私、これからいきます。

蓮ヶ崎 漣

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クリスマス

家に着くと大虎くんは疲れたのかソファーに座る。
私はお風呂を沸かしに行き戻ると大虎くんが隣をポンポンと叩いて手招きしていた。
私が隣に座ると私の膝にポスッと頭を乗せる大虎くん。
珍しいと思いながら頭を撫でた。
 
「どうしたの?」
 
「んー……ちょっと、飲みすぎたかも」
 
「ふふっ、四杯目以降もずっとお酒飲んでたものね。結局何杯飲んだの?」
 
「六杯前後くらい、かな。莉恵さんは余裕そうだね?」
 
「カクテルばかりだったからだと思うわ。焼酎の方がよく飲むのよ、私」
 
「ふーん……俺たちに勧めてたのはカクテルだよね?」
 
「そりゃあ、みんなカクテルばかり飲んでいるのにいきなり焼酎は勧められないでしょう?」
 
「……じゃあ、今度二人で飲みに行こっか。行ったことないもんね」
 
「そういえばそうね……でも、無理に私が飲むものを飲もうとしないでね?」
 
「うん。無理には飲まないよ」
 
いつ行こうかなんて話をしていたらお風呂が沸いた音がする。
私が立ち上がろうとすると大虎くんが私の腰をギューッと抱き締めてきた。
放す気は全然ないらしい。
 
「大虎くん?お風呂沸いたから入らないと」
 
「じゃー、一緒に入ろ?」
 
ね?と幼い少年のような笑顔でお願いされた。
 
「……大虎くん、もしかして、酔っているの?」
 
「んー……そうかも?だって、莉恵さんと離れたくないんだもん。だから、一緒に入ろ?いいでしょ?」
 
「良くないわよ!もう!大虎くんはお水飲んで寝なさい!」
 
「えぇ~……やだ!もっと莉恵さんと話す!クリスマスだよ?最近、全然話せてないし寂しかったしやっと独り占めできるのに先に寝るなんてやだ!莉恵さんは寂しくなかったの?寂しかったなら一緒に入ろ?ね?」
 
「っ!」
 
その言葉を聞いて思わずうなづきそうになるが耐える。
代わりに立ち上がるのを止め大虎くんの頭を撫で続けた。
するとしばらくして規則正しい寝息を聞こえてくる。
腕の力も弱まったので起こさないようにスッと抜け出し水をテーブルに置いて布団をかけた。
私はお風呂に入りいつもより短めに上がる。
大虎くんはまだソファーで寝ていてこのままだと風邪を引きかねないので気が引けながらも起こした。
大虎くんはもぞもぞと起き上がる。
 
「んー……」
 
「大虎くん、ベッドで一緒に寝ましょう?このままじゃ風邪を引いちゃうわ」
 
私がそういうと寝惚けながらもうなづいて布団を持って私のあとをついてきた。
無事ベッドに横になると大虎くんは私を抱き寄せる。
大虎くんの胸板に顔を埋めながら口を開いた。
 
「大虎くん?目が覚めたの?」
 
「うん、まだ眠いけど。莉恵さん、酔ってないよね?」
 
「酔っていたのは大虎くんでしょう?」
 
「あー……そうかも?途中、記憶ないや」
 
「えっ!?じゃあ、寂しかったから一緒にお風呂入ろうって言ったことは覚えている!?」
 
「はっ!?俺、そんなこと言ったの!?」
 
「……本当に覚えていないの?」
 
「……ううん、嘘。全部覚えてるからそんな悲しそうな顔しないで。でもさ、つまり莉恵さんが一緒に入ってくれなかったってことは寂しかったのは俺だけで莉恵さんは寂しくなかったってことかー」
 
「ち、違うわよ!わ、私だって寂しかったけれど……それとこれとは別でしょう!?」
 
私がそういうと大虎くんはクスクス笑う。
 
「冗談だよ。まぁ、俺は一緒に入りたかったけど」
 
「大虎くんの変態!」
 
「えー?一緒に入るだけじゃん」
 
「一緒に入るだけじゃ済まないでしょう!」
 
「……莉恵さん、やらしー」
 
「も、もう!意地悪!」
 
そういってポカポカと大虎くんを叩いた。
 
「ははっ!ごめんって。痛いよ、莉恵さん」
 
「もう知らない!寝ます!」
 
「えぇ?完全に目が覚めちゃったからまだ寝かせなーい」
 
「えっ!?ちょっ!?大虎くん!?どうして覆い被さるの!?」
 
「こーら、暴れないの。莉恵さんのしてほしいことしてあげるから。あ。でも、その前に俺もお風呂入ってくるね」
 
「えっ!?お風呂のお湯抜いちゃったわよ!?」
 
「別にシャワー浴びれればそれでいいし。寝ちゃってもするからちゃんと起きててね?それとも今度こそ一緒に入る?」
 
「ば、バカ!早く入ってきたら!私は寝るけれど!」
 
大虎くんはクスクス笑いながらお風呂場に向かう。
私は寝ようと布団に包まるが目が冴えて眠れない。
しばらくするとドアが開く音がしてベッドがギシッと軋む。
思わず目をギュッと瞑ると優しく抱き締められた。
ホッとしたのも束の間、いきなり耳元で息を吹き掛けられる。
 
「ひゃあっ!」
 
思わず甲高い声を上げると大虎くんはクスクス笑った。
 
「莉恵さんったら寝たフリ?期待して恥ずかしくなっちゃった?」
 
「っ!耳元で喋らないで!」
 
「莉恵さん、耳弱いもんね。ねぇ、莉恵さん。どうしたい?莉恵さんが寝たいならこのまま寝てもいいよ?」
 
耳元で喋られてくすぐったい。
 
「やっ!」
 
「何が嫌なの?このまま寝ること?」
 
反応しないように頑張るけれどくすぐったいのは我慢できなかった。
大虎くんは意地悪く耳元で喋り続ける。
 
「莉恵さん、好きだよ。大好き。これからもずっと俺の傍にいてくれる?」
 
私はくすぐったくて首を縦に振るので精一杯で。
結局、大虎くんにされるがまま、意地悪をされ続け気がついたら大虎くんに腕枕をされながら抱き締められていた。
私は抱き締め返して安心しながら眠りにつく。
次に目を覚ましたときにはお昼を回っていた。
大虎くんはまだ寝ていたけれど枕元にプレゼントが置いてあることに気づく。
大虎くんを起こさないようにプレゼントを開けるとそこには合わせ着が出来るワンピースが入っていて。
それがMERCIの服だと気づいた私は驚いて大虎くんを見るといつの間に起きていたのか大虎くんを目が合った。
 
「おはよ、莉恵さん。メリークリスマス」
 
「こ、これ!MERCI!でも、カタログでも雑誌でも見たことないわよ!?」
 
「うん。だって、オーダーメイドだから」
 
「っ!ま、また!そうやって高いものを易々と買うんだから!」
 
「……嬉しくない?」
 
少ししょんぼりしながら聞いてくる大虎くんに私は慌てて否定する。
 
「う、嬉しいけど!そうじゃなくって!私、そんなに返せない……」
 
「俺は莉恵さんが傍にいてくれるだけでいいの。それにオーダーメイドだけどそんなに高くないよ」
 
「そんなの私も一緒よ!で、いくらかけたの?」
 
「……内緒」
 
「もう!大虎くん!」
 
結局、値段は教えてもらえなかったけれど私も大虎くんにプレゼント渡した。
大虎くんはすごく喜んでくれてホッとする。
その日は大虎くんと久しぶりにデートをしたり一日中一緒に過ごした。
 
「(あぁ、私、この人の彼女になれて本当に良かった……)」
 
「大虎くん」
 
「何?」
 
私の顔を覗き込み首を傾げる大虎くんに私は今の気持ちを正直に伝える。
 
「私を彼女にしてくれてありがとう」
 
「……こちらこそ俺を彼氏にしてくれてありがとう」
 
お互い微笑みながらどちらともなくキスをした――――
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