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番外編⑥ 七夕
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ある日、家に帰ると大虎くんが短冊を持っていた。
「あれ?その短冊どうしたの?」
「あ、莉恵さん。おかえり。これね、もうすぐ七夕だから子どもたちに渡してたんだけどせんせーも書いてーって渡されたんだよね。でも、特に書くことなくて……俺、こういうの信じないタイプだからさ。莉恵さんも書く?たくさんもらってきたからいくらでも書いていいよ」
「え?でも……」
私が戸惑っていると短冊を一枚渡される。
「ていうか、俺の代わりに書いてくれると助かる。ね?お願い」
「ふふっ……願いごと書いて、が願いごとになってるわね」
「あ、ホントだ。でも、短冊に書くことじゃないね」
二人で笑いながら私は短冊を一枚受け取った。
「大虎くんも一緒に考えましょ?」
「んー……でも、俺、莉恵さんに嫌われませんようにとかしか思い浮かばないし。それを短冊に書いたら逆のことが起きそうで嫌だなぁ……」
「……私、大虎くんとずっと一緒にいられますように、って書こうと思ったんだけど……」
「それ書かなくて大丈夫な奴だね。俺、莉恵さんとずっと一緒にいる気だし。何よりそんな可愛いこと書かないで。仕事中に莉恵さんが書いたそれ読んでニヤけて仕事にならなそうだから」
「……なんか、複雑」
「え?何が?」
「だって、大虎くんは私が書いた短冊をいつでも読めるけど私は大虎くんが書いた短冊を読めないじゃない」
「……そもそも願いごとって人に見せるもんじゃないでしょ」
「そうかもだけど!そうかもだけど!私は大虎くんのお願いを私が叶えられるなら叶えてあげたいもの」
私がそういうと大虎くんは深いため息とともにテーブルに突っ伏す。
「……ホント、不意打ち止めて。俺は莉恵さんがいてくれたらそれでいいから。どこにも行かないで」
大虎くんからすごく愛しそうな目で見上げられときめいた。
そのまま大虎くんの手が伸びてきて私の頬を優しく撫でる。
私は衝動のままに大虎くんに顔を近づけた。
チュッと乾いた音が鳴る。
顔を離すと大虎くんがめずらしく顔を真っ赤に染めていた。
「……約束の証ね?」
私がそういうと大虎くんは私の腕を引っ張り向かい合わせで膝の上に座らせる。
「……だめ。全然、足りない」
「えっ!?」
驚いたのと同時に頭を押さえられキスをされた。
それはだんだん深いものへと変わる。
苦しくなり大虎くんを押してもビクともしない。
それどころか手を絡めてくる。
「ん、大虎くん、待って……」
いくら抵抗しても角度が変わるだけで解放されない。
力が抜け大虎くんに寄りかかるように体を預けてようやく唇が離れた。
「……俺のお願い、莉恵さんが叶えられることなら叶えてくれるんだよね?」
「……ふぇ?」
長いキスから解放されたばかりで何のことか分からず首を傾げる。
大虎くんは私の頬を優しく撫でながら目を細めた。
愛おしそうに見つめてくるその視線に顔をそらせずにいると大虎くんが続ける。
「俺を満足させて?莉恵さんにしか叶えられない」
「え……?どうやって?」
思わずそう答えるとクスクス笑う大虎くん。
「さぁ?それは莉恵さんが考えて。俺のために。どうすれば俺が満足するか……」
そこまで言ったあと、大虎くんは私の耳元まで顔を寄せて囁いた。
「簡単だろ?」
誘うような色っぽい囁きに背筋がゾクゾクと震える。
私は大虎くんの首に腕を回して再び自分からキスをした。
大虎くんは満足そうに応えてくれて私の腰を引き寄せお互いに求め合う。
唇を離すとまだ物足りないと言いたげな大虎くんが目に映った。
私は大虎くんの両頬を包むように両手を添える。
「……まだ、足りないの……?」
「どっちが。莉恵さんだってすげー物欲しそうな顔してるくせに」
「!……意地悪……」
それからお互いに目を閉じ何度も繰り返しキスをした。
しばらくすると大虎くんがキスしかしてくれないのがもどかしくなる。
それを晴らすかのように大虎くんの熱に溺れていったのだった。
END
***
おまけ
後日、美琴さんからのメッセージで写真が届く。
その写真には短冊が映っていて大虎くんの字で“みんなが幸せになりますように”と書かれていた。
「ふふっ……大虎くんらしいなぁ……」
そんなことを思っていたら今度は美琴さんから動画が送られてくる。
「?何だろう?」
気になって動画を再生してみると子どもたちと一緒にいる大虎くんが映った。
『タイガーせんせー、あのねーしおりねータイガーせんせーとけっこんできますようにってかいたのー』
『りんもタイガーせんせーとけっこんできますようにってかいたよ!』
『えー?どうして?もっとほかのお願いごとにしなよ』
『だって、しおり、おっきくなったらタイガーせんせーとけっこんするつもりだもん!』
『しおりちゃん、ずるい!りんだっておっきくなったらタイガーせんせーとけっこんするもん!』
『だめ!タイガーせんせーはしおりとけっこんするの!』
『なんで!しおりちゃんよりりんのほうがかわいいもん!りんとけっこんしたほうがじまんできるよ!』
『りんちゃんはせいかくわるいもん!』
『あー……喧嘩しないの。俺、喧嘩する子は嫌いだよ。だから、どっちとも結婚しません。それに俺、結婚したい人がいるから結婚するならその人とします』
『えー!やだやだ!』
『え。嫌がれても困る』
『うわーん!!タイガーせんせーのバカーっ!!イケメンーっ!!』
『あーはいはい。ありがとー』
そこで動画が終わる。
子ども相手でも大して変わらない大虎くんの態度に思わず苦笑した。
泣いちゃった子たちはそのあとどうなったのかなーと思いながら買い物に向かう準備をする。
その日の夕飯はいつもより少しだけ豪華に大虎くんの好物ばかりを用意したのだった。
END
「あれ?その短冊どうしたの?」
「あ、莉恵さん。おかえり。これね、もうすぐ七夕だから子どもたちに渡してたんだけどせんせーも書いてーって渡されたんだよね。でも、特に書くことなくて……俺、こういうの信じないタイプだからさ。莉恵さんも書く?たくさんもらってきたからいくらでも書いていいよ」
「え?でも……」
私が戸惑っていると短冊を一枚渡される。
「ていうか、俺の代わりに書いてくれると助かる。ね?お願い」
「ふふっ……願いごと書いて、が願いごとになってるわね」
「あ、ホントだ。でも、短冊に書くことじゃないね」
二人で笑いながら私は短冊を一枚受け取った。
「大虎くんも一緒に考えましょ?」
「んー……でも、俺、莉恵さんに嫌われませんようにとかしか思い浮かばないし。それを短冊に書いたら逆のことが起きそうで嫌だなぁ……」
「……私、大虎くんとずっと一緒にいられますように、って書こうと思ったんだけど……」
「それ書かなくて大丈夫な奴だね。俺、莉恵さんとずっと一緒にいる気だし。何よりそんな可愛いこと書かないで。仕事中に莉恵さんが書いたそれ読んでニヤけて仕事にならなそうだから」
「……なんか、複雑」
「え?何が?」
「だって、大虎くんは私が書いた短冊をいつでも読めるけど私は大虎くんが書いた短冊を読めないじゃない」
「……そもそも願いごとって人に見せるもんじゃないでしょ」
「そうかもだけど!そうかもだけど!私は大虎くんのお願いを私が叶えられるなら叶えてあげたいもの」
私がそういうと大虎くんは深いため息とともにテーブルに突っ伏す。
「……ホント、不意打ち止めて。俺は莉恵さんがいてくれたらそれでいいから。どこにも行かないで」
大虎くんからすごく愛しそうな目で見上げられときめいた。
そのまま大虎くんの手が伸びてきて私の頬を優しく撫でる。
私は衝動のままに大虎くんに顔を近づけた。
チュッと乾いた音が鳴る。
顔を離すと大虎くんがめずらしく顔を真っ赤に染めていた。
「……約束の証ね?」
私がそういうと大虎くんは私の腕を引っ張り向かい合わせで膝の上に座らせる。
「……だめ。全然、足りない」
「えっ!?」
驚いたのと同時に頭を押さえられキスをされた。
それはだんだん深いものへと変わる。
苦しくなり大虎くんを押してもビクともしない。
それどころか手を絡めてくる。
「ん、大虎くん、待って……」
いくら抵抗しても角度が変わるだけで解放されない。
力が抜け大虎くんに寄りかかるように体を預けてようやく唇が離れた。
「……俺のお願い、莉恵さんが叶えられることなら叶えてくれるんだよね?」
「……ふぇ?」
長いキスから解放されたばかりで何のことか分からず首を傾げる。
大虎くんは私の頬を優しく撫でながら目を細めた。
愛おしそうに見つめてくるその視線に顔をそらせずにいると大虎くんが続ける。
「俺を満足させて?莉恵さんにしか叶えられない」
「え……?どうやって?」
思わずそう答えるとクスクス笑う大虎くん。
「さぁ?それは莉恵さんが考えて。俺のために。どうすれば俺が満足するか……」
そこまで言ったあと、大虎くんは私の耳元まで顔を寄せて囁いた。
「簡単だろ?」
誘うような色っぽい囁きに背筋がゾクゾクと震える。
私は大虎くんの首に腕を回して再び自分からキスをした。
大虎くんは満足そうに応えてくれて私の腰を引き寄せお互いに求め合う。
唇を離すとまだ物足りないと言いたげな大虎くんが目に映った。
私は大虎くんの両頬を包むように両手を添える。
「……まだ、足りないの……?」
「どっちが。莉恵さんだってすげー物欲しそうな顔してるくせに」
「!……意地悪……」
それからお互いに目を閉じ何度も繰り返しキスをした。
しばらくすると大虎くんがキスしかしてくれないのがもどかしくなる。
それを晴らすかのように大虎くんの熱に溺れていったのだった。
END
***
おまけ
後日、美琴さんからのメッセージで写真が届く。
その写真には短冊が映っていて大虎くんの字で“みんなが幸せになりますように”と書かれていた。
「ふふっ……大虎くんらしいなぁ……」
そんなことを思っていたら今度は美琴さんから動画が送られてくる。
「?何だろう?」
気になって動画を再生してみると子どもたちと一緒にいる大虎くんが映った。
『タイガーせんせー、あのねーしおりねータイガーせんせーとけっこんできますようにってかいたのー』
『りんもタイガーせんせーとけっこんできますようにってかいたよ!』
『えー?どうして?もっとほかのお願いごとにしなよ』
『だって、しおり、おっきくなったらタイガーせんせーとけっこんするつもりだもん!』
『しおりちゃん、ずるい!りんだっておっきくなったらタイガーせんせーとけっこんするもん!』
『だめ!タイガーせんせーはしおりとけっこんするの!』
『なんで!しおりちゃんよりりんのほうがかわいいもん!りんとけっこんしたほうがじまんできるよ!』
『りんちゃんはせいかくわるいもん!』
『あー……喧嘩しないの。俺、喧嘩する子は嫌いだよ。だから、どっちとも結婚しません。それに俺、結婚したい人がいるから結婚するならその人とします』
『えー!やだやだ!』
『え。嫌がれても困る』
『うわーん!!タイガーせんせーのバカーっ!!イケメンーっ!!』
『あーはいはい。ありがとー』
そこで動画が終わる。
子ども相手でも大して変わらない大虎くんの態度に思わず苦笑した。
泣いちゃった子たちはそのあとどうなったのかなーと思いながら買い物に向かう準備をする。
その日の夕飯はいつもより少しだけ豪華に大虎くんの好物ばかりを用意したのだった。
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