案件があるならばそれは得策とは言えませんね」
 
「『き、貴様!良いから栗山君とかわりたまえ!』」
 
「無理です」
 
大虎くんがスラスラと嘘を並べるので驚きを隠せない。
聖来は小声であとは任せて!と言って会場を後にした。
私は大人しく事の行く末を見守ることにする。
大虎くんは課長に何を言われても拒否をし続けついに決着が着く。
 
「そもそも高熱を出して寝込んでいる人を無理矢理働かせるおつもりですか?それは立派なパワハラだと思うんですけど。これ以上、そういったことを仰るつもりならパワハラで訴えますよ。あぁ、そういえば、お名前をお聞きしてませんでしたね。貴方のお名前、お聞かせ願えますか?……切られた」
 
どうやら、訴えられるのが怖くて電話を切ったらしい。
 
「(課長……パワハラの自覚があったのね……)」
 
大虎くんは私に携帯を返すと口を塞いでいた手も退けた。
 
「っていうか、名前なんか聞かなくても本社に直接電話して御社で働いてる栗山莉恵が上司にパワハラを受けていますっていっちゃえばすぐに分かると思うんだけど」
 
「……大虎くん……止めて。私、仕事無くなっちゃう」
 
「え?仕事が無くなるのは上司じゃないの?」
 
「そうだろうけど私もいづらいから止めて」
 
「ふーん……まぁ、いいけど。今回は仮病だしね」
 
「……でも、どうして勝手に電話を取って高熱出しているなんて嘘を吐いたの?いつもならそんなことしないじゃない」
 
私がそう聞くと田原さんと美琴さんも口を開く。
 
「そうだぞ!わざわざ嘘を吐かなくてもいいだろ?」
 
「本当、トラらしくないよね。あんなすぐバレる嘘つくなんて。まぁ、ながえさんがいたからバレないだろうけど」
 
その言葉に大虎くんは首を傾げた。
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